留学に興味がある、または留学をしたいという方が、その夢を実現させるにはなにが必要なのでしょう? このコーナーではTOEFLテストのスコアを利用して留学できる、英語が公用語の国をシリーズでご紹介していきます。
第1回目の今回は、日本からの留学生数No.1のアメリカ。フルブライト・ジャパン(日米教育委員会)のデビッド・サターホワイト事務局長にお話を伺いました。
David H. Satterwhite デビッド・H・サターホワイト氏
フルブライト・ジャパン(日米教育委員会) 事務局長(2004年4月~)
1952年 米国生まれ。幼少時代に宣教師の両親とともに来日。日本在住歴通算38年。
1975年 米国フレンズ・ワ-ルドカレッジ 飛鳥/奈良時代文学の歴史 学士号
1979年 国際関係学 修士号
1986年 韓米フルブライト奨学金を得てソウルの高麗大学アジア研究所にて研究
1994年 米国・ワシントン大学(シアトル) 政治学博士号
1988~1997年 ハーバード大学をはじめ多数の大学で教鞭を取る
1997~2004年 エコノミストグループ日本支部マネ-ジング・ディレクタ-
2004~2005年 在日米国商工会議所副会頭
現在はテンプル大学日本校理事、JAFSA(国際教育交流協議会)理事、東北大学大学院情報科学研究科の運営協議会委員を歴任。 日本語と韓国語が堪能で現在はマンデリン語を習得中。
アメリカに留学するには、大きく分けて2つの方法があります。数ある会社や団体を通じて留学先を斡旋してもらったり手続きを代行してもらう方法と、自分の力で手続きを行う方法です。フルブライト・ジャパンは、人物交流を通じ日米両国の相互理解の促進を目的に、フルブライト奨学金事業、アメリカ留学情報サ-ビス、各種日米教員交流プログラムを展開しています。留学情報サービス(EIS)は、日米両国政府が共同運営管理する公的サービスで、アメリカ国務省からeducationUSAセンターの指定を受け、アメリカの大学・大学院留学に関する情報提供と相談に無料で応じています。留学準備期間も人生設計の一環としてとらえ、留学先の選定から入学申請手続き等まで、ご自分でやり遂げたい、という方に積極的にご利用いただけます。
【留学情報センターに掲示されている3000校以上の学校名が記載されたアメリカ地図】
EISでは、ご自分の力で留学準備ができるように以下を通じてお手伝いしています。
アメリカには認定を受けた大学が約3,000校存在するといわれ、それぞれが独自の入学基準を設けています。学びたいスキルや内容はもちろん、大学やその町の環境、規模、要求されるTOEFLテストスコアなど、それぞれの目的や希望にあわせて数多い選択肢から選ぶことができます。
ただし、日本と異なりアメリカでは文部科学省のような中央政府機関が法的に認可しているわけではないので、認定制度などアメリカ独自の制度について日本との違いを把握しておく必要があります。
●フルブライト・ジャパン ウェブサイト>米国留学情報>アメリカ留学の基礎知識>II アメリカの高等教育制度 をご参照ください。 http://www.fulbright.jp/study/res/index.html
大学数の多さに加え、学生や社会のニーズに応じた教育内容の多様性もアメリカの大学の特徴のひとつです。その多彩なプログラムと質の高さは、世界中から高い評価を得ており、留学先としてアメリカの大学が選ばれる大きな要因ともなっています。教育内容の多様性は、教育方法の選択肢が多岐に渡ることや編入・転校が容易であること、専攻分野が多彩であることからも伺えます。
また学生も様々な層から構成されています。世界からの留学生に加え、多様なバックグラウンドを持った、幅広い年齢層の学生がいます。アメリカの大学では多様な学生の要望を満たすためにさまざまなサービスが提供されていますが、留学生に対しても、各大学に専門の留学生アドバイザーが配置されるなど、ケア・サービスが充実しています。
アメリカの高等教育では、教育は商品のひとつで、大学はその商品の売り手、学生はその買い手といった考え方があります。学生は、学費に見合った教育内容とサービスを大学に期待し、アメリカの大学は、顧客である学生の要求を満たすために、常に教育内容やキャンパスライフの質の向上を心がけているのです。
