英語教師による英語教師のための情報シェアの場「達人セミナー」通称「達セミ」をご存知ですか。毎週のように自発的かつボランティアで全国各地にて開催され、それぞれの授業方法を公開しシェアしています。基本的には中学・高校の教師の方々が中心ですが、その授業には英語を楽しく学ぶヒントがたくさん隠されています。その中から毎号1名の先生にレポートしていただきます。
今回のヒントはこれ:
東京大学大学院 教育学研究科 教育心理学コース 博士課程
田園調布学園中等部・高等部 英語科非常勤講師
関谷弘毅(せきたに こうき)先生
英語をやってきた人であれば、だれでも持ったことのある疑問・悩みでしょう。特に、中級レベルになってくると、ネイティブとの会話において相手の言っていることは大体理解できても、実際自分が口にしている英語は、 “uh-huh”、 “yeah”、 “really?”、 “oh”、 “I don’t know.”といったものばかりということがよくあります。一見スムーズにコミュニケーションができているように見えますが、やはりまとまった厚みのある内容を伝える力、スピーキング能力があるかと言われると疑問です。
そこで本日は、中学や高校、企業での私の指導経験や英語スピーキングテストの理論に基づき、「質問力」というキーワードからスピーキング学習のコツを提案したいと思います。
「なぜ質問力?」と思われたかもしれません。実は質問の中にはたくさんの情報を引き出しうるものと、限定された情報を引き出す質問があります。
(1)の質問であれば予想される返答は、“Yes.”や“I live in Tokyo.”など、非常に短いもので終わってしまう可能性があります。それに対して(2)の場合、“I like living in Tokyo, because it is very convenient. I often go shopping and Tokyo has many nice shops. …”というように、よりたくさんの情報を引き出すことのできる質問であると言えます。
すなわち、(1)は限定された情報をピンポイントで引き出すclosed questionまたはsemi-open questionであるのに対し、(2)は自由度が高いより多くの情報を引き出しうるopen questionなのです。「いまいち自分の発話に厚みがないな」と感じているのであれば、まずは常に自分にopen questionを投げかけてみてはいかがでしょうか。コツは、yesやno、あるいは一語から一文のみで答えるような返事をして話が途切れそうになったら、すかさず自分にopen questionをつっこむことです。
例えば、
“What is your job?” (semi-closed question)
“I’m a programmer.”
“What’s interesting about your job?” (open question)
といった感じでつなげてみましょう。これまでより格段と頭に汗をかくようになりますよ。ただし、ここでいう(open question)は必ずしも「質問」の形をしていなくても構いません。
今の例ですと他にも、“I don’t know much about what a programmer does. Tell me more.”や、“Why did you become a programmer?”や、“Tell me how to become a programmer.”も発話内容を強化するための立派なつっこみです。
慣れてくると、実際の会話でも相手が質問して来そうなことを予測して自分から先に話せるようになってきますよ。「あまりしゃべりすぎると印象が良くないのでは?」などと心配する必要はありません。ある研究によると、中級レベルの学習者とネイティブが何も意識せずに会話をすると、発話量の90%がネイティブに占められると言われています。ずうずうしすぎるくらいが我々学習者にはちょうどいいのです。実際に私がある企業で英会話のレッスンで教えていたときの受講生の方は、はじめは30秒ももたなかったのが、「質問力」向上の意識改革を行なったところ、2分以上もしゃべり続けることができるようになりました。ぜひ「質問力」を強化して、しゃべり続ける力、内容に厚みを持たせる力をつけていきましょう。
「すでに持っている英語の知識」を使いこなして話せるようにすることを目的とし、具体的なトレーニングの理論と方法が詳しく紹介されています。スピーキングに苦手意識をお持ちの方は必見、目からうろこの連続間違いなしです。