スペシャルインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー

  • 『科学の甲子園』優勝校スペシャル対談
  • 右から
    渋谷教育学園幕張高等学校 岩田久道先生
    渋谷教育学園幕張高等学校 3年生 三上喬弘さん
    渋谷教育学園幕張高等学校 2年生 白石航暉さん
    慶應義塾大学名誉教授/立命館大学客員教授 鈴木佑治先生

今回は『科学の甲子園』優勝校スペシャル対談の後編になります。前編の内容はこちら

“生徒にとって一番ネックになったのは、データを英語で書かなければいけないこと”

「SCIENCE OLYMPIAD」に行く前の英語力について

鈴木先生:
「SCIENCE OLYMPIAD」は当然全て英語で行われる大会だけど、今まで生の英語に触れた経験はありますか。
三上さん:
海外に行くのは今回が2回目でアメリカは初めて訪れました。聞こえてくる英語は、学校で勉強していたものとはまったく違ったものに聞こえました。学校で英語の問題を解く場合は、フレーズとその流れさえ掴めれば解くことができますが、会話、特に高校生同士ともなると、やはり流れだけで内容を掴んでいくのは難しくて、一つ一つの単語をちゃんと理解しながら聞くことが大事だと思い、勉強が足りないなと感じました。
白石さん:
僕は中学3年生の時にニュージーランドにホームステイに行ったり、父親がアメリカ在住ということもあり、過去に2度英語圏の国に行っているので、周りで話されている英語にはそれほど違和感はありませんでしたが、最初の交流の時、初対面でこちらは結構緊張しているのに、参加するアメリカの高校生から、普通にアメリカ人に話すように英語で話かけられた時は、話す速さに圧倒されてわからないことも多かったです。
鈴木先生:
今回研修をやって、みなさんの英語のレベルが高いので驚きました。これから質の高い勉強を続けていけば、TOEFLテストでもアメリカの大学に進学できるような、良い点数が十分取れると思いますよ。それとTOEFLテストの内容には、サイエンス系の問題も結構出題されるので、その意味でも良い点が取れる可能性は高いです。

鈴木佑治先生

英語研修について

鈴木先生:
「Science Quiz Bowl」用に事前に渡した参考書は役に立ちましたか。
白石さん:
競技に出場した大鶴君に直接聞いていませんが、出題のレベルとしては教科書に載っていることでしたが、1分で考えなくてはいけない中で、しかも理科系の単語なのですぐには出てこなかったと思います。
鈴木先生:
日本語だったらなんでもなかったでしょうね。
白石さん:
本人も答えを見て、「あー、あの単語かぁ」っていうのがあったって言ってました。事前にアメリカの教科書を読んでみるとか、そういうことをすれば、多分対応できると思います。
三上さん:
来年も事前研修があるなら、科学系の用語をもっと学ぶ時間が欲しいと思いました。
白石さん:
実際に使われている教科書を用いて、勉強するのが良いのではと思います。僕はおみやげにアメリカの教科書を買ってきましたが、内容は日本の教科書とほとんど同じでした。
鈴木先生:
科学で使われている用語の多くはカタカナ表記の日本語になっているから、それを綴りも含めて英語に直して覚えれば相当数の語彙数が増えます。入試問題に出てくる単語の3分2くらいはカバーするでしょう。これらカタカナ表記語の中の専門性の高い語彙は、元はラテン語やギリシャ語からきているから、言葉の組み合わせ、すなわち語形成の仕組みを理解すれば楽に頭に入ります。事前英語研修でその手ほどきをしましたが、語幹と成る基本語さえ覚えれば、後はその派生語です。来年の研修では語形成の話を早いうちからやるといいかもしれない。
岩田先生:
生徒にとって一番ネックになったのは、データを英語で書かなければいけないことです。アメリカ人の高校生は実験データを自分ですぐに書けるんだけれども、自分たちが英語で表現するとなると少し難しくなると思います。