最近では変わりつつありますが、日本ではある特定の年齢で大学に入学することが好ましく、その年齢を過ぎると入学が厳しくなると聞きます。しかしアメリカの大学ではもともと年齢制限はありません。つまり自分の培った経験を踏まえて、次の学位を取得するタイミングで再び学生として勉強をすることができるのです。例えば私の友人には、15年間働いた後にMasterを取得した方がいます。彼は今Harvard大学で教鞭を取っています。社会で経験を積み、それを大学院で生かしたから、学びが深かったのです。アメリカの教育制度では、自分に適切な教育を、準備ができたときに受けることができます。
また、学生のニーズに応じたカリキュラム構成や他大学との単位の互換などの柔軟性の高さも、アメリカの大学の特徴です。さらに、時代の変化に対応して、常に教育内容が見直され、プログラムを改訂・新設することで、高等教育と社会との関連を密接に保っています。
どこで、いつ、何を学ぶか、まさにIt’s up to youということです。
最近海外に留学する日本人が減ってきています。アメリカにいる留学生数が全体で7%増加した中、日本人は3.7%減りました。10年前はアメリカには4万6千人以上の日本人学生が留学しており、全留学生の10%を占めていましたが、この10年で約3万4千人に減り、全留学生の5.4%に落ちました。アメリカにいる全留学生の出身国別順位では現在4位ですが、6位の台湾に追い越される日も近いでしょう。それでも日本人の留学先としてはアメリカの人気は高く、圧倒的に1位です。日本では留学したいという意思と必要性が薄れてきているようです。なんでもインターネットで調べることができる、わざわざ危険なところに行きたくない、留学しなくてもわりと良い職を得ることができる、など様々な理由を耳にします。大学在学中に留学すると就職活動のタイミングにあわなくなってしまうということもあるでしょう。同時に日本では18歳人口は減少しているので、大学の定員数を考えあわせると、理論的には日本国内で大学へ進学を希望すれば100%入学できます。また外国に行かなくても国際的な教育が受けられる機会が増えてきています。しかしながら、長い目で自分のキャリアと日本の将来を考えて、アメリカに限らずどこか外国へ何らかの形で留学する重要性と意義をぜひ知って頂きたいと思います。
出典:Open Doors 2007-2008, Institute of International Education
それではアメリカに留学する、その魅力はなんでしょうか。
もっとも多くの留学生が抱いている目的とモチベーションは、やはり留学後のキャリアのレベルアップやスキル・アップに活かせる知識を得られるということでしょう。
もう一つ、実はとても大切なのが、いわゆるLiberal Arts Education(以下LAE)。これはアメリカの教育制度の発想の基礎そのものともいえますが、このLAEを通して一生もののLearning Spiritを得るということです。ではLAEとはどういうことでしょうか。大学に入学すると、様々な分野の知識を広げるというより、物事をどのように考えるか、どういう質問をすべきかを自分で掘り下げて、これについてどう思うか、どのように調べれば様々な場面でよりよく自分のものにできるか、ということを学びます。つまり「自らが学ぶ」ことを重視している教育課程なのです。その理念に基づいて様々な教育システムが構築されています。大学では、なるべく多様な人材が一堂に会し、そこで様々な視点から独自の意見が交わされることによって、学生ひとりひとりが自ら新しい英知と真実を見つけていくことを目指しています。したがって、日本の教育にみられるような「教えを授ける」という儒教的な考え方とは異なり、学生が主体的に学ぶ場と考えられています。言われたとおりに受け入れるのではなく、「どうして?」と疑いなさい、ということです。先生が言ったことが理解できないのであれば、それは自分が鈍いからわからないのではなく、もっと教えてほしい、「どうして?」の発想から何もかもが始まるのです。アメリカではそれが当たり前の態度です。だから教室であまり質問や発言をしなかったり、ディスカッションに参加しなければ、かえって目立ってしまいます。自分の意見がなかったり、あってもそれを述べる勇気がなければ、アメリカの教育制度の中では、弱く見えてしまいます。アメリカ では自分で形作った意見を述べることが重要視されているのです。
