第63回 「2016年TOEFLアライアンス総会」開催報告
日時:2016年8月22日(月)、8月23日(火)
会場:立命館大学 大阪いばらきキャンパス B棟3階 コロキウム
内容:「TOEFLアライアンス主催 第6回TOEFLアライアンス総会」
今年の夏、2016年度のTOEFLアライアンス総会が2日間にわたり開催されました。英語教員・TOEFLアライアンス会員・TOEFL iBT® テスト指導者をはじめとする教育関係者を対象に、英語4技能指導につながる実践的な内容を中心に行われ、延べ90名の方にご参加いただきました。
▲大阪府立和泉高等学校校長 河合克昭先生
「Picture Descriptionの手法を用いたAcademic Englishの取り組み」と題し、栄光学園中学校・高等学校の宇佐美修先生にご発表いただきました。
Picture Word Inductive Model(PWIM)を用いた教授法と、その教授法を用いて、生徒のモチベーションを保ちながら段階的に指導する効果をご説明いただきました(絵を用いることで、生徒の興味関心を引き単語が出やすくなる→英文を組み立てる力を養い、それを相手に伝える英語発話力を伸ばす→この成功体験を積むことで、パラグラフを話せるようになる、という段階手順)。講演後には多くの質問があり、アンケートにおいても、「セミナーの続きを体験したい」「さっそく授業でPWIMを取り入れてみたい」といった参加者の満足度の高さがうかがえる内容でした。
「大学入試、入学後におけるTOEFL® テスト活用状況」として、TOEFLテストの概要から、実際にテストを導入している大学の状況について紹介しました。具体的に設定されている基準スコア等を示しながら、入学試験や入学後の活用事例に関連する情報をご報告させていただきました。
「TOEFL® テスト指導に有効な教科書紹介」について、大阪府立和泉高等学校Super English Teacher(SET)(*1)の磯田喜一先生よりご説明いただきました。実際に授業で活用されている検定教科書をもとに、選定するうえでのポイントも踏まえお話いただき、参加者からも「教科書選定に関する」新たな知見を得ることができた、という声がありました。
▲大阪府立和泉高等学校SET 磯田喜一先生
2日目午前の部では、希望者に体験いただく参加型のワークショップを行い、大阪府立大学中川智皓先生に「授業で出来る即興型英語ディベート」をご紹介いただきました。
▲大阪府立大学 中川智皓先生
高校の授業における導入事例を紹介された際、生徒の反応として、大阪府立の高校生インタビュー動画が流されました。「ディベートで培った英語力がTOEFLテストでも反映されると実感した」という声をふまえ、中川先生はディベートの効果としてTOEFLテストとの親和性についても触れられました。スタッフによるモデルディベートの後には、「自動運転車は害よりも利益をもたらすか」というテーマで、参加者による即興型ディベートの実践が行われました。ディベート終了後にはジャッジより勝敗結果が伝えられ、各グループより優秀スピーチ者の発表もあり、会場は拍手に包まれました。
▲栄光学園中学校・高等学校 宇佐美修先生
即興で自分の意見を必死にまとめたり、参加者同士で頭をつきあわせ相談されたりという姿からは、参加者の熱心さが伝わってきました。積極的に取り組んでいただいたことで、活発なワークショップとなり、終了後に各グループ全員が笑顔で握手を交わす場面が印象的でした。「自分自身の英語力を見直す良い機会になった」「即興型ディベートを行うことで論理的思考力が養えることを改めて感じた」といった感想もいただきました。
2日目午後の部では、「高等学校における英語教授法 事例紹介」と題し、磯田喜一先生(大阪府立和泉高等学校SET)、山内ジョナサン先生(大阪府立天王寺高等学校SET)、溝畑保之先生(大阪府立鳳高等学校指導教諭)にご登壇いただき、授業風景を撮影した動画を基に実践例をご紹介いただきました。
スピーキングの練習風景等、生徒の笑い声が混じり活き活きとした様子の伝わる動画で、授業の導入段階で生徒のモチベーションを上げるために行っている工夫等についての話も織り交ぜながら授業展開の様子を説明されました。
▲大阪府立天王寺高等学校SET 山内ジョナサン先生
溝畑先生からは、アクティブラーニングに向け採用しているICEモデルやジグソー法のご紹介がありました(ICEモデル…Ideaアイデア(記憶・理解)、Connectionつながり(応用・分析)、Extensions拡張(評価・創造)を3つの段階とした実践モデル)。ゴリラの喧嘩をテーマに、人間の関係性に置きかえ、そこから学び得ることは何か、それを生徒に考えさせる、という授業内容はとても興味深いものでした。
3名の先生方それぞれが、試行錯誤を重ね完成されたハンドアウトや指導方法の紹介があり、授業での実践につながるアイデアが満載に盛り込まれていました。
「第31回オリンピック競技大会(2016/リオデジャネイロ)で銀メダルを獲得した陸上男子400mリレーのように『文科省-入試-授業-生徒』この関係性における連携はとれていますか」、という参加者への投げかけとともに、「英語教育の未来に向かって、ぜひ協力していきましょう!」との熱い言葉で締めくくられました。
▲大阪府立鳳高等学校指導教諭 溝畑保之先生
アンケートからは、「授業に役立つ情報やヒントを得られ非常に参考になった」「指導法を知ることができありがたかった」「自分の授業を振り返る良い機会にもなり収穫の多い一日だった」「4技能型英語教育の波を感じられ刺激になったので、学んだことを広めていきたい」というご感想を多くいただきました。
英語4技能の向上を意識した今後の指導へつながる示唆に富んだ内容をお届けでき、参加者の方々にも有意義な時間を過ごしていただけたと実感しております。今後も、TOEFLアライアンス会員の先生方と協働し、英語教育に携わる方々のサポートや情報提供・企画に努めてまいります。
最後に、本総会開催にあたり、TOEFLアライアンス代表の大阪府立和泉高等学校校長河合克昭先生をはじめ、登壇いただきました先生方、サポートいただきました多くの関係者の方々のご理解とご協力に、厚く御礼申し上げるとともに、参加者のみなさまにも貴重なお時間をいただきましたことを、この場をお借り致しまして心より御礼申し上げます。
(*1)Super English Teacher(SET)について
大阪府公立学校教員として、TOEFL iBTテスト等を活用した英語教育の授業を担当するほか、同教育の指導方法・教材の開発、カリキュラムの改善に取り組む。また他の英語教諭の能力を高め、同教育を担う人材の育成にあたる。