スペシャルインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー

映像翻訳者 長瀬由佳さん
  • 日本映像翻訳アカデミー
  • 修了生
    映像翻訳者 長瀬由佳さん

今回は日本映像翻訳アカデミー修了生で映像翻訳者として活躍をされている、長瀬由佳さんへのインタビュー後編になります。前編の内容はこちら

“翻訳はとてもクリエイティブで奥深くすごく楽しい仕事”

翻訳者の魅力を教えてください

長瀬さん:
すごく楽しい仕事です。翻訳の仕事をするまでは、単に英語を日本語に変えるだけだと思っていたのですが、実際やってみるととても奥深い仕事であると感じています。特に映像翻訳はその話者や脚本が「なぜこのようなことを言っているのか」「視聴者にどうやったら伝わるのか」ということをよく考えて、最も良く伝わるような表現を探し出し、字幕だったら字数制限があったり、ボイスオーバーでは話者の人が話している長さの中で日本語を考えたりしなければならず、とてもクリエイティブな仕事だと思っています。
編集部:
翻訳者になるための、勉強法などありますか。
長瀬さん:
翻訳の勉強法は、文章を一つ一つ置き換えるのではなく、例えば文章でもこれで本当に何が言いたいのかを考えつつ、英語とは離れすぎずに訳すことを考えながら勉強するとすごく楽しいと思います。また、私は昔から本が好きというタイプではなく、日本語があまり得意ではないので、ひたすら同じような番組を見て学んでいます。例えばスポーツ番組の仕事をいただいたら、同じスポーツ番組を何度も見て「こんな言葉遣いが自然なんだ」と実際の映像で勉強しています。リアリティ番組でも、どんなフレーズなのか、口調やトーンをひたすら叩き込んだりノートに書いたりして、自分が翻訳するときに役立てています。
編集部:
どんな方が翻訳者に向いていますか。
長瀬さん:
翻訳者だけでなくどんなお仕事にも共通することだと思いますが、常にインプットする状況が苦にならない方、勉強をすることが好きな方が向いていると思います。

日本映像翻訳アカデミー修了生 映像翻訳者:長瀬由佳さん

編集部:
現在子育てをしながらフリーで活躍されていますが、フリーという働き方を選ばれた理由はあるのでしょうか。
長瀬さん:
家で働きたいということが大きいです。子どもが生まれる前のことですが、例えば、毎週大好きなゴルフに行きたいと思った時に、平日に会社を休んで行くわけにはいかないですが、フリーですと時間の管理は自分でできるので、土日働いて月曜日の料金の安い日にゴルフに行くことができます。また翻訳者になった当時、主人も時間の自由がきく仕事だったこともあり、そういったことも含めてフリーの方が働きやすいと思い決めました。
編集部:
フリーで活動する上で大変な点を教えてください。
長瀬さん:
やはり自分に厳しくしなければならない点だと思います。マイナスなことを言うつもりはありませんが、フリーだと仕事が途切れることは絶対あるので、ちょっとでも手を抜くようなことはできません。自分が会社員だった時は、お金を貰いながら勉強をさせてもらっている部分が多々ありました。若い時はそれも魅力の一つですが、フリーでそういう姿勢でいると、次の仕事がなくなってしまうことがあるので、そういった点で厳しさを感じています。また時間管理・体調管理は大切です。会社員の時は、納期に間に合わせることが難しい時や体調が悪い時に先輩に助けてもらったり、同じチームの人が助けてくれましたが、フリーではそのようなことはもちろんできません。そういった点では厳しい世界だと思います。

日本映像翻訳アカデミー修了生 映像翻訳者:長瀬由佳さん

TOEFLテストについてのお考えをお聞かせください

長瀬さん:
大学生の時に留学のために受験しましたが、本当に難しいテストだと思いました。対策として1冊の過去問題集をひたすら解きました。英語の勉強ということでいうと、文法の勉強が大事だと思います。それは、TOEFL® テストに限らず、英会話や翻訳でも必要なことです。基本的なことが身に付いていないとなかなか応用まではできないと思います。

