スペシャルインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー

  • 田村耕太郎氏
  • 一般財団法人 日本戦略支援機構
    代表理事

前回に引き続き田村耕太郎氏にお話をお伺いしました。前回の内容はこちら

“英語の試験だけでも、東京大学もハーバード大学も違いがなくなれば、ある意味日本の大学の教育改革にも大きなインパクトを与えることになる”

TOEFLテストについてお考えをお聞かせください。

田村氏:
私は議員時代の第1次安倍内閣の頃から『TOEFL® テストにすれば日本人の英語力は上がる』と言い続けています。今までの英語教育は、私は目標設定の間違いだと思っているんです。つまり、今の大学の入試に合わせた英語でも、日本人がこれだけ結果をだせるのであれば、それをTOEFLテストにして適応していけば日本人の英語力はものすごく上達していくと思います。色々な英語の試験がありますが、世界と同じスタンダードな英語の試験にした方がいいと思います。私はよく、野球のたとえで、飛ぶボールを使わない・飛ぶバットを使わないというのですが、もちろん自分の自信を付けるためにスコアの出やすい試験を使うということも初級者には大事だと思いますが、あくまで目標設定はグローバルスタンダードな試験であるTOEFLテストを使うべきです。しかもTOEFLテストは大学生活で日常的に使われる文法や語彙をたくさん学べますからそういった面でも、すぐに学生生活や日常生活で応用できるように作成されています。そのように目標設定を変えるだけで学校の先生も対応を変えていくと思います。そうなれば、今はTOEFLテストのスコアがアジアで下から3番目などと言われていますが、一気に変わるような気がします。
編集部:
色々な議論の中に、高校生には難しすぎるのではないかなどのご意見もありますが、実際にTOEFLテストの場合は目標がスコアで出ますし、何よりも他の国の同じ世代がどういった目標を持っているかということもスコアでわかります。
田村氏:
同じ基準で競えるということはベンチマークとしてはとても大事だと思いますし、難しすぎるという意見は学生に対して失礼だと思います。あれだけ難しい数学や物理ができるわけですから、本当に彼らが一生懸命対応して無駄な時間にしていることが、これからの将来が開ける時間に変わるとしたらどうでしょうか。今の入試の英語だって違う意味でとても難しいと試験と言えます。そうだとするならば、道が開ける難しさの方が“頑張りがい”があるのではないでしょうか。私は日本の高校生や中学生の実力を信じているので、TOEFLテストが難しすぎるという批判はあたってないと思います。

