本校では、2017年の4月から、中等4年(高1学年)、5年(高2学年)の帰国生クラスで、The Official Guide to the TOEFL® Test(以下TOG)を教材として使用し始めました。中等4・5年の帰国生クラスは、海外に数年間滞在した経験がある生徒たちで構成されていて、英語力の平均が英検準1級程度です。授業形態は、ネイティブと日本人の教員によるティームティーチングで、TOGはネイティブが主に扱い、日本人がサポートする形を取っています。TOGを使い始めて2年目に入りますが、授業での活動内容、長所と問題点、今後の目標について紹介させていただきます。
TOGを使用して、実際にReading, Listening, Speaking, Writingの問題を解いていますが、教材の内容のレベルが高いため、次の4つのステップを踏み、高校生でも解き進むことができるように配慮をしています。
1番目のステップは、“Scaffolding”と呼んでいる活動です。“Scaffolding”は、足場を組むことを意味しますが、問題を解く前の準備の活動です。Readingの問題であれば、本文中に出てくる難しい語彙を紹介したり、トピックに関連する写真や動画を見せたりして、本文の内容をイメージしやすくする活動を行います。例えば、TOGのReading Practice Set 5の“Artisans and Industrialization”の問題を例にとると、産業革命がもたらした社会的変化についてや、産業革命前の職人たちの写真を紹介して、本文を読んだ時にイメージを描けるように助けます。また、難しい語彙はあらかじめ辞書を引く活動を入れます。例えば、artisan, industrialization, apprentice, journeyman, productivity, absenteeism, antagonismなど高校生が慣れ親しんでいない語彙は、この段階で英英辞典、英和辞典を引いて調べます。時において、“Scaffolding”だけで、50分間の活動になります。
2番目のステップは、実際に問題を解く活動です。時間を決めて、問題を解きます。上記の問題であれば、20分から30分程度かけて問題を解きます。
3番目のステップは、答えを確認する活動です。まず、ペアないしは、グループになり、答えの根拠について、できるだけ英語を使ってディスカッションをし、本文中のどの部分に基づいて答えを出したのかを、互いに確認し合います。本校ではActive Learningに学園全体で取り組んでいることもあり、こうした生徒同士の活動を学習の重要なステップと考えています。その後全体で答え合わせをし、問題を解いたプロセスが合っていたか、答えの根拠が明確かどうか等を確認します。2番目と3番目のステップで50分、ないしはそれ以上かかります。
4番目のステップは、解いた問題について、振り返りをし、覚えるべき語彙、本文の主な内容、要点などをまとめて、扱われたトピックについての理解を深めます。これは、20分程度の活動になります。こうして、一つのReadingの問題について、3回程度の授業を使って解き、語彙の習得、内容の理解、言語スキルの習得を目指して活動をしていきます。また、学習した内容は、定期考査に出題していきます。
TOEFL iBT® テストは、海外の大学に留学した際に求められる4技能の英語力が試されている試験です。TOGはそうした英語力、スキルを習得するための教材として、優れたテキストだと思います。恐らくTOGを1冊学習すれば、TOEFL iBTテストの準備が効果的にできるとともに、英語の運用能力が向上すると思われます。また、TOEFL® テストで扱われる問題形式は、日本の大学入試や他の英語外部試験に共通する点が多いことから、TOEFLテストに限らず、他の英語外部試験でも役立つと言えます。
問題点としては、レベルが高いために、生徒が取り組みにくかったり、関心がわきにくかったりすることがあると思います。上で述べました、4つのステップは、こうした問題を克服するための、一つの工夫です。まだ初期段階なので、改善するべき点は多くあると思いますので、継続して工夫をしていきたいと思っています。
昨年TOGを使い始めた後、TOEFL iBTテストを生徒が数名受験し、結果は80点台でした。また、これまで在籍した帰国生で100点を超えた生徒が数名います。今後の目標は、生徒がTOEFL iBTテストで100点以上を得点し、米国やその他の国々の大学への扉が開かれていくことです。海外の大学に留学した際に、英語でアカデミックな活動ができるような力を身に付ける授業を展開していきたいと思います。