東京理科大学は、文法や語彙の基礎知識がありリーディングにはある程度の自信を持っているが、スピーキングには強い苦手意識を持っている学生が非常に多い大学です。そのため、私が担当する授業では、全体を通じてシャドーイングや音読、そしてリテリング活動など「英語を発話すること」をとても重要視しています。こうした発話活動を行う際にTOEFL iBT®テストのPerformance Descriptors for the TOEFL iBT® TestとTOEFL iBT®テストスコアガイド(speaking)、特にスコアガイドのdeliveryの観点がとても役に立っています。一般的に日本人英語学習者は実際の英語使用経験が乏しいため、英語を発話している人物のイメージが英語母語話者に限られてしまいます。そしてこうした限られたイメージはスピーキングスキル向上のために重要な点を具体的に想像することを難しくしています(例えば、「どういった発話がより良いのか?」「どんな点を直せばより高いレベルの発話となるのか?」)。この問題を解決するために、授業ではPerformance Descriptors for the TOEFL iBT® TestやTOEFL iBT®テストスコアガイド(speaking)のdeliveryを紹介した上で、「君たちは今の時点でスコア1もしくは2。今後目指していくべきはまずはスコア3だよ。スコア3というのは“話はだいたい分かりやすい。スラスラと話しているところもある。でも発音やイントネーションが少し分かりにくかったり、話のペースが一定でなかったりと、聞き手が意識的に理解しようとしなければならないときもある。状態”だよ」と説明しています。
具体的な授業方法としては、まず560~890語程度のテキストの理解活動、表現定着活動を行い、さらに同じテキストを基にした作文活動(内容に関するQAと内容に対する意見作文)を行います。最後の仕上げとしてPerformance Descriptors for the TOEFL iBT® Testとスコアガイドを紹介してから、自分で作文した内容をペアで発表し合います。理想的にはここでTOEFL iBTテストのSpeaking Rubricsを基に「今のパフォーマンスはスコア2だった、次はスコア3を目指そう」「今の相手のスコアはこの点がクリアできていたからスコア3だ!」のように、学生自身が自己評価できることです。しかし、現時点では学生は自分のパフォーマンスをこなすことに必死で、評価の観点を理解はしているけれど、評価をすることまでは注意を向けることはできていません。今後はそれぞれのスコアのサンプル音声を聞かせて、評価の観点を深く理解したり、パフォーマンスに対する具体的なイメージを掴んでもらったりすることを予定しています。
英語能力測定試験TOEFL iBTテストは、緻密な研究に基づいた詳細な採点基準がその特徴に挙げられます。私はこの採点基準を学生に説明し、内容を実践を通じて定着させることで、単にテストのスコアを上げるだけでなく、英語力といった一見掴みづらい能力を具体的に理解し、そして習得することができると考えています。まだまだ道のりは長いですが、学生のスピーキング苦手意識を少しでも和らげるために努力を続けていきたいと思います。