リスニング力を伸ばすためには、音声モデルを大量に聞くこと、音と意味の一致をさせることが重要です。初めに音を聞きとり、次に音を文字に変換し、最後に意味を理解します。リスニングができないのは、音と文字の一致、文字と意味の一致がスムーズにできていないからです。リスニング力を向上させたい場合は、まず自分がどこでつまずいているのかに気づき、そこに注意を向けなければいけません。そうすることでより学習効果を上げることができます。
効果的なリスニング学習の方法をみていきましょう。
音声モデルですが、1分間150~180語程度(*)、長さは30秒から1分位のスクリプトとその対訳があるものを選びます。モチベーションを下げないために自分の興味がある分野で、ある程度理解できるものが良いでしょう。初級の人は中学校の教科書から、超初級の人は『日本一やさしい初めてのシャドーイング』等から始めると取り組みやすいです。
教材が準備できれば、
Step 1: スクリプトを見ずに音声モデルを聞いて内容を理解する。
付属の問題があれば解きます。この段階で内容をすべて理解できていなくても大丈夫です。
Step 2: ディクテーションする。
聞こえてきた音声モデルを書き起こします。文の途中で音声モデルを止めても、再生速度を遅くしてもかまいません。意味が分からなくても聞こえてきたまま書き、綴りが分からなければカタカナで書いても大丈夫です。これ以上聞きとれないと思うまで何度も聞きなおしてもかまいませんが、6回位を目安にStep 3に移りましょう。
Step 3: ディクテーションしたものとスクリプトを見比べ、内容理解が間違っていないかを確認する。
ここで初めてスクリプトを見て、問題の答え合わせもします。冠詞、前置詞、三単現までしっかり書き取れているかを確認しましょう。知らなかった単語、意味がとれなかった箇所にはマーカーを引き、辞書などで調べたことも書き込んでおくと、復習時に何ができていなかったのか視覚的に分かります。また最も大切なことは、どの部分でつまずいたのか気づいた点をメモすることです。こうすることで自分がどこで、どのように間違ったのかを明らかにすることができます。これ以降復習する度に何度もその箇所を意識して学習することになるので、似たような間違いをする確率も下がります。
聞きとれない部分があった場合、1. 単語そのものを知らない、2. 英語の発音規則を知らない、3. 単語の綴りは知っているけれど誤った発音で覚えている、4. 文法事項が不足している、可能性があります。
以上のように、聞きとりのどの部分で、なぜ、どのようにつまずいているのかに気づき、自分のできていない箇所にフォーカスして学習することが大切です。そうすることで、この先、音読や教材の内容要約などの活動も比較的容易にすることができるようになります。
*本稿では、150語がスロー・スピード、180語がノーマル・スピードとしています
[参考図書]
『日本一やさしい初めてのシャドーイング』
成美堂出版/三宅滋、太田恵子共著
『外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か(岩波新書)』岩波書店/白井恭弘著