私自身30年以上前にアメリカの大学院で学んでいた際に教授などにHave you formed an opinion on this subject yet?とよく尋ねられました。「自分の意見を固めたか?」と聞かれて、Yesと言えば、論理的に説得力のある意見を述べなければなりません。ですから、Yesと言うには準備が必要。本を読んで、自分はこう思う。Becauseと説明しなければなりません。でも、Noと言えばもっと怖い、なぜなら、勉強不足であり、どうして自分の意見がないのか、ということを厳しい顔で問われるからです。つまり、自分の考えや意見をきちんと持ちなさい。その意見は適当に述べるものではなく、きちっと説得力のある論理で説明できるように事前に充分勉強した上で述べる方が良いということです。
アメリカに留学すると、スキルをレベルアップして学位、例えばMBAを取得するだけではなく、このように、物事を考えるという姿勢を身につけられるといえます。実用的なスキルだけではなくプラスアルファの内なる部分、ここに大きな魅力があるということを皆さんにぜひ知って頂きたいと思います。
アメリカには62万3000人以上の留学生が全世界から集まっていますから、各国を回らなくても世界中の人々とのネットワークを築くことができ、それが一生の財産となります。他の日本人も含めて、アメリカへ行かなければ会えない人と出会うことができます。そういう意味でアメリカ留学を経験すると世界中の人がいて、視野が広がります。まさに、アメリカ留学は世界留学といえるでしょう。
私はフルブライト奨学生の方々に留学前も留学後もお会いする機会がありますが、人文社会科学系分野への奨学金制度なので、アメリカでは皆さんかなりの分量の本や記事などを読まされます。1年間で読まなければならない本を積み上げれば、2mにも達するほどです。ものすごく深い研究や密度の濃い勉強をしなければなりませんので、まるで圧力釜にかかるようなプレッシャーを感じることもあるそうです。でも、それを乗り越えた自信、これだけやり遂げたという達成感、そしてアメリカで得た世界中からの友達、これらがアメリカ留学で得た財産だと彼らは共通して言います。帰国後の彼らは人前で話すとき、自信に満ちているように見受けられます。つまり、留学経験を通じて自信を持ってものを語れる、自分の意見をはっきりと論理的に言えるといったスキルを身につけることができるのです。また、アメリカで学位を得て帰国する学者は、彼らの日本の大学での教え方にやはりアメリカでの経験が影響しています。自分の意見を発言できる力と発言する必要性にぶつかって帰ってきたということ、教える側からの一方的なレクチャーではなく、教える側と教わる側の双方向の授業を行うようになります。
留学の影響はスキルだけでなく内側の変化をすごく感じます。行って学んでよかったというのはその内なるほうが大きいかもしれません。Confidence、自信です。これはうわべのことではなく、根本的なことですね。
アメリカ留学を遂行するには、留学手続きに関する必要な知識・基本事項・手順を把握することが肝要です。アメリカの大学は入試ではなく書類審査で合否を決定します。したがって、アメリカ留学準備には、大学選択・情報収集に加えて、各種テストの準備、出願書類の用意など、一般的に1年~1年半かかるといわれます。出願書類の中で提示する能力として、英語力、学力のほか、経済力、コンピュータースキルなどが要求されます。
また、アメリカには、3,000を越える大学がありますので、自分がどのような環境で、どのような専攻を勉強したいのか、どのような経験を積みたいのかを考えて、最新の情報をWebからリサーチし、自分が行きたい大学を選択しなげればなりません。言い換えれば、これを勉強したい、こういう雰囲気の中で勉強したいという自分の希望を把握していれば、自分の夢にとって最適な教育が受けられる大学をアメリカでは沢山の選択肢から選ぶことができるのです。友人がサンフランシスコに行ったからと下調べをあまりしないで同じ場所へ行ってしまうと、自分にとっては必ずしも満足のいく経験、適切な教育を受けられるとは限りません。
