大阪国際大学グローバルビジネス学部における、TOEFL® テストオンライン模試TOEFL iBT® Complete Practice Test(以下、TPO™)の導入や活用方法に関して伺いました。
“英語力強化に欠かせないTOEFL® テストとTPO™は今後ますます本学の英語教育にとって重要なものとなる”
夜遅くまで図書館の明かりが灯っていたアメリカのとある大学の図書館。数多くの学生がシラバスに指定されたリーディングアサインメントをこなそうと必死に勉強していた。アメリカの大学での印象は、30年近く経った現在でも強烈に脳裏に焼き付いている。かたや日本の大学はどうか?グローバル化はますます進む中で、世界の主要国は高度な技能を持つ外国人を受け入れる方針を打ち出しており、日本も遅ればせながら、そのようなグローバルな流れに乗ろうとしている。日本の企業もグローバル化に向けて迅速に対応をしている。日本のある有名化粧品企業も2018年をめどに本社部門の公用語を英語とすることが新聞報道されている。有能な人材は自らの能力がより良く発揮できる国や企業を求めて、国境を越えて移動している。より良いチャンスを求める競争は今後とも厳しいものになっていくことは明らかであろう。大学を卒業したというだけで、果たして、これからの厳しいグローバル化社会を生き抜いていけるのか?日本の大学教育はこのままで大丈夫だろうか?この問題意識は、大阪国際大学グローバルビジネス学部インテンシブコース(以下GBIC)に関わる教員が共有するものである。
交換留学のためには、TOEFLテストの高い得点が必要で、留学準備、TOEFLテスト対策のため、大阪国際大学の3学部(グローバルビジネス学部、国際教養学部、人間科学部)及び国際大学短期大学部の全体でTPOの受験を奨励しているが、本学の中でも特に組織的にTPOを活用してきたのがGBICである。以下では、GBICの概要、その実績、そして今後の展開について紹介する。
GBICは、2014年度に大阪国際大学(大阪府守口市)でグローバルビジネス学部がスタートした際に同学部に設置されたものである。2017年度までに4期生までが誕生した。総勢、36名の学生がGBICに所属している。その特色は以下の3点である。
①第一に、GBICでは、4年間を通して、英語力強化、交換留学での専門科目受講、英語を使った授業、英文卒論執筆などのプログラムが用意されている。所属学生は、指定された授業を受講することが求められる。初年次は、TOEFLテスト等の成績向上と交換留学での専門科目受講を目的に、英語力強化のための科目を集中的に履修しなければならない。2年生の秋から交換留学に行くためには、1年生の12月に交換留学選考を受けなければならない。大学入学後8か月ほどで一気に英語力を伸ばすことが求められる。そのために、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの能力のみならず、タイピング、ノートテイキング、論文・レポート作成方法、2年次以降、英語による専門科目の授業を受講しつつ、英語力の更なる強化を目指し、交換留学に旅立つ。夏休みには2週間の特訓講座があり、朝から夕方まで連続した英語の授業参加が必須である。この特訓講座を経ると、学生の英語力は急速に向上する。その特訓講座の最後に待ち受けるのが、TPOである。入学後8か月という短い時間で、交換留学先の英語授業を受講できるだけの英語力を付けなければならない。そのために、TOEFLテストの試験対策にTPOが有効であった。TOEFLテストは何度か受験すると徐々に成績が向上する。しかし、受験料は安いものではないので、頻繁に受験することは容易ではない。TPOを利用することによって、TOEFLテストの試験に慣れることができる。GBIC学生はTPO受験を原則義務としており、正式のスコアが出る本番試験の準備が進む。
