前回の記事では、「英語のインプット増強」に焦点を当てた。そこで、今回は「英語でのアウトプット」を取り上げる。最近ではオンライン英会話なども普及し、学校の教育現場でも広まっているようである(私は未経験だが「やってみたい!」と強く思っている)。一方で、英会話は実は相手に助けられている部分が非常に大きい場合があるのではないかと思う。すなわち、例えば10分間英語での会話を続けたとしても、こちらは相づちに終始してしまい相手の発話がほとんどを占めている場合が、トピックが難しすぎたりする場合にはあると思う。それでは、ある程度まとまった発話量を確保するにはどうすればよいか?その答えは英語ディベートである。
ディベートと聞くと、「相手を論破する競技・理屈っぽく攻撃的な人が好む競技」のように、あまり良いイメージを持たない人も多いかもしれない。しかし、実際には「ある論題について、第3者である審判を論理的に説得するゲーム」であり、やってみると非常に面白い。
ディベートには大きく分けて2つの種類、アカデミックディベート(準備型)とパーラメンタリーディベート(即興型)があるが、どちらも最近は盛んで、高校生の全国大会などへの参加校数は急増している。今後も英語の入試改革や4技能化に伴って、中学・高校の英語授業でのディベートの導入がさらに進むであろう。
ディベートを通して身に付けられるものとして、よく言われるのが英語の論理構成(AREA:Assertion, Reason, Example, AssertionあるいはPREP:Point, Reason, Example, Point)である。対戦中の役割によっても異なるが、約3分~7分のスピーチ時間をしゃべり続けなければならないので、必然的にこの論理構成を意識するようになる。そもそも、日常生活ではこれだけの長時間にわたってスピーチをするという機会そのものが、あまり無いのではなかろうか。ここでは、読者の皆さんがパーラメンタリーディベートを体験することのできる機関についていくつか紹介する。
・パーラメンタリーディベート人財育成協会(PDA)
http://www.pdpda.org/
即興型英語ディベートの学校教育への普及に努めている。毎年8月に高校生向けのディベート合宿・大会、12月に全国大会を開催している。今年の3月には初の中学生大会が開催される予定。また、教員向け研修会や全国各地での交流会も開催している。
・日本英語交流連盟(ESUJ)
http://www.esuj.gr.jp/
大学対抗ディベート大会や企業研修などの機会においても英語ディベートの普及に努めている。今後は高校生の育成に力を注いでいくとのこと。社会人ディベートクラブ(ESUJ Debate Club for Adults)も代々木オリンピックセンターで定期的に開催されている。
・Japan Parliamentary Debate Union(JPDU)
http://www.jpdu.org/
日本国内の約50大学が加盟する大学生のディベート組織。国内大会・国際大会も数多く開催されている。これからの時代は、高校生・社会人(含む英語教師)が大学生ディベーターとそのOB/OGから学ぶ時代であると思う。
・(株)ヒューマン・ブレーン
http://www.humanbrain.co.jp/
中高生向けに英語ディベート研修会、教員向けに講習会などを実施している。
・Mixidea Online Debate
https://mixidea.org/
オンライン上で英語ディベートが練習できるサイトである。定期的に練習会が開催されている。
さらに、準備時間にチームメートと協力してアイデアを出し合うといった対人スキルや、論題について考えるために新聞・ニュース・書籍をチェックすることにより、一般教養を身に付けるのにも、ディベートは効果的である。もちろん、上手にスピーチができず落ち込むときもあるし、対戦相手に負けて悔しいときもある。だが、上手にスピーチできたときは楽しいし、試合に勝つと楽しい。中でも「英語でスピーチすることが楽しくなる」のが、英語ディベートの効果であると思う。