“世界には色んな人がいて、色んな価値観があるってことを実際に肌で感じてもらいたい”
私は大学で留学生担当の事務職員として働いており、日々の業務のなかで、より高度な英語運用能力が必要だと感じていました。「いつか英語圏の大学院で修士の学位を取得したい」と夢に描いていました。
そんな時「ALLEX奨学金プログラム」を偶然インターネットで知りました。それは2年間奨学金(ティーチングアシスタントシップのようなもので、授業料、寮費等が免除される)を受けつつ、現地の大学で日本語教師として活躍できるというものでした。大学時代から日本語教師に興味を持っており、そのためのコースも履修していたので、一石二鳥のプログラムでした。
ALLEX奨学金プログラムは、アメリカの大学・大学院への留学と日本語教師としての活動を行うプログラムです。派遣前にはアメリカの大学で日本語プログラムを運営するために必要な知識と技術の体系的習得を目的とした日本語講師養成プログラムを修了することが義務づけられており、任期中の授業料と住居費、食費は全額免除されます。私はこのプログラムの選考に合格し、その後、私の希望する専攻学科(MBA、EDUCATION、COMMUNICATION)と経歴をもとに、コーディネーターが各大学の特色を考慮し大学を選定してくれて、アメリカのジョージア州アトランタから車で約2時間のところにあるWesleyan Collegeに決定しました。世界で初めて女性に学位を授与した由緒ある大学で、歴史を動かした宗三姉妹もこの地で学びました。私の在籍した2010年にはプリンストンレビューの選ぶベストクオリティー大学部門において、プリンストン大学、イエール大学を抜き堂々3位に選ばれました。少人数制のクラスと途上国からの留学生への奨学金が充実しています。
また、田舎で周りに何もないので、勉強をするには素晴らしい環境です。
▲ALLEXプログラムのメンバーと
大学からはALLEX奨学金プログラムにTOEFL® PBT テストで550点位のスコアが必要でしたが、ALLEX奨学金プログラム生に選ばれてから大学への申請締切までが3か月程で、テスト日まで時間がなかったので、TOEFL® テスト受験前は問題集を購入しアメリカの大学受験に必要なGREと併せて勉強しました。
留学中も色々な苦難が私を待っていました。
まず、大学院生として授業についていくだけでも精一杯なのに、日本語教師として授業の準備や授業後の採点や振り返り、テストの準備など、時間がいくらあっても足りない状態でした。
加えて、私の通っていたマスターコースが改変される事となり、当初の予定にはないクラススケジュールが組まれました。サマーコース(春学期、秋学期と同じだけの内容を、夏休みに集中的にこなし単位を取るもの)は当初、前半3、後半3のクラス配分が、前半4、後半2に変えられてしまいました。サマーコースで4クラス取るということは、私にとって死を意味する程大変なことです。予習、復習、アサイメント、全てを完璧に終えることは難しく、睡眠約2時間、コンピューターラボに住んでいると勘違いされてしまうほどでした。
そして論文です。卒業論文は3人の教授からOKをいただき、準備コースも取り終えていました。しかし、突然学部長による反対を受け、今までGoサインを出していた教授たちも手のひらを返したように態度が変わりました。また振り出しからのスタートとなり、心が折れました。ALLEXコーディネーターにこの窮地を訴えたところ、彼も以前同じような経験をして卒業が一年延びたとのことでした。「梶田さん、あなたならできる。私は信じています。できると思ったからあなたを推薦したんです」という彼の言葉を呆然と聞くしかありませんでした。その言葉通り2年で卒業できるとは当時の私には想像もできませんでした。
私がこの留学をやり遂げられたのは、すべて周りの方々のお陰だと思っています。娘と同い年の私を不憫に思ってか、図書館司書の方は、忙しい時間を割いて最後まで論文のチェックをしてくださいました。一人で深夜勉強する私に警備員のおじさんはいつも笑顔で声をかけてくれました。小さな私立大学で、だいたい学生は寮生活でしたので、顔見知りになった人達は校内に一人しかいない日本人の私にフレンドリーに話しかけてくれました。また、私が担当する日本語の学生たちも、クラスが終わると友達にかわりました。身の上相談に乗ってくれたり、現地の小学校で授業をするための練習に付き合ってくれたり、旅行に一緒に行ったりと本当にたくさんの思い出ができました。
▲現地小学校での研修
「人との出会いが人生を変える」とよくいいますが、私もALLEX台湾派遣生の影響で、台湾へ行くことを決意しました。また、派遣先大学は多くのインターナショナルスチューデントを受け入れており、いろんな国の学生と密に触れ合えた結果、今までと違った見地から物事を感じ取れるようになりました。
この留学を通し、同じALLEX派遣生である台湾の方と知り合いました。卒業後は更に日本語教師としての経験を積むため、中国語の習得を目指し、台湾に3年程滞在しました。現在はまた日本で留学生担当の事務等をしていますが、TOEFL iBT® テスト90~100を目指し再び勉強中です。できれば今後博士課程をアメリカで修了し、日本語教師兼コーディネーターとしての活躍を希望しています。
ある方の言葉を贈りたいと思います。
「留学して英語が話せるようになったり、いろいろ勉強したりすることも素晴らしい。だけど、世界には色んな人がいて、色んな価値観があるってことを実際に肌で感じてもらえたらいいなぁって思う」
▲ALLEX台湾派遣生のシャノンさんと