達セミに学ぶ 英語学習のヒント

全国の熱血教師による授業に学ぶ英語学習方法伝授

東京都立武蔵高等学校附属中学校/田中周作先生
  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校
  • 田中周作先生
今回のヒント
一人でできるスピーキングトレーニング

英語学習を進める中で「いつかは英語を話せるようになりたい!」というのは多くの人が掲げる目標でしょう。しかし、現実にはスピーキングに苦手意識を持つ学習者は少なくありません。私自身、日本で英語学習を続けてきました。海外長期滞在経験も留学経験もありません。そんな中で多くの日本人英語学習者が抱える悩みやぶち当たる困難も身をもって体験してきました。ですから、そういった悩みや困難を乗り越えていく方法も分かっています。日本には、英語を聞いたり話したりする機会というのはまだ十分にはありません。最近はオンライン英会話の人気が高まり、家にいながらにしてネイティブスピーカーと実践的な会話練習ができるようになったのは大きな変化と言えるでしょう。しかし毎月の出費があるという点では特に学生にとっては継続利用が難しいと予想されます。そこで今回はお金をかけずに「一人でできるスピーキングトレーニング」を紹介したいと思います。

具体的には次の2つの方法を紹介します。1つ目は、Writing for Speaking(スピーキングに繋げるためのライティング)、そして2つ目は、Speaking to Yourself(英語独り言トレーニング)です。

1. Writing for Speaking(スピーキングに繋げるためのライティング)

さぁ英語で話すぞ!と言ってもいきなりペラペラと英語が出てくれば苦労はありません。そんな時は一旦話す内容を書き出すことで思考と英語の両方整理してみます。

一人でできるスピーキングトレーニング

STEP 1 : マインドマップでアイデアを整理する

マインドマップは思考を整理するのに有効な手段の一つです。紙の中心に話すテーマを書き、関連項目を放射状に線で伸ばし、さらに関連するキーワードを書く…を繰り返す方法です。マインドマップで思考を整理すると、何もないところから話すよりもグッと言葉が出てくるようになります。
以下のマインドマップは今年の初めに私が書き出したものです。教科書のトピックが「オーストラリアの自然と動物」だったのですが、そんな時にあのオーストラリアの森林火災が起こりました(2020年1月)。学んだばかりのオーストラリアの自然や動物が今危機に瀕している。このことを伝えたいと思い、マインドマップで伝える項目を整理しました。こうすることで、話す前にキーワードを確認でき、また情報を順序立てて伝えることができます

一人でできるスピーキングトレーニング

STEP 2 : 原稿を書いてみる

マインドマップ(キーワード)からスピーキングに繋げるのが難しい場合は、話す内容を全て書き出してみると良いでしょう。スピーチ原稿の作成です。結局書くのか…と思うかもしれませんが、これも繰り返し続けていると、徐々に原稿からメモ書きへ、メモ書きから即興へと、準備型スピーキングから即興型スピーキングへと少しずつ進化していきます。慌てずにコツコツと継続的に取り組んでいくことが重要です。結局のところ、積み重ねなくして技能の習得はありえません。強い意志を持って取り組みましょう。

2. Speaking to Yourself(英語独り言トレーニング)

次に実際に話す練習に移りますが、今回は「自宅で一人で手軽にできるスピーキングトレーニング」ということで、「英語独り言トレーニング」を紹介します。

STEP 1 : 相手を想像する

話し相手がいないので「独り言トレーニング」としていますが、実際には誰かに話す場面を想定して行います。これが意外に重要なのです。友人、先輩、先生、同僚、家族、など具体的に話し相手を設定します。相手がイメージできないと、話す内容、使う言葉、話し方も定まらないのでここは具体的に聞き手と場面をイメージします。例えば「クラスメイトの前で自分の趣味に関してプレゼンをする」、「ホームステイ先のファミリーに自己紹介をする」、「同僚と会議の内容に関して事前打ち合わせをする」、「外国人の彼女に想いを伝える」というように、話し相手と場面を具体的に設定します。コミュニケーションというのは相手がいて初めて成立するので、「独り言トレーニング」では仮想の話し相手を強烈にイメージすることが大事になってきます。そしてそれが話すモチベーションにも繋がりますし、実際の会話での成功にも繋がります。成功者は成功イメージを強く持つと言いますが、それと同じです。自分が誰に対し、何を英語で伝えたいのかの明確なイメージを持つのです。

