外国語学習をする時に大切なことが2つあります。1つめは、外国語学習に必要な基礎的・基本的な知識とは何かを知ることです。そして、2つめは、外国語を理解・表現する時の脳内の情報処理のプロセスです。この2つを理解すると、効率良く英語学習を進められる可能性が高まります。
生徒達を見ていると、英語が苦手な生徒ほど何を覚えると良いのか分からず、闇雲に色々と暗記して壁にぶつかり諦めてしまいます。でも、何が必須の知識なのかを知っていると、普段の授業や自分の学習で力を入れるべきポイントやコツが分かります。
外国語学習の専門家がよく言う基礎的・基本的知識は『語彙』、『文法』、『音声』です。言葉のやりとりで最優先されることは「意味」ですから、確かにこれらの3つは意味を伝える上で必須アイテムになります。ですから、日々、多くの英文を聞いたり、読んだり、話したり、書いたりする活動を通して語彙力を高め、文法や音声もきちんと覚えて、即座に使える状態のしっかりした基礎的・基本的力をつけたいものです。しっかりした基礎の上にこそ、高い英語力を積み上げることができます。
では、英語を表現する時のプロセスを見てみましょう。「ご機嫌いかがですか」と質問するときは “How are you?”、「あなたの誕生日はいつですか」は “When is your birthday?”、この方法は丸ごと覚えた英文を発話する方法です。小学校英語ではこの方法で学んでいるでしょう。利点は、文法を使わず自分が表現したい文の意味を、覚えている英文とマッチングさせて即座にコミュニケーションで使えます。弱点は、大量の英文を覚えなければ会話ができないこと、そして覚えた英文の使用場面が限られており発展性が少ないことです。
一方、文法と語彙を組み合わせて英語を表現する方法を見てみましょう。主に、中学校以上の学校ではこの方法で学ぶことも多いでしょう。「彼は今、学校でテニスをしています」を表現する時は、必要な語彙を現在進行形の文法で組み立てます。利点は前者と比べてコンパクトで限られた語彙と文法で言いたいことをかなり表現することができます。弱点は、脳は計算処理をするのでマッチング処理よりも時間がかかってしまい、即座の対話では脳の負荷が高まります。
しかし、たとえ文法と語彙を組み合わせて発話したとしても、それが正しかった場合、その英文は丸ごと印象深く記憶され自分の英語表現のレパートリーになる可能性が高いでしょう。ですから、これらの2種類のプロセスを大切にし、バランスよく学んでいくことが正確さと流暢さを高める早道となるでしょう。
[参考図書]
『A Cognitive Approach to Language Learning』Oxford Applied Linguistics/Peter Skehan