GBICの英語教育の中心にいるStephen Hattingh准教授は、GBIC用のテキストを自作するとともに、様々な英語学習の仕組みを構築してきた。その中心的な哲学は、彼の次の言葉に表される。それは、"I am my trainer, I will train myself well." である。至極当然なことであるが、日本の大学に在籍する学生の多くには、そのような心構えが欠けている。授業の開始前に教室に入っている、遅刻や欠席の場合には必ず教師に連絡を入れる、予習や宿題は必ずこなす、筆記用具は常に携帯し、ノートテイクを忘れない、授業関係の資料をきちんと整理するなど、社会生活で当然求められる当たり前のことが学生に要求される。
GBICの学生の交換留学は、語学留学ではない。GBICの学生は、交換留学先の大学で、経営学や経済学という専門科目の授業を受講して、一定以上の成績を収めることが求められる。留学先は、英語圏又は英語圏でなくても英語での専門科目を受講できる海外の大学に限られている。もちろん、留学先でアカデミック・ライティングなどの授業を受けることは認められるし、英語圏の大学ではない場合には、スペイン語、フランス語、インドネシア語、タイ語などの授業を受講することもできる。しかし、あくまでも中心は英語で専門科目の授業を受けることであって、語学留学であってはならない。交換留学先でどのような授業を何単位受けるかは、本学部のアカデミック・アドバイザーと相談の上、決定される。1年間の交換留学の場合には、秋学期には専門科目で入門的な科目を中心に3から4科目ほどを受講して留学先の大学授業に慣れ、その後春学期に、ある程度難しい科目を含め、4科目から5科目ほどに挑戦するように指導している。また、どのように安全にかつ楽しく留学生活を送るか、などについての指導も行われている。
帰国後は、英語での授業を含めて本学の専門科目を受講するとともに、3年生と4年生のセミナーで自分の関心があるテーマについて掘り下げた勉強を続ける。卒業論文については、GBIC学生は英語での執筆が義務となっており、セミナー担当教員だけでなく、アカデミック・アドバイザーも必要に応じて、卒業論文作成の手伝いをする。英文の添削では、ネイティブの教員がプルーフ・リーディングをしてサポートしている。交換留学を終えた学生の英語力は飛躍的に高まっており、英語の継続的な勉強を続けながら、TOEIC® テストなどに挑戦し、800点台、900点台の高いスコアを記録している。就職に向けては、1年生の時から就職部職員からのGBIC向けの説明会を開催し、3年生、4年生のセミナー教員を中心に就職を支援している。
②第二の特徴は、少人数教育である。ほぼ毎年10名程度の学生を受け入れており、複数の教員によるきめ細かな指導とサポートを享受できる。GBIC学生の英語指導に当たるのは、本学部の英語ネイティブ専任教員である上述のHattingh准教授ともう一人、Colin Rogers准教授である。彼らは、GBICの授業を担当する非常勤講師への指示なども行っている。また、留学を経験してきた日本人教員も、英語での専門科目を提供するとともに、様々な相談や指導に当たっている。交換留学に際してのビザの取得に必要な書類作成、留学先大学に提出する書類の作成、奨学金申請に必要な書類作成、卒業後の進路相談などについても、アカデミック・アドバイザーを中心に、全学的に支援する体制ができている。
③最大の特色は原則としてコース所属学生の授業料免除であろう。入学時およびそれ以後も毎年継続資格の審査がある。一定数以上の単位を取得しなければならない、学部内でトップ15%以内の成績を確保する、交換留学などの留学をするなどが必要条件であり、当然ながら、教員の指示に従う等の条件もクリアしなければならない。教員の指示の中には、ESSへの参加、単位にならない授業(授業終了後のワークショップや学内での英会話講座参加など)への参加などが含まれる。かなり厳しい条件であり、特に新入生は成績のトップ15%以内という条件に不安を覚える。しかし、結果的に、成績の上位者には多くのGBIC学生が名を連ねる。
