私は今、都立の中高一貫校に勤務しています。授業では「自律した学習者」を育てるための「教えない授業」を実践しています。「教えない授業」というと教師が教えることを放棄しているようなネガティブなイメージもあると思いますが、私が行っているのは、「学び方」をしっかりトレーニングし、教師がいなくても自学自習できる生徒に育てる授業です。詳しくは以下の本に書きました。これからの変化に富む社会で活躍する子どもたちを育てる視点で、親向けに書きました。ご関心を持たれたらぜひご一読いただけると幸いです。
『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP)
http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/books/3651/
さて今回より、全4回にわたり、私の実践を皆様の学習に役立てるアイデアをご紹介させていただきます。上述の通り、「教えない授業」は自律した学習者を育てます。英語学習が自律できるようにどのようなことを中高生に指導しているかを分かりやすく解説させていただこうと思います。
これらは、皆様の英語学習にも取り入れられると思いますので、いいなと思うものはぜひ挑戦してみてください。
第1回目は学びの見える化について紹介します。英語の学びは少しずつでも継続して行うことが大切です。しかし、継続していると自分がどれぐらいの量を学習しているかが見えにくくなります。自分の学びの軌跡を残すと、学習の継続へのモチベーションとなります。ここでは、付箋を使って学びを見える化する活動を紹介します。
分からない語や表現に出会ったとき、まず辞書を引くことをおすすめします。中高生には紙の辞書を使って、辞書の構造や例文の探し方などを指導していきます。辞書を引いた単語には下図のように付箋を付けます。付箋には、引いた順番の通し番号とその単語を記入します。
通し番号は、自分がこれまでどれぐらい多くの単語に出会っているかを見える化します。学習指導要領では、中学で1,200語、高校で1,800語が示されています。これらの数字を基礎的な語彙数として捉えることができるでしょう。これに加えて、ご自身が目指すテストなどで求められる語彙数を参考にすれば、学習のモチベーションになるでしょう。
付箋に単語を書くのは、はがれてしまったときに貼り直すことができるからです。ですから、細い付箋を使いたい場合などは無理に書かなくても良いでしょう。
紙の辞書をおすすめするのは、学びの見える化だけではありません。トンネルデザインという言葉をご存知でしょうか?スタートからゴールまでが一直線になっているデザインです。例えば、インターネットの検索などが良い例でしょう。キーワードを入力すれば瞬く間に関連するページにたどり着けます。電子辞書も、調べたい単語を入力すれば、そのページに1発でたどり着けます。これがトンネルデザインです。トンネルデザインは寄り道ができません。紙の辞書では前後の単語にも寄り道ができます。例文も全て目を通すことができます。そこで新たな発見をすることも多くあります。ですから、初心者は特に紙の辞書を使い、例文を見比べ、ときに前後の単語に寄り道して語彙を増やしていくことをおすすめします。
ただし、電子辞書には素早く多くの情報にアクセスできるという利点があります。時間のないときなどは、電子辞書を使うなど使い分けても良いでしょう。
付箋は辞書だけでなく、そのほかの学びにも活用できます。文法書や問題集で分からない箇所があったら付箋を付けましょう。付箋は、外したり、移動させることができます。復習して、分かるようになったら、付箋がページからはみ出さないように引っ込めるように貼り直します。
▲ 速読英単語(Z会)
はみ出していない付箋は、「分からなかったけど、分かるようになった」項目です。復習してまた分からなくなったら、再びページからはみ出して貼ります。こうすると、自分の学びの過程と、学びの程度が一目瞭然になります。
テストの直前などは、はみ出ている付箋から復習し、時間があれば引っ込んでいる付箋も復習すれば、効率的に学習できます。
このように、付箋によって学びは簡単に見える化することができます。学びの見える化は、学習のモチベーションを維持するだけでなく、学習の効率化にも繋がるので、おすすめの学習法です。
[参考図書]
『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』
日経BP社/山本崇雄著