センター試験第2問、文法・語法問題で得点率を上げるために、ひたすら同型の四択問題に取り組ませるといった指導はよく見られますが、文法の基礎が定着していない生徒にとってはあまり有効な策とはいえません。CEFRA1~A2下位レベルの生徒に対するセンター試験文法指導は、第2問で得点を取らせるためというよりは、「できるだけ正確に英文を読み取ったり、自分の意思を伝えたりするための土台を育てる」という意識で行うことが大切だと思います。
高校の文法指導における一番の問題点は、中学の既習事項が身に付いていない(理解だけではなく、運用という意味でも)にも関わらず、新しい知識が上滑りのように与えられることだと思います。特に学年が上がるにつれてそのような傾向は強まります。受験直前期ともなると、「これくらいは分かっているだろう」と基礎を一から説明することなく、淡々と入試問題の解答と解説が行われることも日常化していると思われます。
ですので、中学レベルさえ定着していない生徒もいることを前提に、リメディアル指導を兼ねながら進めていくことは、どの時期でも大切なことだと思います。有効なのは「教えたい文法事項が複雑なときは、いきなりそれを提示するのではなく、その下位レベルにある基礎事項を小パーツに分けて理解→反復演習、定着をさせてから本題に入る」という進め方です。
例えば、次のような例文で動名詞の応用的な使用法について指導するとします。
He is proud of one of his students having participated in the Olympics.
これを一度に提示し、「意味上の主語」「完了不定詞(主節の動詞より過去の動作)」などと説明しても混乱するだけです。以下のように①、②のような手順で小パーツに分けて教えていきます。
①having + 過去分詞で「~したこと」だと教え、「野球をしたこと」「彼に会ったこと」「チームの一員だったこと」など、日本語をたくさん提示して英語で言わせる。
②A(=ヒト)+-ingで「Aさんが―すること」と教え、「トムが音楽を聴くこと」「彼が来ること」などとたくさん日本語を英語にする。
上記①、②に習熟できたら初めて先述の例文を提示して全体を理解していきます。同様に、関係代名詞を理解するには、I/my/me/mineの人称代名詞変化表の口頭練習から始め、その後、代名詞の格を英文の中で使い分ける練習が必要です。また、仮定法もIf節と帰結部を別個に取り出して敷居を低くして言う練習をしてから全体を見せたほうが理解させやすいです。
文法・語法指導は、「それを使って英語で表現する」という視点が常に必要です。そのためには基礎・根本からの理解と、繰り返しと暗記による習熟こそ鍵です。そういった指導・学習を重ねた延長が文法問題を解く力です。そして、結果的にまっとうな文法・語法学習を行って身に付けた力は、リーディング力、リスニング力にも反映されますので、結果的にはセンター試験の点数にプラスに左右すると言えます。