グローバルな競争の時代を意識したプログラムであるため、教員による学生への要求は容赦ないものがあり、学生は朝早くから夜まで大学で勉強を続けている。夕方遅く、疲れて帰宅するGBIC学生を見て、日本の一般的な学生を見慣れた大学職員からは「かわいそう」という声も聞かれた。しかし、欧米の大学の厳しさを知っている教員からすると、「まだまだこんなものじゃない」というのが、偽らざる気持ちである。実際、交換留学でアメリカやカナダの大学で学んできた学生は、帰国後、GBICの授業はそんなに大変ではないというまっとうな感想を述べてくれる。これこそ、我々GBICを運営する教員が求めるものである。
では、具体的にどれだけの成果を上げたのか?以下、英語力の向上と交換留学の2点について説明する。
2017年度の4期生が受験した結果を以下の表に記載する。個人情報なので、名前は公表しない。学生は日本人学生だけではなく、タイ、ベトナム、インドネシア、インドなど多様な国籍の学生で構成されており、グローバルなクラス構成となっている。TOEFLテストの試験は9月以降受験指導しており、9月から11月のほぼ3か月の間に、ほぼ全ての学生がTOEFLテストのTPOと本番の試験で10以上のスコア上昇を記録している。それ以外の学生も、2月のTPOの段階で最初から比べて10以上、スコアを伸ばしている。なお、アスタリスクが付されているものは、テスト結果が正確に記録されなかったものである。1期生から4期生まで、ほぼ同じような英語力の向上を達成している。TOEICテストについても、4月、7月、12月と受験をしており、H学生のように4月から12月で200点以上もスコアを引き上げた学生もいる。GBICの英語教育の成果がここに客観的に記録されている。
GBIC学生の交換留学は、2015年秋から始まった。2015年秋からは、カナダ2名(1年)、タイとインドネシア、シンガポールがそれぞれ1名(半年)が交換留学をし、無事に帰国した。2016年秋からは、アメリカ2名(1年)、カナダ3名(1年)、メキシコ、タイ、シンガポールがそれぞれ1名(半年)で同じように無事に帰国した。2017年秋からは、カナダ2名(1年)、ベルギー1名(1年)、メキシコ1名(半年)、タイとインドネシア、シンガポールがそれぞれ1名(半年)であった。2018年秋からは、アメリカ1名(1年)、イギリス1名(1年)、カナダ2名(1年)、韓国2名(1年)、タイ2名(半年)、シンガポール1名(半年)を予定している。以上の学生は、交換留学先で語学の授業を受けるのではなく、英語で行われる専門科目を受講して、一定以上の成績を収めて帰国している。なお、これまで、休学などを除き、GBIC学生の全てが交換留学に行くか、今後行く予定である。今年度末に第1期生が卒業したが、途中で体調を崩した学生1名を除き、全員が、本学での単位と交換留学先での単位を合わせ、良い成績で卒業できている。
2017年3月でグローバルビジネス学部は学生募集を停止し、新たに、2018年4月から経営経済学部に組織変更された。その結果、GBICは募集停止となった。そのため、これまでの4期の学生だけがGBICの学生となる。既に、1期生は英語での卒論を完成させ、コンサルティング、商社、キャビンアテンダントなど、英語を活用してグローバルに活躍する企業に就職を決めている。今後は、グローバルビジネス学部に残る2期から4期の学生の教育を継続し、グローバル化の競争に打ち勝っていける人材の育成を進めていく。
GBICは募集停止になったものの、そこでの英語教育の実績には刮目すべきものがあり、今後は、大阪国際大学全体の英語教育の柱になっていくものである。GBIC英語教育の中核であったHattingh准教授は、2018年4月から大阪国際大学の語学教育部会を統括する役割を担っていく。グローバル化を進めようとする本学は学長のリーダーシップのもと、大学全体で語学教育の強化を行っていく。特に、大阪国際大学国際教養学部はグローバル化の拠点として、GBICの実績を踏まえて、更なる英語教育の強化を進めようとしている。英語力強化に欠かせないTOEFLテストとTPOは今後ますます本学の英語教育にとって重要なものとなる。