イベントレポート

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第88回 「2020年TOEFLアライアンス総会」開催報告


国際交流推進部

第9回TOEFLアライアンス総会が大阪にて開催されました。今回はお二人の先生にご登壇いただき、『新学習指導要領が目指す外国語教育』、『主体的・対話的で深い学びの英語授業』についてお話をいただきました。
関西のみならず四国・中国地方などからも英語教員・英語教育関係者にご参加いただきました。

第9回TOEFLアライアンス総会

発表①『新学習指導要領が目指す外国語教育』

本発表は、新学習指導要領改訂にも携わられた元文部科学省教科調査官、現在は茨城県立勝田高等学校にて副校長を務めていらっしゃる下山田芳子先生に行っていただきました。「国が目指している方向」と「現場の課題」の両方を理解されている立場から、新学習指導要領の概要説明に加え、これからの外国語教育についてお話いただきました。
まず、これからの教育が変わらなければならない理由・背景(目まぐるしくテクノロジーが発達し、AIが何でもやってしまう社会で生きていかなくてはならなくなる時代を迎え、現代の子どもたちが今学ぶことは、単なる「知識の習得」であってはならず、未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力を身に付けること、そして人間性を磨くことなどがより大切となってくること)について資料や動画を交えてお話いただきました。

さらに、4技能の育成強化を受け、指導内容・指導方法の見直しが求められている現在、実際どのように授業を変えていくかということに関して、「読み」中心の授業からの脱却の必要性、生徒の英語による言語活動を中心に授業を展開することの重要性等にも触れられました。

第9回TOEFLアライアンス総会

発表②『40人学級で取り組む主体的・対話的で深い学びの英語授業~入試に左右されない英語力を育む試み~』

続いての発表では、「主体的・対話的で深い学びの英語授業」について大阪府立箕面高等学校の森田琢也先生より授業形式で実践報告をしていただきました。

ペアワークを中心に、1つのテーマをどんどん掘り下げ、4技能をバランスよく伸ばしていく方法は、現場の先生方にとって非常に参考になったと思います。「将来、生徒たちが学んだ英語を使いながら、多様な考え方を学び、自分の考えや思いを表現し、社会参加する姿を思い描きながら授業を展開している」という森田先生。生徒に近いテーマ選び、授業最初の場面設定、生徒の集中力維持のための時間配分、「授業中は英語で話すんだ」というマインドコントロール、他科目との協同など、生徒が効率よく楽しく英語の授業に参加できるような様々な工夫をご紹介いただきました。「子どもたちと授業を作っている」というお言葉通り、教師主体ではなく、いかに生徒に話させるか、考えさせるか、というところに重点を置き、入試のためだけではなく、生徒が英語で学び表現できる力をつけられるよう注力しているとのことでした。

質疑応答・意見交換

質疑応答・意見交換の時間では、参加者の方よりたくさんのご質問やご意見をいただきました。例えば下山田先生に対しては「大学入試にリーディングがどうしても必要だが、『読む中心の授業』から脱却して入試に対応できるのか」「将来本当に英語を使う必要のある人はごく一部。ここまでやる必要があるのか」「英語で授業を展開するといっても、それが難しい教員はどうすればよいのか」といった新学習指導要領に絡んだ質問や今後の外国語教育に対する疑問や懸念が出ていました。森田先生には「授業中、新出単語の導入はどのように行っているか」「授業の題材はどこから探してきているか」といった直接「授業づくり」に関係する質問等が続々と飛び出しました。非常に多くの興味深い質問や意見に対し、限られた時間の中でスピーカーの先生方が全ての質問に丁寧に回答されていた様子は大変印象的でした。

第9回TOEFLアライアンス総会

また、質疑応答の途中では、立命館アジア太平洋大学(以下、APU)東京オフィスの下之門様より、APUの留学生の英語力についてお話いただきました。APUは1学年の半分にあたる約700名が留学生で、そのほとんどがアジアからだそうですが、入学時に提出される英語のスコアは日本人のスコアを大きく上回っているというデータをご提示いただきました。その理由として、特に東南アジアの学生は、身の回りに社会課題を抱えている場合が多く、課題意識を持ちやすい傾向にあることが挙げられるのではないかとのことでした。「今努力すれば明るい将来に繋がる、というマインドセットがしっかりとできている」というコメントや普段目にする機会のないデータは大変貴重な情報でした。

第9回TOEFLアライアンス総会

おわりに

子どもたちがこれからの時代を生き抜くために考えられた新学習指導要領のお話、そして4技能をバランスよく指導され、かつ社会で活躍できることを念頭においた実践報告は参加された先生方にとって、まさにこれからの時代のための「授業づくり」のヒントになったと思います。またAPU下之門様の貴重なデータは、英語を使って世界で働いていくのであれば、英語教育改革が待ったなしの状況であることも示唆しており、TOEFLテスト日本事務局のスタッフ一同身が引き締まる総会となりました。

最後に本総会開催にあたり、登壇いただきました先生方、アライアンス関係の皆様、サポートいただきました関係者の方々のご理解とご協力に、厚く御礼申し上げるとともに、お忙しい中ご参加いただいた皆様にも貴重なお時間をいただきましたことをこの場を借りまして心より御礼申し上げます。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。