一人でできるスピーキングトレーニング

STEP 2 : 話すトピックを1つ設定する

はじめから自由に何でもかんでも英語で話そうとしても無理があります。そこで「今日はこの話題について話そう」というようにトピックを1つ選ぶと良いでしょう。スモールステップが大切です。はじめは「自己紹介」に挑戦してみると良いでしょう。なぜならどんな人とでも最初はお互いの「自己紹介」から会話はスタートするからです。自己紹介といってもただ名前や出身地を伝えて終わりではありません。自分の家族のこと、好き嫌い、趣味、地元の魅力など、自分に関連する情報は無限にあるはずです。自己紹介をいかにスムーズに、かつ具体的にできるかというのは、案外会話においては重要なことなのです。あなたの自己紹介の中身によって、相手のあなたに対する興味の度合は変わってきます。
このように自分の身の回りのことから練習していくと良いでしょう。話す内容を先述したようなマインドマップを用い、原稿を用意し、準備ができたら独り言トレーニングを開始します。

ライティングと独り言トレーニングの順序を入れ替えるのも効果的

ここではキーワードや原稿を用意した上で、相手をイメージし、独り言で英語を話してみるという順番のトレーニング方法を紹介しました。「書く→話す」順で、あらかじめ話す内容や表現を整理した上で話すので、話す内容に関する語彙や表現は比較的口から出てきやすいのが特徴です。これと逆の手順で練習することで、別効果を生むこともできます。つまり「話す→書く」順で、一旦独り言で英語を話してみて、その後出てこなかった表現やうまく表現できなかった内容をライティングにより洗練させることができます。こうすることで現時点での言えない語彙や表現を確認することができます。

一人でできるスピーキングトレーニング

1日5分間のスピーキングトレーニング(準備に3分、話すのに2分)

実際に私はこの方法で自分のスピーキング力向上に努めてきました。今でも定期的に行っています。「今日はこれについて話をしてみよう」と紙にマインドマップやキーワードを書き出し、それをもとに実際に話し始めます。メモに3分、話すのに2分の計5分程度でも、1か月も続ければ、なかなかのトレーニング量になります。少なくとも話すことへの抵抗感は和らいでいくはずです。毎日トピックを変える必要はありません。むしろ同じトピックを2、3回連続で扱って話す練習を繰り返すと、回数を重ねるごとに話はスムーズになり、またそこで使った語彙や表現も定着してくるでしょう。

増やすべきはActive Vocabulary(産出語彙)!

一人でできるスピーキングトレーニング

自分の知っている語彙を全て会話の中で使えるかというとそういうわけではありません。実際に自分がアウトプットできる語彙は知っている語彙のうちの10分の1ほどと言われています。語彙には、passive vocabulary(受容語彙)active vocabulary(産出語彙)2種類があります。passive vocabularyとは「文章を読んだり、話を聞いたりして理解できる語彙」のことで、active vocabularyとは「文章を書いたり、言葉を話したりする際に用いることのできる語彙」のことです。スピーキングで同じトピックを繰り返し練習することで、このactive vocabularyの量は増やすことができます。使える表現の幅が広がってくるとスピーキングも楽しくなってくるはずです。この段階に到達するまでに多少の時間はかかるかもしれませんが、強い意志を持って1日5分のトレーニングを継続してほしいと思います。そうすれば、練習を重ねるごとに必ずスピーキング力は向上していきます。

  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校
    田中周作先生 プロフィール
  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校英語科主任教諭。
    北海道函館市出身。
    東京学芸大学大学院教育研究科修了。
    2014年に東京都教育研究員、2015年-2016年に東京都教師道場助言者として活動。2018年に英検主催英語教員海外研修(UNSW オーストラリアシドニー)に参加。Apple Teacher、Edmodo Certified Trainerとして積極的にICTを活用している。趣味は武道(合気道、剣道)、ランニング、釣り、スポーツ観戦、動画編集制作配信、英語カラオケ、英語でラップ♪
達人セミナーについて
  • 英語教育・達人セミナーについて
  • 英語教育の情報交換のためのネットワークです。
    達人セミナーをはじめとするさまざまな研修会や英語教育についての情報を交換する場所です。
    ※最新のスケジュール等は毎週火曜日発行のメールマガジンでも情報を配信しています。
    メールマガジンを見る >>
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。