スペシャルインタビュー
英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー
- 板倉啓一郎氏
- アデコ株式会社
人財紹介事業本部長
今回は様々な国でキャリアを積まれてきた、アデコ株式会社の人財紹介事業本部長板倉啓一郎氏のインタビューです。
“国ごとに異なる仕事の考え方や違いを理解し、その国ごとに合ったビジネスを行うことが、グローバルビジネスで最も大事”
貴社についてお聞かせください
- 板倉氏:
- 弊社は売上規模で世界最大の人材サービス企業であり、日本においても大手の人材サービス会社として、昨年創業30周年を迎えました。サービスラインナップは人材紹介(正社員の転職サービス)、一般派遣、紹介予定派遣、プロフェッショナルスタッフィング、HRソリューション、アウトソーシングとお客様の様々な人材ニーズに応える多様多彩なサービスがあります。
人財紹介事業本部について教えてください
- 板倉氏:
- 新卒の就活支援から経験者、プロフェッショナル、エグゼクティブの方まで幅広い転職の支援サービスを提供しています。職種別、業界別にチームを分け、さらに、外資企業向けにバイリンガルの方、グローバルエグゼクティブの方をご紹介しています。一般的には企業を担当する営業担当と、人財(候補者)を集めてインタビューする人財側の担当とを分ける、分業式(180度式)が主流ですが、私どもは候補者の方と企業の両方を担当する両面式(360度式)で情報の精度と専門性を高めています。そこが他社との差別化になり、日本でも急拡大し私が入った2年前に比べ倍以上の規模になっています。
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2年前にアデコに入社し、現在、人財紹介事業本部の本部長として働いています。弊社では、“人財紹介事業の成長”がグローバル戦略の柱の一つです。私が2年前に入社した時は、経営幹部は別として、人財紹介部門の現場で英語を話せる人が決して多くはない状況でした。マーケットからは「アデコは外資に強い」という印象があるのに、外資系のお客様に対応できる十分な環境は整っているとは言えませんでした。そこで国籍を問わず多様なバックグラウンドを持つ方を積極的に採用し、グローバル人財を増やすことを始めました。今では15%くらいがヨーロッパ、中国、韓国、アメリカ、マレーシアの出身者で占められており、社員やインターンとして働いています。おかげさまで非常に多様性に富んだ環境になり、様々な国の言葉が飛び交うオフィスになりました。
- 編集部:
- 海外から来ているインターンの方は、日本の大学に留学している方ですか。
- 板倉氏:
- はい、日本の大学に留学している方もいますし、弊社は幸いにしてグローバルで認知されていますので、日本に興味を持つ方が、弊社のWebサイトに直接海外から応募があるケースもあります。インターンとして色々な立場の人がおり、半年のインターン後また海外の大学に戻る方、日本で就職したい、弊社に就職したいと言ってトライアルで来られている方もいます。経験を活かして自国で起業をしたいと考えている方もいます。限られた期間内に日本の色々な文化、仕事、紹介サービスをとても熱心に吸収していきます。インターンは2年前から年間約8名ずつ採用していますが、昨年のインターンの中にスイス・ドイツ・フランス・イタリア・日本語と5か国語を話すスーパーな女性がいました。彼女は日本でのインターン経験を活かし弊社のスイス本社のオープンポジションに応募をして、今ではグループCEOのアラン・ドゥアズの秘書として働いています。
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弊社に登録してくださる求職者の方からも「アデコは外資に強い」という期待があり、また企業側からも「グローバルなアデコに頼りたい」というニーズがあります。そこには当然語学力が必要ですが、実際のグローバルビジネスで最も大事なことは、国ごとに異なる仕事の考え方や交渉の仕方など、日本人と違うところを理解し、その国ごとに合ったビジネスを行うことです。そのような意味でも、敢えてトラブルや違和感があっても、どんどん海外からインターンを呼んできて各部に配置して、試行錯誤しながら問題を解決していけるような環境を作っています。グローバル化の中ではそれが普通であり、そのような経験があるからこそお客様と話すときに、その経験と比較しながらアドバイスやご提案ができるようになります。失敗談もシェアすることでお客様の不安も解消していくことができると思います。
国によって仕事に対する働き方や考え方の違いなどありましたら教えてください
- 板倉氏
- 日本と同じ国はあまり多くはありませんが、特に、意外なのはオーストラリアです。定時になったらみんな一斉に帰ります。そのためオーストラリアに拠点を持つ日本企業では、駐在している日本人が残業し日本とのやりとりをすることになると聞いたことがあります。これは、社会の仕組みや文化の違いに起因するものだと思います。オーストラリアでは、契約時間内に保育園に迎えに行けなかった場合、とても高い延長料金がかかってしまうことがある一方で、人々はワークライフバランスをとても重視する文化が根づいていることが伺えます。
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- 長時間労働については、以前、スイスから来ていたインターンとかなり議論したことがあります。“なぜ日本人はこんなに働くのか、もっと自分の時間、家族との時間を大事にすべきでは”と苦言を呈されました。私は日頃から、日本人にとって“会社”が心のよりどころになっているところがあるのではないかと感じています。例えば残業をとても多くしている人がいますが、なぜか、それが苦しそうではなく活き活きとやっている人っていますよね。会社や職場の仲間を家族のように思う気持ちが、そのようにさせているのかもしれません。
誤解があるといけないのですが、残業を肯定しているわけではありません。個人的には働き方は自由でいいと思っています。一方で“ワークライフバランス”という言葉にはちょっと厳しい考えがあって、「ワークがきちんとできなければバランスはとれない」と思っています。その部分をはき違えてスタイルだけを真似しようとするのは違うのではないかと思います。育ってきた環境や文化などによって、仕事に対する考え方も異なりますから、正解がないというのが結論です。
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特に弊社ではフルフレックス制を導入しています。業務上スマートフォンやノートPCが必要な社員は全員所有しているので、セキュリティが十分に担保された上で社内システムにはどこからでもアクセスすることができます。それにより、会社で勤務する必要性がなくなりました。国籍・性別・年齢・業務時間、さらには経験も関係なくパフォーマンスが重視され、評価が決まります。このような体制を整えることで、グローバルで多様な働き方を求める若くて優秀な人材が集まるのだと思います。
次号は「アデコ株式会社 人財紹介事業本部長 板倉啓一郎氏 ―後編―」をお送りいたします。お楽しみに!
- 板倉啓一郎氏 プロフィール
- 1986年に慶應義塾大学理工学部を卒業し、伊藤忠商事に入社。
高校までは剣道、大学からは競技スキーに没頭し、現在はゴルフにはまっている。商社では機械部門で、欧米、東南アジア20か国以上の出張を経験。18年前に人材サービス業界に身を転じ、日系、米系の外資系企業で香港・上海の駐在を経て、現在、スイスに本社があるアデコ株式会社の人財紹介事業本部長として勤務。
- アデコ株式会社
- アデコ株式会社は、スイスに本社を置き、世界中で60を超える国と地域で総合人材サービス事業を展開しているアデコグループの日本法人で、企業との強いリレーションをもとに、人材派遣、転職支援、アウトソーシングなど、あらゆる雇用形態の多種多様なお仕事をご紹介している。特に、近年では転職支援を強化しており、業界、職種に精通したコンサルタントやマルチリンガルの担当者を増員し、最適な転職を実現できるようサポートしている。
アデコ株式会社 Webサイト: www.adecco.co.jp
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。