日本の英語教育が抱える最大の課題は、学習者が外国語である英語(English as a Foreign Language, EFL)を教室外の日常生活で使う必然性がほぼないことであると思う。確かに、日本国内の多くの英語学習者にとって、英語は定期テストや入試、検定試験などに向かって「勉強すべきもの」という一面があるのは否めない。しかしながら、いつまでも「勉強のためだけの英語」では味気ないのではなかろうか?では、この現状をどのように乗り越えて行くのか?その答えは、楽しみながら、「英語のインプット」を増やしていくことである。
「英語でのインプット」を増やす際に、比較的簡単に取り組めるのがリスニングの強化である。インターネット上にも教材となり得る多種多様な素材があるが、ここではその例として英語番組・アプリとオーディオブックについて紹介する。
「リスニングに今一つ自信がない」と悩んでいた高校生にすすめたのがNHK World TVというNHKの番組・アプリである。Live放送の他、過去の番組もカテゴリーごとに見ることが可能で、英語でのニュースの他、バラエティ番組やドキュメンタリーなど、様々なジャンルの番組を楽しむことができる。特におすすめなのが、日本の社会・文化・歴史などに関する番組が豊富な点である。この原稿を書きながら、現在Stationaryという日本の文房具の歴史に関する番組を視聴中である。身近な何となく知っている日本に関する題材について、英語を通して理解を深めることができ、まさに一石二鳥である。
洋書の音声版、すなわちオーディオブックを活用するのもリスニング強化に有効である。もちろん、ペーパーバックとオーディオブック両方を常に買い揃えていては出費がかさみ過ぎるので、お気に入りの一冊からスタートしていくのが良いだろう。流行りの本、例えば「ハリー・ポッター」シリーズなども、最後の数冊はとても分厚いため、朗読を聞いた方がはるかに楽しいし、楽である。大人の学習者には朗読アプリ(日本版:Audible.co.jp、米国版:Audible.com)などもおすすめである。中高生の学習者諸君には、必ずCD付きの読み物などを長期休みの課題として与える方針の先生方も多いだろうから、まずはその音源をきちんと活用することをおすすめする。
「英語でのインプット」を増やす際に、やはりリーディング(読むこと)は欠かせない。ここでも大事なのは、やはり「楽しみながら」という点であると思う。
楽しみながら英語での読書を行うための教材として、多読用書籍(Graded Readers)がある。これらは主に英語学習者向けに書かれた書籍であるが、語彙や文法事項など非常に良くコントロールされており、簡単な読み物から始めて徐々にレベルを上げていくと、無理なく英語での読書が楽しめる。また、主にネイティブ向けに書かれたものでも、絵本や児童文学の短編ならば中級者から楽しむことができるであろう。「読書はどうしても苦手で…」という人には漫画もおすすめである(きっとお気に入りのタイトルも英訳されているのでは?)。さらに、「時事的な話題に関しての知識も同時にインプットしよう」という場合は英字新聞、手近なところではタブレット紙の「The Japan Times ST」などがおすすめである。