前回(112回、113回)までに、英語を「自律して学ぶ」子どもたちを育てていく実践を皆様の学習に落とし込んでお話ししてきました。今回は、学びを一つにまとめていく「魔法のノート作り」のお話をさせていただきます。このノート作りの話は、書籍や講演ではあまり取り上げていませんが、今回は特別に公開したいと思います。
英語のノートというと皆様はどのようなノートを思い浮かべますか?私が中高生のときは、ノートの左側に教科書の英文を写し、右側に訳を書き、単語もリストにして意味を書いたように記憶しています。このノート作りは、今でも多くの学校で指導されています。このノート作りは、英文の理解には役立ちますが、それ以上のものは生み出しません。
私の生徒が作るノートは、ノートから発想を生み出し、自分の言葉で話し出す仕掛けがしてあります。このフレームを使うと、誰もが能動的に英文を読み、発信したくなります。ですから、私の授業で4技能を育てていく上でとても重要な役割を果たします。このノート作りは皆様のTOEFL® テストなどの学習にも役に立つので、ぜひ参考にしてください。
私の生徒のノートは主に次の項目がセットになったフレームになっています。
英文を読んで、疑問に思ったOpen-ended Question(答えが1つでない問い)を1つ、または複数書きます。はじめは空欄で、学ぶ過程で出てきた問いを書きます。その問いの答えを考えながら学習を進めていき、自分なりの答えを考え続けます。学びの過程で新たな質問が出てきたら、質問を増やしていきます。
ここには、学んで分かったことを絵や図にしてまとめていきます。英語を絵や図にする手法は前号でも紹介しましたが、「英語を英語で理解する」ために大切な作業になります。絵が下手でもかまいません。自分なりに、分かったことを絵にしたり、関連するキーワードを線や矢印で結んだりして作っていきます。分かったことを絵や図にしてデザインしていく力は、表現力自体を高めていきます。
本文で学んだことを英語で要約します。要約する際には以下の点に気をつけると良いでしょう。
・One Paragraph One Idea
1つのパラグラフ(段落)には 1つの出来事、 1つの言いたいことが書かれています。ですから、 1つのパラグラフから作者が言いたい情報を絞っていく作業が必要になります。
・OREOの構造を理解する
英語の段落は、
O(Opinion:言いたいこと、意見)
R(Reason:理由)
E(Example/Experience/Evidence:例、経験、証拠)
O(Opinion:言いたいこと、意見をもう一度)
といった構成になっています。頭文字をとってOREO(オレオ)と覚えておきましょう。この中で一番重要な情報はOpinionです。まずはOを抜き出しましょう。そして、必要に応じてRやEも取り入れていきます。情報の優先順位をつけることができます。また、OREOは自分で英作文をするときにも役立ちます。
・長い文を短くする
長い文を短くするときは、単純に主語+述語の要素を抜き出します。さらに、具体例があれば、それらを一般化します。例えば、apple, orange, melon, banana …を一般化するとfruitsになるといった具合です。
ここには、自分で立てたMy Questionへの答えを書いていきます。③で紹介したOREOの構成で書くと良いでしょう。Open-ended Questionでは答えは1つではありません。しかし、間違いや、根拠のない答えも存在します。ですから、答えは「何でも良い」わけではありません。RやEの部分を自分で調べ、自分なりに根拠を持って書いていくことが重要になります。
このフレームに合わせてノートを作るだけでもかなり能動的に英語を読むようになります。また、問いの答えを英語で書くことでWritingの力も伸びていきます。さらに、Story Mappingを使って、内容のSummary(要約)、さらに自分の問いと答えを英語で話すことで、Speakingの能力が上がっていきます。オリジナルのノートを作って、4技能を意識した学習をしていきましょう。