スペシャルインタビュー
英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー
- 出口治明氏
- ライフネット生命保険株式会社
代表取締役社長
前回に引き続き『グローバル人材について』お話をお伺いしました。前回の内容はこちら
“グローバルな時代に英語力でも、アジアで一番を目指すことが一番シンプルで分かりやすい目標”
「アジアで最も輝く生命保険会社」を目指すために、グローバル人材を採用するポイント、また採用した人材を活用するポイントを教えてください
- 出口氏:
- ライフネット生命保険会社は、100年後に世界一の保険会社を目指しています。社員の採用として新卒採用も行っていますが、我々の新卒の定義は30歳未満であること、ただそれだけです。ようするに大学院が当たり前で、しかもギャップイヤーを含め、多様な経験を積んでから入ってもらって全然遅くないと考えています。新卒という定義は30歳未満というだけで、あとは一切問いません。それからコンテンツを考える能力を持っているかどうかを見極めたいために、「重い課題」というものを出しています。これはこちらの課題に対して字数無制限で論文を書いてもらっています。このような課題を課す理由は、数字とファクトとロジックで、自分の考えを展開する能力を見たいわけです。この3つの能力さえあれば世界のどこに行っても通用すると我々は思っているので、ライフネット生命の未来を担う人材というのは、30歳未満で色んな経験を積んでいて、それから数字・ファクト・ロジックで、物事をきちっと考えて表現できる能力があるかどうか、それを最優先に見ています。
- 編集部:
- TOEFL®テストと同じですね。TOEFLテストでも、出された問いについてロジカルに説明することを求める問題が出題されます。
- 出口氏:
- 少なくとも文化や社会習慣が違う人と、コミュニケーションを取ろうと思えば、数字・ファクトを材料にロジックを組み立てるしかありません。カルチャーでも全部、数字・ファクト・ロジックに直すことができると思います。直せないものは単なる好みとか趣味の問題なので、それはグローバルになりません。囲碁でもお茶でもお寿司でもグローバルになるのは、数字・ファクト・ロジックで説明できるからですよね。
- 編集部:
- その魅力なり、やり方なり、どうしてそうなるのかということを論理的に説明できるかどうかですね。
- 出口氏:
- ええ。ですから日本は、本当に日本という社会を変えるためには、やはり戦後の高度成長がなぜ起こったかということをちゃんと総括しないといけないと思います。これは野口 悠紀雄さんの「1940年体制-さらば戦時経済」という名著に尽きていると思いますが、ひと言でいえば統制談合経済、鎖国経済です。為替レートは1ドル360円と当局が決めて、為替の事すら考えないで輸出に励んでいたわけですから、こんな楽な経営はないわけです。ですから「1940年体制」というレジームをちゃんと考えなければ、これからの日本というものを僕は想定できないと思っています。何も考えなければ、これまでの成功体験だけで、これでうまくいったんだと言い続けていて、考える力がなくなっているわけで、だから未だに日本の大企業は、当時と同じように「青田買い」を続けているわけです。
- 編集部:
- 経営方針にしても、人事にしても、その時代のやり方から結局抜け出せていない。
- 出口氏:
- ですからその、「1940年体制」の下でうまくいった社会システムのままで経営しているので、株価がピークの3割に落ちてしまった、経済がうまくいかなくなった、というのは当然です。高度成長時代と同じことをやっていて、そんなものがうまくいくはずがありません。もうそこに尽きます。グランドデザインをちゃんと把握する能力、それは歴史や文学や哲学やいろいろな古典を読むことによって一番鍛えられるので、グローバル人材に一番必要な能力、やはり人、本、旅といいますけれども、古典を読むことは大事だと思います。愛読書が一緒だったら外国人ともあっという間に仲良くなれるわけです。
- 編集部:
- 採用試験の論文は、事前に出されるのでしょうか。
- 出口氏:
- もちろんです。当社の「重い課題」はその場で書くなんてそんなことは不可能です。ウェブ上にも出しています。字数無制限なので、字数についても当人に決めてもらいます。80枚書いても4枚書いても構いません。
- 編集部:
- 内容が合理的で説得力があれば、4枚でも十分ということでしょうし、50枚書きたいと思えば、自分のその考えを50枚で書いて提出してよいということですね。そういった意味では、自分の考えをどうデザインして書くかということが問われますね。
- 出口氏:
- ええ。しかもちゃんと勉強していなければ書けません。
- 編集部:
- 課題を拝見しますと、文系か理系かというくくりでも設定されていらっしゃらないですね。
- 出口氏:
- これもおかしな話で、文系、理系と分けているのは日本だけで、世界の大学ではそんな分け方をしているところはないと理解しています。
- 編集部:
- 企業が人を採用するときに見るのは、やはりその人自身であって、理系だからとか、文系だから有利だとかそういうことではない。就職のすみわけを文系、理系で分けているのは日本だけですね。
TOEFL Web Magazineの読者にメッセージをお願いします
- 出口氏:
- 英語が好き嫌いというベースではなくて、英語はリンガ・フランカというデファクトスタンダードになっているので、やはりTOEFLテストのスコアは 100を目指してほしいという気持ちがあります。このスコア100というのは、シンガポールのレベルです。日本はアジアで一番の先進国で、これから中国とも競っていこうと、そういう気持ちを持っているのであれば、やはりグローバルな時代に英語力でも、アジアで一番を目指すことが一番シンプルで分かりやすい目標なので、読者の皆さんにはTOEFLテストのスコアは 100を目指して頑張ってくださいと申し上げたいです。別に誰もがアメリカに留学する必要はないと思いますが、僕は英語力が上がれば、得られる情報量が4倍、5倍になると思います。インターネットで引くということだけでも、日本語で引くのと英語で引くのとでは全く広さと深さが違いますし、ちょっと英語ができるだけで宝の山にぶち当たる、そういうふうに思います。若い皆さんは是非勉強してくださいというのが私からのメッセージです。
- ライフネット生命保険株式会社
代表取締役社長 出口治明氏プロフィール
- 大学を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。 ロンドン現地法人社長、国際業務部長を経て、2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年にライフネット生命保険株式会社に社名を変更、生命保険業免許を取得。現職。
- ライフネット生命保険株式会社
- ライフネット生命保険は、相互扶助という生命保険の原点に戻り、「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスの提供を追求する」という理念 のもとに設立された、インターネットを主な販売チャネルとする新しいスタイルの生命保険会社です。また、2012年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。
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