「科学の甲子園」優勝校渋谷教育学園幕張高等学校のみなさん

鈴木先生:
書くスピードも大事ですね。
岩田先生:
そうです。筆記の練習も必要です。
鈴木先生:
私は慶應義塾大学SFCと立命館大学生命科学部と薬学部で、理系の学生にもそういうことに対応する英語プログラム作り、行いましたが、みんな驚くほど上達します。
岩田先生:
もしも来年も研修を受けさせていただけるのであれば、例えば実験データをすぐその場で英語で書くような練習をお願いできればと思います。
鈴木先生:
最近発表された大学入試制度では、入試問題が発信型に変わると聞いていますが、それにも対応できますね。
岩田先生:
話すことも大事ですが、書く練習もとても必要だという気がしました。
白石さん:
研修が4日間しかないならば、「FORENSICS」組とその他で分けて、課題も分けた方がいいかと思いました。僕たちが出た「BUNGEE DROP」のようなシンプルな競技では、英語対策よりも競技の練習をメインで行った方が、「SCIENCE OLYMPIAD」対策としては効率が良いと思いました。
鈴木先生:
研修の最初の部分は一緒かもしれないけれども、その競技のそれぞれの部分をもっと強化したり、また得意な競技をもっと選べるようにするなど考えても良いかもしれないね。

授与される賞に関して

岩田先生:
私が表彰式で違和感を覚えたのは、23競技のうちの数多くの優勝に対して、そのチームに、企業・大学から即奨学金が出されるということが、ちょっと信じられなかったです。日本だと多分ないと思います。通常ではその学生の学力をテストで測ってから、審査され授与されると思いますが、それが優勝しただけでいきなり奨学金が与えられる。
鈴木先生:
おっしゃる通りです。日本では学力一つの指標だけですが、アメリカの大学は総合的な知識や能力そして想像力に注目し、これはという生徒にはすぐ投資をします。
岩田先生:
ああいった発想は日本の大学にはないです。
鈴木先生:
それが、私が研修で話したことの一つなんです。全教科まんべんなくできるというよりは、ある教科に非常に秀でているということの方が重視されると思います。アメリカの大学は、大学に入ってから1~2年で必要と思える教科を育成すれば良いという考えです。そのためのプログラムはしっかりしています。日本では入った段階で数学ができなければ数学を諦めざるを得ませんが、アメリカの場合、基礎からしっかり教えてくれます。他の教科もそうです。それよりも何かに光るものがあるとそこを評価されて奨学金が貰えます。
岩田先生:
日本ではなかなか考えられないですよね。
鈴木先生:
一つの奨学金を貰ったことで、また別の奨学金を貰える機会ができます。一つ貰って、二つ三つ貰うということを良く聞きます。これが大学院、たとえばボストンMITの大学院のメディアラボ(Media Lab)になると、学生は社員みたいなもので1000万2000万円と奨学金というよりは報酬を貰えます。その代わり役に立つものを1年で作れないと、学校に報告されてしまう。ですからみんな必死です。MIT Media Lab projectsを覗いてみてください。それがアメリカの大学の怖さです。こうして世界中から集めた優秀な人が残る、だからトップなんだと思います。

科学の甲子園優勝校インタビュー

Swap Meetについて

鈴木先生:
Swap Meet(*1)はどうでしたか。
三上さん:
人がやたらたくさん来たので、こちらはあまり動かなくていいくらいでした。
鈴木先生:
おみやげに何を持って行きましたか。
三上さん:
扇子とか日本茶とか、あとお団子の形の消しゴムを持っていきました。
白石さん:
僕は筆ペンを持っていきました。
鈴木先生:
反応はどうでしたか。
白石さん:
扇子と筆ペンは凄い人気であっという間になくなりました。
鈴木先生:
物々交換ですよね。あなた達は何を貰いましたか。
白石さん:
僕はアラスカのナンバープレートを貰いました。大事にしています。ナンバープレートは州ごとに違うので、州のおみやげとして持っていく人が結構多いんです。
鈴木先生:
アラスカのナンバープレートは貴重だからね。友達はできましたか。
白石さん:
何人かとおしゃべりはしましたけど、アドレスの交換などはしなかったです。
鈴木先生:
言葉的にはどうでしたか。1日目よりは2日目、2日目よりは3日目と段々上達を感じらましたか。
白石さん:
1日目2日目はあまり英語を喋る機会がありませんでした。
三上さん:
Swap Meetでは大勢の人に囲まれたので、個人と一対一で話すという時間がほぼありませんでした。