TOEFL Web Magazineの読者にメッセージをお願いします

長瀬さん:
自分が学生の時に言われたように「英語を学ぶのが目的でなく英語を使って何をするのか」を考えて、それに向かって勉強していくのが一番良いと思います。それが第一歩だと思います。

日本映像翻訳アカデミー修了生 映像翻訳者:長瀬由佳さん

日本映像翻訳アカデミーについて

日本映像翻訳アカデミーの丸山さんにお伺いしました。

編集部:
入学試験について教えてください。
丸山さん:
入学試験などは敢えて設けていません。理由は英語力が高ければできる仕事ではないからです。映像翻訳者は英語力だけでなく、翻訳力、日本語応用表現力、ビジネス対応力、コンテンツ解釈力、取材・調査力の資質を身に付ける必要があります。テレビ番組や映画を作っている監督さんや脚本家さん、編集者の方と同じくらい日本語力は必要ですし、そこには英文解釈や作品解釈力に、物語を解釈していく力など、プロのメディア人と同じ日本語力と言葉に関しての敏感さが必要です。また、普段から自分が好きではないことでもアンテナを張っていることが大事です。
編集部:
自動翻訳のアプリなど翻訳ツールなどの開発が進む中、今後翻訳者の役割は変化していくのでしょうか。
丸山さん:
いわゆる業務翻訳といわれている、例えば薬、機械、ITなど、仕事で使うものの翻訳は、技術がどんどん進んでいて、今でもかなり高い精度の翻訳のソフトがあり実際使われています。業務翻訳では日本語的な流暢さを求められているわけではなくて、情報がしっかりわかることが重要です。そういう意味でも業務翻訳の世界だと、多分この先5年10年で機械に仕事を取られていくことになると思います。ただ、いわゆる映像翻訳の世界である映画・ドラマ・ドキュメンタリー・インタビューの分野は、機械だと日本語へ完璧に置き換えができません。日本語の特徴の一つに主語抜けってありますよね。主語がなくても通じるとか、そういったことが今の技術では機械が判断できないそうです。その他にも体言止めや語尾など「この雰囲気だと固いよね」「もっと易しい言葉にしたい」というようなニュアンスや雰囲気を判断していくだけでも相当なバリエーションがあるので、100年以内にはできないと言われています。YahooやGoogleの担当者の方と話す機会がありましたが、お金をかけて人工知能を作ってそれで日本語翻訳やらせたいのかっていうと、正直そうではないということでした。
 
また、私は日本語表現力の講師を担当していますが、日本人は言葉にとてもうるさい国民だと言われています。意識することは少ないですが、単に言葉の間違いの指摘をするだけではなく、綺麗な日本語なのかどうかということに、こだわりを持っています。言葉に対しての尊敬が非常に高いので、言葉を作っている人達に対しても尊敬の度合いが非常に高いのだと思います。機械翻訳は一時のブームだと思っています。今後機械翻訳の限界を感じていく中で、文法に戻ろう、TOEFLテストを受けて実力を付けていこうなど、本物の英語力を身に付けるという原点に戻るのではないでしょうか。

 

日本映像翻訳アカデミー修了生 映像翻訳家:長瀬由佳さん
  • 長瀬由佳さん プロフィール
  • 大学3年時に1年半休学し、米国のシアトルとノースカロライナに留学。留学先の大学ではファイナンスなどを学んだほか、証券会社や政府機関などでインターンシップを経験しました。大学卒業後はコンサルタント業界に就職したものの、英語を使う機会が少なかったため、7年後に実務翻訳の世界に。その後、映像の翻訳に興味を持ち、日本映像翻訳アカデミーに入学。修了後にプロの映像翻訳者としてデビューしました。
  • 日本映像翻訳アカデミー
  • 映画の字幕や吹き替え音声など映像コンテンツの翻訳者を養成する職業訓練校です。1996年の開校以来、多数のプロを輩出。テレビ局や映画配給会社などからの翻訳業務を受注し、修了生の就業を支援する「教育と職業」の一体運営が強みです。
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