本学では、TESOL修士号を持つ教員アドバイザーを中心に、English Consultation Room(ECR)で学生に英語力向上へのアドバイスを行っており、TOEFL iBT® テスト受験希望者も多く訪れます。一般的に、語学テストというと「何時間の学習でどのぐらい点数が上がるか」「どの参考書や勉強法が効果的か」といった特効薬的なアドバイスが求められがちで、個々の学習者のニーズとスタイルに合った学習プランニングが置き去りにされる傾向があるのは、非常にもったいないことだと考えています。TOEFL iBTテストは個々の学習者の弱点の特定に有効であり、その弱点を克服することで、点数の伸びと同時に留学先での成功に必要なスキルや知識を伸ばしていくことができます。そのために私のECRセッションで用いているのが、「5ステップ+1」に基づく学習プランニングです。
受験可能日、テストの構成など、TOEFL iBTテストを理解するために学生自身でできる情報収集を行います。
各セクションの問題パターン(リーディング・リスニング)/評価基準(スピーキング・ライティング)と、そのパターン/基準がどのようなスキルや知識を必要としているかを理解します。(例:Factual Information Questionはスキミングとスキャンニングを組み合わせたリーディングスキルが有効、など)
TOEFL® テストの問題に実際に取り組み、間違えた問題、自信がない問題、時間がかかった問題をリストアップします。その後、なぜ間違えたのか/時間がかかったのかを分析し、スキル・知識の弱点を特定します。
例えば語彙の知識不足が弱点である場合、学生は単語帳などのボトムアップの語彙学習のみに頼る傾向があります。この場合、TOEFLテストのリーディング素材を生かしたトップダウンの語彙学習を組み合わせることで、コンテクストと結びついた語彙の理解と、語彙数の向上という双方向から語彙習得を行うことができます。
弱点を克服するための勉強法が決まったら、オーダーメイドの学習プランを作成していきます。ウィークリースケジュールの可視化、また、アイゼンハワーマトリクス(重要度・緊急度に基づいたタスクの分類)を利用したタスクの優先順位付けなどを行い、実行可能な学習スケジュールを立てます。
本学の竹内香織助教(*1)の研究を基に加えられたステップです。完璧に見えるオーダーメイドの学習プランを立てても、実際に学習を進めていくと様々な壁に直面します。この「プラス1」ステップにおいて、壁に直面することをポジティブに捉え、意識的に振り返りを行い、また助言を求めることで、壁を成長の1ステップにしていくことが可能です。
▲ 英語学習相談室(ECR)のセッション
一度のセッションで全てのステップを理解し進めていく学生もいれば、特定のステップでECRに戻ってくる学生もいます。いずれにしても、TOEFLテストへの取り組みを通して、学生が自身の弱点とそれを克服するための学習プランニングを行えるのが「5ステップ+1」の強みです。今後もセッションを通して、TOEFL iBTテストを自らの英語力、思考力、アカデミックスキルの弱点を教えてくれるパートナーとして生かし、留学、そしてその先の成功へと自律的に学びを進めていく学生を育てていきたいと考えています。
(*1)Takeuchi, K. (2019). Self-regulated learning of Japanese university students in second language acquisition. The Bulletin of Graduate School, Soka University, (39), 169-196.