みなさん、こんにちは。TOEFL iBT® テストWeb準備講座を担当するETS公認トレーナーの横川綾子(よこがわあやこ)です。今回から新しいモデル学習者・イズミさんをお迎えします。これまでは、モデル学習者の方が書き上げたエッセイを添削したり、アドバイスしたりすることで、エッセイの「完成形」をお見せしてきました。今回は趣向を変え、みなさんには、ブレーンストーミングから校正までのプロセスを、イズミさんと共に体験していただきます。エッセイのEvolutionary process(進化過程)を追体験することで、ライティング練習に新たな視点が加わるはずですよ。
イズミさんへの最初の課題は、以下のトピックについて賛成の立場をとると仮定し、エッセイを書くためのアイディア出しをしてもらうこと「だけ」でした。
Do you agree or disagree with the following statement?
Face-to-face communication is better than other types of communication, such as letters, e-mail, or telephone calls.
Use specific reasons and examples to support your answer.
以下の主張に賛成ですか、反対ですか。
対面でのコミュニケーションは、手紙、Eメール、電話といった他のコミュニケーション方法よりも優れている。
自分の意見の根拠となる特定の理由と例を用いなさい。
「エッセイは書かなくていいんですか?」とご本人から確認があったのも、無理からぬことと思います。なぜイズミさんに、アイディアを出すだけの課題をお願いしたのか。エッセイライティングを料理に喩えると分かりやすいかもしれません。料理では「仕込み」が大切と言われます。仕込みがしっかり行われていれば、調理は手際良く進むでしょうし、仕上がりも上々のはず。エッセイを書く際にも同じことが言えます。英文を書き始める前に、自分はどんなアイディア(=材料)を持っているかを棚卸しし、その中からどのアイディアを使うかを取捨選択し、エッセイの全体像を把握するプロセス(=仕込み)が、エッセイそのものの質(=料理の味)を左右するのだと思います。
料理とエッセイライティング、実は共通点が多いと思いませんか?では、イズミさんの課題を一緒に振り返ってみましょう。
<課題1>
Face-to-face communication (対面でのコミュニケーション)の利点を表すキーワードを、できるだけ多く英語で書いてください。
(例)more information
<イズミさんのアイディア>
<課題2>
課題1で書き出したFace-to-face communicationの利点のうち、説得力があり、具体例や詳細説明が思い浮かぶもの3つを選び、単語・フレーズレベルからセンテンスに発展させてください。
(例)You can get more information.
<イズミさんのアイディア>
イズミさんは、課題1で書き出した5つの利点のうち、①身振り手振りを使える、②誤解が少ない、③人間関係の構築に役立つ、の3つを選び、センテンスにしてくれました。この①②③が、エッセイの本論(Body)を構成する各パラグラフの主題を示すTopic sentence(「第1回 エッセイライティングのポイント」参照)の原形となります。この段階では、英語としての自然さや文法の正確さにとらわれすぎず、自由にアイディアを出すようにしてください(イズミさんのアイディアにも英文校正はしていません)。慣れるまでは、日本語で行ってもいいでしょう。
このアイディア出しとアイディアの取捨選択は、以下のような図を使って行うと、自分の考えを視覚的に捉えることで、より自由に発想することができます。
中央にトピックを置き、関連するキーワードを放射状に並べていく
(例)
中央にトピック、周りにセンテンスに発展させた3つのアイディア、右下に結論を配置する
(例)
図ではなく、シンプルに箇条書きするだけでも構いません。TOEFL iBTテストを受験する際も、試験会場で配布されるメモ用紙を使い、アイディア出しと取捨選択をしっかり行ってから、そのメモを見ながらタイピングしていきましょう。30分の解答時間のうち、3分前後はこの事前準備に使います。命名:「急がば回れ」作戦!最後に、今回のポイントを振り返りましょう。
【エッセイの「仕込み」手順】
1.まずは、単語・フレーズレベルでアイディアを自由に書き出していく
いかがでしたか。これからモデル学習者のイズミさんはエッセイを書いていくわけですが、今までエッセイライティングの練習をするとき、いきなり第1パラグラフから書いていた人は、まずはアイディアの棚卸しをする習慣をつけてください。その方が、書いているうちにネタ切れを起こしたり、内容が気に入らなくて書き直したり、同じことを繰り返し書いてしまうことによる時間のロスを防ぐことができます。ぜひエッセイの「仕込み」を習慣にしてください。では次回(第9回 自分にとっての当たり前≠人にとっての当たり前)お会いしましょう。