名古屋大学では、交換留学などの長期海外留学を目指す学生を対象に、長期休暇中に集中講座を実施しています。講座内容は、TOEFL iBT® テストなどの英語運用能力試験の準備(留学先大学が指定している語学要件のスコアを満たすことを目的とする)と、留学準備(留学目的や留学先の選択方法を理解し、留学先で必要とされるstudy skillsを実践練習する)の2種類で構成されます。講座全体を通して、受講生同士が刺激を受けながら、留学実現に向けて着実に動き出せることを目指しています。
留学準備として行うstudy skillsの授業では、留学先の大学での講義や小クラス授業(セミナー、チュートリアル)などの参加型授業を想定し、自分の意見を述べること、講義でのノートの取り方や発言の仕方、グループディスカッションの方法、学術論文を読解し要点をまとめることなどを、各受講生が実践し、留学前から留学中に必要なスキルを得られるようにしています。また、授業中は教員も受講生も英語のみで行うため、最初は慣れない様子で戸惑う受講生も見かけられますが、留学実現に向けてのモチベーションが高い受講生同士が、ともに集中して授業に参加するため、短時間で自信を持ち、授業内の課題に意欲的に取り組む姿が印象的です。
study skillsの授業を構成する上で意識をしていることは、各受講生が自分の意見を述べたり、周りの受講生同士で意見交換ができるようにすることです。例えば、ある講義を英語で聞いて、まずは2人1組のペアで、講義内容の要約を口頭で発表しあいます。その後、必ず講義内容について自分の意見を述べてから、最後は小グループで講義内容に関するディスカッションを行います。この流れを追うと、限られた時間内に読解・聴解内容を自分の言葉でまとめ、自身の意見を論理的に述べるといった、TOEFL iBTテストのspeakingやwritingセクションのintegrated taskで実際に測られる能力を、実際の学びの場で実践でき、語学力以外の能力を磨く必要性も自覚できるようになります。
2014年度春期休暇中に開講した際は、半年後に交換留学をすることが決まった学生達もstudy skillsの授業のみ受講しました。実際に留学を目前に控えた学生と、これから留学を目指す学生とが、互いに刺激しあいながら授業に参加することで、それぞれの学生が自分に何が必要なのかを改めて見出す貴重な機会となったようでした。特に、交換留学が決まった学生からは、渡航までの時間を有意義にしたい意識が非常に強くなったという感想が多く聞かれました。
語学試験を受けるとなると、試験対策として「虎の巻」に頼れば何とかなるという発想になりがちかもしれませんが、このように留学先での実践を意識して準備ができるようになると、どうしてTOEFL iBTテストを受験しスコアを取る必要があるのか必然性を深く理解できるようになります。試験を受けたらそれで終わり、というのではなく、留学するまでの時間も大切にできるよう、何をすれば良いのか、学生自身が自分達で課題を見つけ、実践できるような学びの場をこれからもより多く提供できるようにしたいです。
▲名古屋大学 国際教育交流本部国際教育交流センター