「SCIENCE OLYMPIAD」を経験して

鈴木先生:
今回5位に入賞してこれを機会に何か変わりましたか。これからのチャレンジがどうなるのか、英語の面も科学の面も含めて今後の人生の生き方とか、その辺の感想を聞かせてほしいと思います。三上君は3年生ですが、自分の将来を考えた時に、今回の「SCIENCE OLYMPIAD」は何かこう、少し違う学びのきっかけにはなりましたか。
三上さん:
僕は日本の大学への進学を希望しています。でも大学や大学院で機会があれば、アメリカに留学するのも良いかなと思いました。
鈴木先生:
大学では交換留学もあるしね。大学、大学院では、今度参加していたアメリカ人だけでなく、例えばインドや中国などから多くの留学生も合わさってそれぞれの国のカルチャーっていうのをもっと前面に出して積極的に勉強しています。交換留学してそういう人たちと切磋琢磨してください。
三上さん:
僕も以前1度中国に行った時に、中国の高校生と交流する機会が与えられましたが、中国人の生徒は日本語を話せなくて、こちらも中国語を話せず英語でコミュニケーションをとりました。その時に母国語なのではないのかと思うくらい英語がとても上手で驚きました。同じ立場のはずなんですが、驚くほど英語が上手でした。
白石さん:
僕は2年生ですが、大学は日本の大学に行くことを決めていますが、大学院については以前から、国内か海外か迷っていたので、それを海外向きに傾ける要因になったと思います。後はもっといろんな人と話してみたいと思いました。
鈴木先生:
白石さんの時には、今と違って色々なことができるようになっているよね。今回やってみてこういうことができなかったけど、次はもっとこういうことをやってみようと、そこまでにこんなことを勉強しておこうとか。でもまずは聞けないと話せないよね。
白石さん:
僕がやっていたのは、聞いてだいたいのことを予想してそれで答えていたら案外うまくいきました。
鈴木先生:
研修をしたことによって心の準備など、違ったことはありましたか。競技への取り組みや考え方は変わりましたか。
白石さん:
言い方は悪いかもしれませんが、研修があると強制的に英語に触れるので、その分の慣れは少なからずあったと思います。もし研修をしていなければ、あの短い時間の中で、競技への準備とか心構えが、ずいぶん違っていたと思います。今回「SCIENCE OLYMPIAD」には、競技して他のアメリカのチームと競う、という意識で行ったので、そのことでみんなで頑張ろう、という意識ができたのと思います。
鈴木先生:
お二人に入賞おめでとうと心から言いたいです。これからも頑張ってください。

科学の甲子園優勝校インタビュー

 

(*1)Swap Meet…各州代表チームと記念品交換を行う交流の場

鈴木佑治先生
  • 聞き手:鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授/立命館大学客員教授
  • 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(千葉市美浜区)
  • 多様な価値観を主張できる自由闊達な校風と「自調自考」の理念に基づく自主性を重視した教育が特徴の男女共学の中高一貫校。全国有数の難関大学合格率を誇る一方、スポーツでも数多くのプロ選手を輩出している。留学生の受け入れ、在学中の留学プログラム、海外大学への進学など、学校全体で活発に国際交流を行っている。
  • 国立研究開発法人 科学技術振興機構
  • 我が国の第4期科学技術基本計画の中核的実施機関として科学技術イノベーションの創出に貢献することをミッションとしている機関です。戦略的な研究開発を推進したり、産学が連携した研究開発成果への貢献や知的財産の利用支援などを行っています。基盤形成のために次世代の理数系人材の育成も行っています。
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