スペシャルインタビュー
英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー
2015.11.24
大門小百合氏
株式会社ジャパンタイムズ
執行役員
編集担当
今回は株式会社ジャパンタイムズ 執行役員の大門小百合氏インタビューの後編になります。前編の内容はこちら
“目の前に来たチャンスはとにかく活かすことで、将来が見えてくる”
記者になられたきっかけを教えてください
大門氏: 大学では政治を勉強していましたが、政治家になりたいとは思っていませんでした。
また、学生時代にNHKでアルバイトしていたことがあり、報道現場に触れる機会をいただき、ニュースを伝えるという仕事に興味を持ちました。
その時は自分が英語で記事を書けるとは全く思っていませんでしたが、報道関係に近いところで、できれば英語を使う仕事に就きたいと考えるようになり、ジャパンタイムズに入社しました。
4月に入社したての頃は、原稿を書くのに非常に苦労しました。英語で原稿を書く能力とあわせて、社会におけるあらゆる専門知識、例えば裁判なら裁判の手続き、政治なら国会の仕組みや様々な法案に関する知識が必要でした。私の人生で一番勉強したのは、入社からの最初の10年間だったかもしれません。ジャーナリズムの勉強は学校の勉強とは違いますが、私にとっては社会を知る上でとても意味がありましたし、新聞記事を書く上で必要な英語を学ぶことができました。そういう意味では私なりに必死に勉強しましたが、その一方で「お金を貰いながら勉強させてもらっていた」という気持ちもあります。
ジャパンタイムズはいわゆる大手の新聞社と違って会社が小さいこともあり、基本的にOn the job trainingで育てられました。何を取材してくればいいのかわからない状況で、いきなり一人で現場に行かされたり、書いた原稿も、最初は原型を留めないほど直されて落ち込みながら仕事をする毎日でした。同じ部署に長年海外で過ごした帰国子女の同期が二人いたのですが、その二人と比べると英語力がないと感じ、自信をなくすこともありました。そんな私に、先輩が「英語はそのうちできるようになるからあまり気にするな。それよりも取材で横着するなよ」とアドバイスをくれ、記者として育ててもらいました。
ジャパンタイムズは、英語で記事を書きますが日本の新聞社なので、記者クラブにも属していて、国会や省庁などを取材する場合、記者クラブを拠点に取材に出かけ、原稿を書いたりしています。他の新聞社の人は同じ記者クラブに7人とか10人いるので、同じ社の先輩と相談しながら仕事ができるのですが、ジャパンタイムズの記者は、記者クラブには基本的に一人しかいません。駆け出し記者の頃はわからないことだらけだったので、とりあえず周りで起こっていることを観察し、わからないことは周りの方に聞くしかありません。政治担当の時は、政治家の秘書の方や政党の職員の方が教えてくださったり、国会議事堂の衆議院の事務局の方に説明していただいたり、他社の記者の方にも助けていただき、色々と教えていただきました。本当に様々な方にお世話になりながら学ぶことができ、外に一人で出してもらえたことは、今となっては良かったと思います。
また、ジャパンタイムズは不思議な新聞だと思うんです。英語で書いてあっても日本の新聞で記者クラブに属しており、外国と日本の真ん中にいるような感じなので、文化のはざまにいることで見えてくることがたくさんありました。
女性の役員ということで、感じることはありますか
大門氏: 執行役員になってから取材を受けることが多くなったことを考えると、日本ではまだまだ女性の役員が少ないのだろうと感じますし、メディアの中でも執行役員や役員の女性は、ほとんどいません。人口の半分が女性であるにも関わらず、メディアでの上層部に女性がほとんどいない状態なのです。なぜ上層部に女性がいなければいけないかというと、どのコンテンツがどういう形で人の目に触れるかなど、男性目線で決めるのと女性目線で決めるのとでは違うと思うからです。別にどちらが良いというわけではなく、両方見せていかなければいけないと思います。女性ならではの気づくところ、女性が「これ大事だよ」という声が今までは反映されてなかった。それはメディアに限らず、他の業界にとってもそうだと思います。男性側に悪気があるとは思いませんが、気づくのが難しいと思うんです。子育ての苦労など、女性にとって身近な事柄について発信していくことで男性が気づくこともあると思うんです。子育てだけでなく今後は介護の問題も出てきますし、日本の将来に向けて女性も男性もこれからの働き方をもっと考えて、変えていくことが必要だと思います。
TOEFL Web Magazineの読者へメッセージをお願いします
大門氏: 「留学したい」「海外に住みたい」など色々とやりたいと思った時に、家庭の事情、お金の問題や仕事などでタイミングが合わなかったり、簡単にはいかないことはあるかと思います。でもすぐに諦めないで、「どうやったら実現できるのだろう」と一度考えてみる。ある意味欲張りなくらいでいいと思います。例えば「結婚か仕事か」「仕事か子育てか」というような選択があるとしたら、どちらかではなく「なぜ両方できないのか」と考えてみる。できるようになるには「どういうことができなければいけないか」「どんな人に助けを求める必要があるのか」「その前に、自分でどのような準備をしなければならないか」などと突き詰めて考えていくことで、100%実現はできないかもしれないけれど、少なくとも前に進む道が見えてくると思います。困難なことがあり選ばなければいけない時に、「諦めないで、どうやったらできるか」ということを考えることで、色々な可能性が見えてくると思います。
それから海外に出て様々な人と触れ合うことで、自分も刺激を受けて大きな成長ができると思うので、とにかく人に会いチャレンジを続けていくことで、頑張ってほしいと思います。
編集部: チャレンジしていくということで、それが、活力になり前向きな力を生み出していくということがありますよね。
大門氏: 将来何を本当にやりたいかわからないという人が多いと思うんです。若いときはそれでもいいと思います。私も学生の頃は何をやりたいかわからなかった。でも目の前にあることに向き合い、「これをやってみよう」ということがある時に、それにトライをしてみることが大事だと思います。そうすることで次の道が見えてくる。様々な出会いを通して、「なるほど」と思うヒントが落ちていたりするので、色々な機会を無駄にしないことが大切です。目の前に来たチャンスはとにかく活かすことで、将来が見えてきます。
大門小百合氏 プロフィール
上智大学外国語学部卒業。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年から執行役員編集担当となり、100年以上続く同紙の歴史で初の女性編集責任者に就任。著書に「ハーバードで語られる世界戦略」(光文社)、「The Japan Times報道デスク発 グローバル社会を生きる女性のための情報力」(ジャパンタイムズ)がある。
株式会社ジャパンタイムズ
1897年の創刊以来、多様で独自性のある日本関連の英文ニュースを提供している国内で最大の販売部数を誇る英字新聞社。政治、経済、文化、社会およびスポーツ報道を通じ、日本を世界に発信し続けており、2013年からは「The Japan Times / International New York Times」の名称で、ニ ューヨーク・タイムズ紙国際版とセット発行を開始。
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。