田村耕太郎氏インタビュー

大学入試にTOEFLテストの導入の検討等、英語にフォーカスが当たっていますが、このことは日本の今後に関してどのような影響を与えると思いますか。

田村氏:
日本の顔として世界の舞台に立とうと考えている方は、TOEFLテストを経験したほうがいいと思います。成績が優秀な人が優れているとかそういう議論や差別ではなく、そういう立場になりそうな人が受ける仕組みにした方がいいと思います。世界の国の中で、日本に関心があった時代は、日本人の下手な英語でも話させてくれましたが、正直、今の世界の国際会議では下手な英語を黙って聞いてはくれません。ネイティブな国から見て関心が強いのは中国、インド、南米ですよね。そういう国の方たちは本当に見事な英語を話します。ですから日本のリーダーになるような人たちは、同じような喧々ごうごうの議論の中に自分から切り込めるような英語力を持ってほしいですし、短い時間で自分の言いたいことを言って相手を振り向かせるような英語を使わなくてはいけません。そういう立場の方は発音を含めて、相手の言語に対するリスペクトをしなければいけませんので、正しい英語を早い時期から身に付けるという意味でも、今後リーダーになる人にとってはTOEFLテストの洗礼を受けるというのがマストだと思います。
編集部:
どの国でもそうですが、学のあるといいますか、それなりの立場や教養がある人であれば、それなりの立場や場面で話す英語と、普段の日常生活で話す英語というものはしっかり区別していますね。
田村氏:
そうだと思います。私は少なくとも国家公務員の上級試験にはTOEFLテストを入れるべきだと思っていますし、政治家もそれだけTOEFLテストについて言うのであれば、一回は受けた方がいいと思います。それと将来いろいろな場所でリーダーになる可能性のある人、いわゆる東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学などこういった大学の入試においてTOEFLテストを導入するというのは妥当な考え方だと思います。ただ、日本はシンガポールのようなサイズの国ではありませんし、全員英語が出来なければいけないというのも非現実的だと思います。でも、少なくとも「英語を勉強して何かをしたい」と考えている人が的を絞って勉強できる試験にした方が、彼らのためになるのではないかと思います。
編集部:
そうすると英語を教える先生方にも考え方を変えていただく必要がありますね。
田村氏:
そうですね。ほとんどの先生方は安定した立場だと思いますので、1回海外に出てグローバル社会を肌で感じてもらって「こんな英語を子どもたちに教えていていいのか」と自主的に感じていただける機会を持った方がいいかと思います。先生と言われる方には公に対して義務があります。人を育てるというその体験を実感できる機会があればいいかと思います。
日本人というのは、明治維新からのキャッチアップをみてもわかるように、目標を正しい位置に設定すれば一気に邁進する民族だと思いますので、受験英語をグローバルスタンダードな試験であるTOEFLテストに替えることによって、次の世代には実践的な英語を話す人が一気に増えることになるのではないでしょうか。また、日本のグローバル化の問題は殆どが英語を話せないという問題から派生していると思います。それは、ものすごく簡単な話で、ただこの議論から堂々巡りで抜け出せないっていうことが残念なことだと思います。英語をやればいいんです。やるしかありません。
編集部:
アメリカが良いというわけではありませんが、アメリカにはとりあえずやってみて、その経験から学ぶという考え方があります。そこから色々な新しいことが生まれることもありますし、日本でもとりあえずやってみて、ということがもっとあってもいい気がします。
田村氏:
そうですね。私が、唯一危惧することは学校の先生の対応が今と変わらず、TOEFLテストの対策が万全な学校と、そうでない学校のあいだで教育格差が生まれるようなことになってはいけません。英語がそういう選別の道具に使われることがないようにフェアに授業が受けられるように学校の先生を変えていかなくてはいけないと思います。それと、TOEFLテストのスコアがアップするようなフェアな仕組みが出来たら本来の望みどおりになるかと思います。
編集部:
私どもCIEEの立場からすると、TOEFLテストが入試に入った場合でも、学校の先生方には十分に対応していただける内容と思っています。今のような、○○大学用の英語の試験への対策、というような大学によって対応が細かく分かれることがなくなります。それとTOEFLテスト自体の内容は、特別な英語ではなく基本が出来ていなければならない問題なので、今よりも学校の先生方はきちんと英語を教えることができると思います。また、一昨年から、TOEFLテストを開発しているETSと弊協議会で教員向けのTOEFLテスト教授法セミナーを開催しています。(*1)。例えばTOEFLテストのスピーキング、ライティングではどんな答えが評価され、そこにはどんな狙いがあるのかなど、かなり細かく解説する場になっています。参加者の属性をみると、大学の先生方だけではなく、高校の先生方も随分参加されています。高校の先生も、TOEFLテストは将来自分たちの子ども達のために役に立つ試験との理解を持たれています。
田村氏:
私の知っている高校生たちは、その親の影響もあるかと思いますが、自分で情報検索をして、将来を見据えて東京大学と併願でハーバード大学やイェール大学を受けたりしています。昨年ハーバード大学の幹部の方にお会いした時に、日本からの出願がこれまでで最大になったと、すごく喜んでいました。だからといって、たくさん日本人が受かっているかと、いうとそうではありません。高校生にとってみれば、あれだけ内容の違う受験の準備をすることはとっても大変なことだといいますね。そういう意味でも、英語の試験だけでも、東京大学もハーバード大学も違いがなくなれば、ある意味、日本の大学の教育改革にも大きなインパクトを与えることになるかと思います。
学部から一生懸命勉強してTOEFLテストを受けて留学して、世界で活躍している方と会うと「本当に英語力があってよかった」とみんないいます。オプションも出会う人間も広がる。受験の時は、アメリカの大学受験を恨んだり憎んだりしたけれど、そのおかげで自分は世界が広がったし、今の自分があるのも英語のお陰だと言っています。彼らを見ていると、英語力があるだけで、どれだけ人生の選択肢が広がるかということをみんなに伝えたいですね。