日本人はついランキングで大学を選んでしまいがちですが、アメリカでは、日本の大学入試の偏差値の様な共通のランキングは存在しないといわれています。コロンビア大学やハーバード大学といった著名校に進学し、自分にとって本当に満足のいく経験が得られるとは限りません。要は自分とのマッチングです。留学したいかしたくないか、から始まり、自分がどういう夢を持っているのか、その夢を実現するためには留学がプラスになるか、選んだ大学はその目的やニーズを満たしてくれる大学か、そこで自分はやっていけるか、そういう点を考慮しましょう。その上で留学先にアメリカを選ぶのであれば、フルブライト・ジャパンの留学情報サービスを活用して下さい。ここにはGood Choiceができるように幅広い情報がそろっていますし、留学相談のプロフェッショナルもいます。
●フルブライト・ジャパンウエブサイト>米国留学情報>アメリカ留学の基礎知識>III アメリカ留学準備スケジュール をご参照ください。 http://www.fulbright.jp/study/res/index.html
TOEFLテストは英語をどれだけ使えるかを測定するテストであって、日本人が留学できないのはTOEFLテストが難しいからではなく、日本の学生が世界中で使われている英語の基準に残念ながら達していない、あるいは英語力が低くなってきているから、といえるのではないでしょうか。留学の下準備として英語力を高めていくことが、個人だけでなく日本の世界との競争力強化にもつながります。ですから、TOEFLテストを使って英語力を高めてはどうでしょうか。他国の学生もTOEFLテストを乗り越えて留学しているので、同じ土俵で発言や会話ができるように、TOEFLテストをつかって訓練してみてはいかがでしょう。
中国・韓国など、ほかの国についていえば、競争がとても厳しいために自分でチャレンジして英語の壁を乗り越え、夢をつかんでいる学生も少なくありません。彼らは、熱心に勉強に取り組み、英語を自分のものにしています。それに比べると日本ではチャレンジと競争のスピリットが充分でないと思います。でも、英語の力を高めたい、使えるものとして身につけたいということが目的であれば、チャレンジ精神は非常に大事です。何も英語万歳というつもりはありませんが、国際的にGlobal化されている中で英語がわからなければ先進できません。
一方、アメリカの大学院ではTOEFLテストのスコアも非常に大事な入学基準となります。フルブライト奨学生として選ばれる方々のスコアは高得点です。ただし、優秀で将来の可能性が有る方であれば、スコアが充分でなくても条件付でフルブライト奨学生に選ばれることもあります。その場合、合格発表(通常12月上旬)から一定の期間の間(通常5月)までにスコアを伸ばさなければなりませんし、アメリカの大学院から入学許可も得なければなりません。つまり、良い研究プロポーザルや夢があるなら、応募時点で英語力が足りなくてもその後の半年でスコアを伸ばすことに成功すれば、フルブライト奨学生として留学できる、ということです。TOEFLテストは留学への条件ともなりますが、それ以上に留学することで自分のものになる知識、プラスになる良い勉強や経験をするには、高いTOEFLテストスコア、つまり英語力があると、より豊かな経験ができるのです。すなわち、英語力を高めておくと、より良い経験ができるということです。
留学は、自分を知る、異国文化を知る、日本を知る道となります。What is your opinion?という問いに対して、自分の意見をきちんと固め、考えも深めて、答えることができるようになるでしょう。そして、この問いに答えることにより、自分自身についてよりよく知ることができるでしょう。英語を使うことでアメリカを知るだけでなく、世界中から集まる留学生を通して世界に近づくこともできるでしょう。さらには、初めて日本を振り返って見る機会にもなるでしょう。これは大変意義深いことと言えます。アメリカに行ったことで日本の良さと価値を再認識したと帰国後に話す学生もたくさんいます。自分を知り、アメリカを知り、世界を知り、日本をよりよく知る。留学にはたくさんのプラスがあります。それを手に入れるかどうかは It’s up to you!
●2010年度フルブライト奨学金情報発表!詳しくはこちら
http://www.fulbright.jp/grant/index.html