まず、最初の作業は、「3年後自分たちはどのような仕事をしていたいか」という期待や希望を描くことである。英語科教員においては、「どのような英語力を身につけた生徒を育てたいか」、「実践的なコミュニケーション能力とは何か」を議論することである。その際には、目標とする英語力を、できるだけ具体的に「….ができる」というCan - do - statementsで表現し、かつ「なぜそう考えるのか」という根拠の提示も当然ながら欠かせない。様々な意見が飛び交うはず(!?)である。会議という形式にとらわれず、一献傾けながらするのもよし、ちょっとした立ち話でもよし。数名の議論から全員参加など規模も変えながら、結論を出すまで何度でも議論を重ねていくことだ。SELHi指定校によっては、他教科の教員や生徒の声にも耳を傾けている。誰もがある程度イメージ化できる「めざす英語力」を描いていただきたい。
現実離れした目標設定を避けるために、「現在の生徒の英語力はどのようなものなのか」という現状把握も当然ながら必要である。生徒が取得した外部資格試験のスコアや級も1つの指針であるが、やはりCan-do-statementsで具体的に表現することが求められる。
このようにして、現状把握と目標設定までに、数か月、いやもっとかかるかもしれない。しかし、議論を重ねる過程で、生徒の英語力に対する観察力、分析力が格段に高まるはずである。そして、仲間意識も教員間に育つに違いない。
現在の生徒の英語力(起点)と3年後に目標とする英語力(着点)が定まった後の作業は、どうやってそこに生徒が無事たどりつけるか、教員全員で日々試行錯誤を重ねながら、道筋を描いていくことである。SELHi指定校は、この試行錯誤を分析的、実証的に検証し成果や失敗を報告書にまとめているので、是非、参考にしていただきたい(注2)。
さて、教員が最も研鑽を重ねるべき指導法の改善について触れたい。まず、お互いの授業を観察し合い気づいた点(優れている点と工夫や改善を必要とする点)を率直に出し合い、それらを分析・整理し、教員全員で取り組む研究課題を絞ることである。あるいは、幾つかのチームを編成し、それぞれが異なる課題に一年間取り組み、共有する方法もよいであろう。また、この課題設定にあたっては、「〜〜をすれば〜〜の力がつく」という仮説を立て、授業実践を通して、生徒の変容を観察しながら実証していく方法が効果的である。
(注2) 文部科学省のホームページから指定校と研究課題を調べ、学校に直接報告書を依頼するなどしてください。 |