また、今の若者は内向きだとか草食系だとかいいますが、そうではなくて、私は被害者だと思うんです。そうしている大きな原因は日本の英語教育です。子どもたちのオプションを広げるような教育に変えていかなくてはいけないと強く思います。

田村耕太郎氏インタビュー

今後も色々な活動をされると思いますが、田村さんの目標またはどういう視点で活動していくのかお聞かせください。

田村氏:
私は、国のことを考えて、志を立てて政治家になりましたし、今でもプロフェッションとしては政治家だと思っています。国会議員をずっと続けるのではなく、民間や学界とも行き来しながら必要に応じでまた政界に出たり入ったりする先例になりたいと思います。そのインフラを作っていきたいです。日本という国に生まれて感謝しますし、日本人として本当にありがたいと思いますが、世界はダイナミックに変化していますし、今のまま日本がこれだけ情報鎖国で、ほとんどの人が世界に出ず、また海外のものをはねのけてしまうという感じになると日本の良さが失われてしまいます。日本が輝いていた頃は、世界に門戸を開いて、色々な世界の文化を受け入れて、また、それを上手に取り入れ、そして日本の付加価値をつけてより豊かにしていった時代だと思います。やはり日本という国を開くためにも、たくさんの人に海外に出て欲しいですし、また行きっぱなしになるのではなく日本に戻ってきて欲しいです。今の日本の最大の課題は多様性のなさだと感じています。外国から色々な人を受け入れ多様化していくことは、もちろんデメリットもあるとは思いますが、それをコストとして引き受けていきながら国を開くことで、活力を取り戻すことができるのではないでしょうか。そういう意味でも英語や教育が大事です。世界中のリーダーが何を大事にするのかといえば、やはり教育です。これからの時代を考えたら、財政、経済、農業など色々な大事なことはありますが、私は広い意味でも教育ということにも携わっていければと思います。次世代の人に広いオプションを持ってもらえるそういう日本にしていかなければいけないな、と一国民として思っています。

TOEFL Web Magazineの読者へメッセージ

田村氏:
TOEFLテストを通じて英語を勉強することは、未来を開いていくことです。世界では毎日70億人が色々な活動を起こして日々変わっています。もちろん、1億2000万人も少なくはありませんし、日本の中だけで発想したり活動したりすることも豊かな人生の一つではありますが、とくに若い人たちや、これからもうひと花と考えているシニアの方々には、視野や活動の場を広げてもらうためにも英語を身に付けてもらいたいです。これからは絶対英語が必要です。早く始めることにこしたことはないけれど、いつからでも遅すぎることはありませんので、TOEFLテストのような世界の色々な人たちと共通の土台で、ベンチマークできるような試験を目標に、英語をしっかり手に入れて欲しいと思います。

田村耕太郎氏インタビュー

 

(*1)英語教員向けTOEFL iBT® テスト教授法ワークショップ
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【参考著書】
君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から 講談社

田村耕太郎氏
  • 田村耕太郎氏 プロフィール
  • 前参議院議員(二期)。日本戦略支援機構代表理事。第一次安倍政権で、アベノミクスの司令塔、内閣府大臣政務官(経済財政担当)を務める。慶應大学院、エール大学院、デューク大学院、東京大学EMP修了。日本人政治家で初のハーバードビジネススクールのケースの主人公になる。前大阪日日新聞社代表取締役。
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