前回(第78回 「学ぶ」から「する」英語コミュニケーション!)と前々回(第77回 コミュニケーションは、まず、「コンタクト」から)では、積極的に英語でコミュニケーションをすることの大切さについて確認しました。他の文化の人たちとコミュニケーションすることで英語学習へのモチベーションが誘発されます。関心があるテーマについて意見交換をすると、自分が表現したいことが表現できないもどかしさ、相手が言っていることが理解できないもどかしさを感じ、もっと英語のスキルをつけようという意欲に繋がります。この流れを反映して、筆者は「プロジェクト発信型英語プログラム」を考案し実践してきました。黄色で記されたプロジェクトとピンクで記されたスキル・ワークショップは、発信する「場」と英語力をビルドアップする「場」として対を成しています。今回強調したいのは、プロジェクトとスキル・ワークショップの2つが、ブルーで記されているグローバル時代の基盤であるICT(information communication technology)上で展開されているということです。
Project-based English Program (Lifelong model) ©N. Yuji Suzuki
「プロジェクト」ではインターネットを使い他の国の人たちと交流が出来ます。今ではスカイプなどを使えば発表会や意見交換など気軽に出来ます。YouTubeを開いて、例えば、Language exchangeと入力すれば、地球上の多くの人たちが英語で意見交換をしようと呼びかけています。判断力を駆使して健全な相手を自己責任で選ぶこともグローバル社会では必要不可欠な能力です。とにかく、先ず、今有る英語力で勇気を持って一歩踏み出してみることです。その為に必要なサポートは、インターネット上に無料で提供されています。英和や和英の辞書ならWeblioと入力してみましょう。英英辞書ならCambridge Dictionaries Onlineか Merriam-Websterと入力してみましょう。無料で分からない語彙表現を検索できます。それぞれ発音もしてくれます。長い文の発音を練習したければ、text-to-speechと入力してみましょう。沢山の発音矯正サイトが出てきますが、AT&T Natural Voices Text to Speech Demo(*1)を開いてみましょう。語や句のみならず文章を打ち込めば無料で発音してくれます。
さて今回の本題の英語力アップのスキル・ワークショップですが、同じくYouTubeでEnglish lessonsと入力すれば、沢山のサイトでネイティブによるレッスンが提供されています。初歩のABCから上級のものまで様々あります。listening, speaking, reading, writingなどの4スキルや、さらにpronunciation, grammar, vocabularyなど、総合的なものから項目別のものまで無数に提供されています。これだけあれば、特に学校の授業に頼らなくても自分で好きなものを選んで出来るはずです。
筆者がよく勧めるのは、アメリカやイギリスなどの幼児、小学生、中学生、高校生用の英語のレッスンです。日本で言うと「国語」に当たるものです。インターネットのGoogleを開いてEnglish lessons for kidsと入力すると出てきます。幼児、幼稚園児、小学生のものが無数に出てきます。小学生の高学年のものからでは、非英語圏の英語ラーナーズには、かなりのチャレンジになります。これも無料です。筆者は日本のある中学で試していますがかなり効果的です。発音から文法・語彙・表現までしっかり学べます。
グローバル社会を加速させているのはICTです。筆者は、1967年にお茶の水の英会話学校に通ったことがありますが、週一回50分のネイティブとの個人レッスンの料金は高額でした。現在ではICTを使えば無料です。しかも量質とも非常に充実しています。上記のピンク色のスキル・ワークショップに併設されたブルーの部分は、インターネットを使って学生や生徒が自分で行う課外の自動学習です。この部分は数年前と比べるとかなり充実してきているので、授業形態を想定するピンクの部分をface-to-faceそしてhands-on (手作り)の活動に限定し、その分かなり広げてよいと考えますが、face-to-faceでhands-on感を抱かせるサイトが無料で提供されたらどうなるのでしょうか。自立した学習者はどう判断するでしょうか。
最後に、グローバル化というと英語が席巻するのではと心配される方もいるかもしれませんが、心配いりません。インターネット上では英語だけではなく多くの言語の学習サイトが無料で提供されています。YouTubeでFrench lessons, German lessons, Spanish lessons, Chinese lessons, Japanese lessons, Swahili lessons, Arabic lessonsなどなど、その他の言語レッスンを入力してみましょう。筆者も、読んだり話したり出来ないフランス語をなんとかものにするため挑戦するつもりです。できたらマイナー言語も試したいので、パラグアイのGuarani語などもよいかなと思っています。書き言葉を前提とした学校教育では出来なかった、書き言葉を持たない少数派の言語を学べるサイトが増えるといいですね。音声と映像主体のICTを駆使すれば出来るはずです。Marshall McLuhan(*2) の個人と個人、村と村を瞬時に繋ぐグローバル・ビレッジが実現するといいですね。言語を学習したら、現地に行きface-to-faceの交流をしようと思うでしょう。日本各地の小村も海外のどこかの小さな村とこうした交流をするのはいかがでしょうか。インターネットに繋がっていれば先ずは無料で出来ます。グローバル化の本質は個人と個人が村と村が瞬時に安価に繋がることで維持される多様性です。小さなかけがえのない個人のコンテンツが価値をもつはずです。
(*1)http://www2.research.att.com/~ttsweb/tts/demo.php
(*2)Marshall McLuhan,1911~1980,メディア論と文明論の専門家。「グローバルヴィレッジ」や「メディアはメッセージである」などの視点を残す。将来留学を希望する人は、代表作The Gutenberg Galaxy: the Making of Typographic Man, (Routledge & Kegan Paul,1962)を原文で読んでおくとよい。