わかっていても、できないことはあります。わかりやすい例を挙げます。私たちは「あいさつ」を大事にしなければいけません。是非は別にして、私たちはそのように教育を受けてきました。つまり、「あいさつは大事である」ということを私たちはわかっているのです。しかし、誰にでもしっかりとあいさつをしているか、と聞かれれば「できていません」と答える人の方が多いのではないでしょうか。理由は様々であれ、わかっていても、できていないのです。
英語学習に置き換えて考えてみましょう。私の仕事は英語教師です。中学生に英語を教えている時期もありました。中学3年生には「現在完了」を教えます。「過去形なのか現在完了なのか」という区別の部分で難しい面はありますが、基本的に文法構造はそれほど複雑なものではありませんので、比較的「得意!」と思っている私の生徒は多かったです。しかし、即興で話すスピーキングテストなど(もしくはライティング)を実施した時、現在完了を使って自己表現する生徒はほとんどいませんでした。高校生になるとようやく使用率も少しずつ増えてきて、大学生になると割と良く使われるようになってきました。
これも「わかる」と「できる」が別レベルにあることを示した例だと思います。そして、大事なのは英語学習者である読者の皆様が求めなければいけないレベルは「できる」であるということです。
「英語を勉強しよう!」と一念発起される方は珍しくありません。しかし、ただ何となく「英語ができるようになりたい!」という思いだけで勉強をスタートされる方は、ほとんどの場合「単語学習」からスタートするような気がします。切り口は悪くないのですが、単語学習においても、「わかるレベル」で終わってしまう学習でいると、いつまでも使えるようにはなりません。ですから、覚えた単語は「使ってみる」ことが大事です。
ポイント
単語学習は、覚えるだけで終わらない。意味を覚えたら、文脈の中に組み込まれたもの(例文)を音読し、自分の体に単語を染み込ませる。
このように「わかる」を「できる」に昇華させるトレーニングが必要になります。例えば、
1.単語の意味は覚えた ⇒ 蛍光ペンでハイライト
2.アウトプットの中で使うようになっていた ⇒ ハイライトの上から赤ペンで○
のように単語帳に書き込むようにしましょう。「単語の勉強」と言っても、「わかる」と「できる」の2段階があります。使えるレベルになるためには時間が少しかかりますが(定着に必要な時間)、蛍光ペンと赤ペンで「見える化」しておくことで、常に意識が行くようになります。
[参考図書]
○『音読指導アイデアBOOK 』
明治図書/正頭英和(著)