For Lifelong English

  • 鈴木佑治先生
  • 立命館大学生命科学部教授
    慶應義塾大学名誉教授

第68回 アメリカ大学院留学についてのアドバイス ―合格通知がきたらすぐ渡米しよう!―

読者の中には2014年にアメリカの大学院に留学しようと考えている人が居るでしょう。TOEFL®テストやGREなどを受験し、願書を提出し終えてその結果を待っている事でしょう。3月中頃から結果が送られてくると思います。見事に合格したら、新学期の始まる9月までしばらく時間があります。無為に過ごさずに早速準備をし始めてみてはどうでしょう。アメリカ国内外から優秀な学生が集まり、留学生も現地のアメリカ人と分け隔てなく一緒に競争しなければなりません。留学生は英語のハンディを抱えており、明らかに不利ですが、一切考慮されません。日本人の多くは英語でリサーチしたりディスカッションしたりペーパーを書いたりした経験に乏しくとても苦労します。それでこの数ヶ月を使い、そのハンディを少しでも克服してみたらと思うのです。

合格通知をもらったら、出来るだけ早くその大学院のキャンパスに行きましょう。セメスター制度なら5月中頃まで、クオーター制度なら6月末まで授業があり、許可を貰えば、自分が取ることになる授業を聴講できるかもしれません。特にクオーター制度なら4月に最後の学期が始まるので、まるまる1学期分授業を聴講できます。セメスター制度なら2学期目の後半の授業を聴講できます。聴講生ですからペーパーも試験も科せられませんが、テキストを読んでディスカッションに参加することができます。勿論、ペーパーを書いてみるのも良いでしょう。

そして、その後、セメスター制度なら6月前後からサマー・セッションが、クオーター制度なら7月初旬頃からサマー・クオーターが始まります。大学院のプログラムでは必ずpre-requisiteの導入コースを履修しなければなりませんが、夏の学期にはこうした導入コースが設置されている事が多く、1コースか2コースを履修する事を勧めます。履修登録は簡単です。願書を書いて学部の英文成績証明書(transcript)を提出すれば入れてくれます。そうです、サマー・セッションやサマー・スクールは正規の学期ではなくオプショナルで、取っても取らなくてもよいのです。また、正規の学生を含めて他大学の学生にも公開されており、筆者の居た頃はwalk-in admissionsとも呼ばれ、その場で授業に登録できました。今はオンラインでも行われているはずです。

これらのコースで合格点(B以上)を取れば、9月に始まる新学期からはrequired coursesを取る事ができ、授業にも慣れ、その分早く卒業できます。サマー・セッションやサマー・スクールが終了したら、新学期まで1ヶ月以上あるので、その間を利用してアメリカのあちこちを旅行します。アメリカでは夏休みの間はホテルなどの宿泊施設が格安になります。それまでに多くの友達が出来ているはずですから、一緒に彼らの車に便乗して旅行をすると最高の思い出ができます。現地の人しか知らない所に行けたりするのでアメリカ社会に慣れる良い機会になるでしょう。筆者の場合は、1968年の夏でしたが、ケンタッキーの山奥の自給自足のバイブル・カレッジに招かれて、農場の仕事を手伝ったり建物の手入れをしたりして過ごしました。アメリカの非常に貧しい地方で必死に生きる農夫達の人情に触れながら、南部弁の英語を耳にする思い出深い1ヶ月でした。

残念ながら不合格の通知を受けたとしましょう。ただ手をこまねいているのではなく、なぜ不合格なのか手紙を書いてみましょう。アメリカではどの大学・大学院でも必ず不合格の事由を説明してくれます。今ではe-mailで済むと思います。例えば、英語力が足りないとか、成績が悪いとか言われたら、「必要とする英語力をつけるために」または「成績をあげるために」その大学のスペシャル・スチューデントとして授業を受けたい旨を依頼する手紙(petition letter)を書いてみます。スペシャル・スチューデントとしての許可を貰えることもあるかもしれません。そうしたら、4月頃から始めて、その後は、合格した人と同じです。サマー・スクールもサマー・セッションもwalk-in admissionsですから、普通に授業に登録できるでしょう。そしてそこでB以上の成績を取れば、遅かれ早かれあなたがその大学院から正式な入学許可を得ることができる可能性は大です。あなたがコースについて行ける事を証明しさえすればよいのです。

とにかく、留学を決意したらなるべく早く行ってみる事です。日本で悶々と考えていてもらちがあきません。筆者はここ30年以上大学院に留学する人には、このようなアドバイスをして来ました。アメリカは現地人も留学生も分け隔てなく一緒に勉強させます。留学生にとっては大変ですが、とてもフェアで良い制度です。筆者はそんなアメリカが大好きでした。どこの国のどこの大学を出ていようが関係なく競争できます。また、どんな立場であろうと学生は学生ですから、大学教員の留学制度できた大学教員が昨日まで自分の教え子であった人とたまたま同じクラスで勉強するなどということはよくあります。例えば、筆者が博士過程の院生の頃のこと、筆者の指導教官のWalter A. Cook先生のセミナーで、たまたま筆者の出身大学から派遣されてきた教員が、まったく授業について行けずにあえなくドロップ・アウトしたのを憶えています。とにかく実力が物を言う世界ですから、決断したらなるべく早くそこに身を置く事を勧めます。真剣に勝負さえしたら、今まで思い込んでしまっている以上に実力があることを気づかせてもくれる世界です。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。