英語を使いこなせるようになるために、「読む」「聞く」「話す」「書く」という4つの技能を統合しながら、英語を英語のまま使う力が求められています。そこで、今回は日本語を介さず英語を英語のまま「聞く」「読む」ことで情報を受け取り、さらに「話す」「書く」という表現に繋げていくトレーニング方法をご紹介します。
私はこの活動をVisualizing「視覚化」と名付けて、中学生の授業で繰り返し行っています。Visualizingは大きく分けて2つの段階があります。1つは英語で「聞いたり」「読んだり」して得た情報をもとにイラストや図で表す段階。もう1つは、イラストを活用して英語で「話したり」「書いたり」して表すという段階です。
まずは聞き取った情報を視覚化する活動として、ある程度まとまりのある長さのリスニング問題などを使い、2~3度聞きながら、できるだけシンプルに素早く図やイラストを描きます。個人の英語力と描写力にもよると思いますが、最初に英文を聞くときには、メモをとる程度で頭の中でイメージを膨らませ、その後にイラストや図を書き足すと良いでしょう。また、文字を記入するときには英語で書くようにすることで、できる限り日本語を使わないようにします。同様に読み取った内容を視覚化する活動では、1度目はざっと読んで内容を掴み、2~3度と英文を読みながらイラストに表していきます。
聞く活動も読む活動も、英文の情報を視覚化することで内容をしっかり捉えることができます。また、イラストに表せなかった部分は、自分が聞き取ったり読み取ったりできていない箇所ですので、その部分を重点的に確認すると自分が苦手とする表現や単語などが見えてくると思います。
もちろん、実際の試験の際にはどんどん読み進めていくことが必要になりますが、実はVisualizingの活動を繰り返していくと、イメージをつくりながら英語を英語のまま聞いたり読んだりする癖が付きますので、ポイントを絞りながら素早く情報を捉えられるようになります。
次に「話す」「書く」活動を行う時には、「聞く」「読む」の活動とは逆に、イラストとしてVisualizingした情報を英語で説明する活動を行います。自分で描いたイラストを参考に、自分の言葉で情報を再構築することで、英語で英語を表現する力を鍛えられます。
この活動はRetellと呼ばれる活動にも繋がりますが、「聞く」「読む」活動を少なくして、いきなり英語で表現しようとすると、難易度が高まるものの自分の言葉で表す力が鍛えられます。逆に、じっくり英語に触れてから表現する活動を行うと、表現の正確性や豊かさが高まります。ポイントとしては、いきなり英語を書こうとすると全然書けずに手が止まったり、日本語をヒントに英語を書こうとしたりしてしまいますので、まずは自分の言葉で説明をするという活動を行ってから書くと「話す」→「書く」力を段階的に活用して高めることができるようになり良いと思います。
私のVisualizingの発想のヒントは、近年よく耳にするようになったファシリテーショングラフィックやノート術にあります。これらの活動では、聞いたり読んだりした内容をイラストや図を用いて視覚化することで、頭の中が整理されるだけではなく情報の読み取りが進むとのことです。リスニング問題や長文読解問題を読んだり聞いたりするときにも、内容や情報を視覚化することで、より深く聞き取ったり読み取ったりすることができるようになると思います。