スペシャルインタビュー
英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー
- 右から
岐阜県立岐阜高等学校 矢追雄一先生
岐阜県立岐阜高等学校 3年生 髙島優さん
岐阜県立岐阜高等学校 3年生 桐原聖子さん
慶應義塾大学名誉教授 鈴木佑治先生
今回は「第6回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談の後編になります。前編の内容はこちら
“大学に行くと海外の人と交流する機会がどんどん増えていくと思うので、積極的にコミュニケーションを取っていきたい”
「SCIENCE OLYMPIAD」の感想 ―後編―
- 鈴木先生:
- WRITE IT DO IT(*1)はどのような競技なのでしょうか。
- 矢追先生:
- 2人1組で行う競技で、例えばマグカップみたいなものに、羽が付いていたりフォークが刺さっていたり、シュールなオブジェといいますか、意味が分からない想像もできないものが用意されていて、それを1人が見てどのように組み立てるのか指示書を書き、それに基づいてもう1人の生徒がそのオブジェクトを構築していく競技です。
- 鈴木先生:
- 指示書は英語で書くのですか。
- 矢追先生:
- いいえ、日本語でも大丈夫でした。競技時間が50分あり、前半25分で書いて後半の25分で作るというものです。10校ほどが同じ会場で一斉に行います。
- 鈴木先生:
- 競技をご覧になってどうでしたか。
- 矢追先生:
- 顧問の私は、競技のルールで生徒が参加する競技においても会場に入ることができませんでした。入口までは行けるのですが、そこから先は同行された東京大学高大接続研究開発センター特任助教の齊藤萌木先生と生徒から競技の様子を伝えてもらいました。
- 鈴木先生:
- 東京大学の齊藤先生はスーパーバイザーというお立場でしょうか。
- 矢追先生:
- そのような立場だと思います。齊藤先生からは、その10校のうちでは、「岐阜高校が一番良くできている」とお聞きしました。この競技に参加したのは西村君と坂本君で、順位は22位でした。
- 鈴木先生:
- 60校中の22位とは良い成績ですね。その参加された生徒はどのような感想を話していましたか。
- 桐原さん:
- 「訳が分からない」と言っていました。
- 矢追先生:
- 日本にないアメリカ特有の素材の説明が難しく、その説明に時間が掛かったと話していました。「無限にある材料の中から選んで作るのか、限られたほぼ全部を使って作るのか」ということが事前に分からなかったので、どちらにも対応できるように指示書を作ろうと考え練習していましたが、結果として指示書はもっと簡単で良かったのだということが分かりました。事前にそのことを知ることができれば良かったと思います。そういった意味で、日本チームとして情報を蓄積し共有する仕組みを今後は考えてほしいと思います。
- 鈴木先生:
- GAME ON(*2)はどうでしたか。
- 矢追先生:
- スクラッチというソフトを使います。スクラッチというソフトは英語だけでなく、多くの国の言語で使えるようになっているので、そこはハンデではなかったと思います。そのプログラムにどのタグを入れれば、どう動くというようなことを、全部自分たちで事前に準備をしていましたので、そのテーマに沿ってどうするかということでプログラムを組みました。2人で参加したのですが、坂君がプログラムのタグを打ち込んでいって、瀬古君がそのプログラムのチェックをするというチームワークで行いました。坂君が瀬古君の的確なアドバイスがあることを前提に一心不乱に打ち込んでいた姿に、齊藤先生が大変感心されていました。
- 鈴木先生:
- 具体的にはどのようなものを作られたのでしょうか。
- 矢追先生:
- テーマが「enzyme(酵素)」だったので、ゲームとしては酵素の基質特異性をイメージして作製したようです。「ある基質に対してはある酵素しか反応しません。別の基質に対してはその酵素は反応しない。つまり基質Aが来たら基質Aの酵素Aが、基質Bが来たら基質Bの酵素Bが反応して、物質の分解を進めて行く」というイメージです。
- 鈴木先生:
- 最後にSwap Meet(*3)での様子を教えてください。
- 桐原さん:
- アメリカ人の生徒と物々交換をしました。
- 鈴木先生:
- どんなものを持参されたのですか。
- 桐原さん:
- 科学技術振興機構(JST)の方からいただいたものと、英語版の岐阜県のパンフレットや竹とんぼを持参しました。
- 鈴木先生:
- 岐阜県のパンフレットは喜ばれたでしょう。交換したときの反応はどうでしたか。
- 桐原さん:
- 美しいと言われました。
- 鈴木先生:
- それを何と交換されたのですか。
- 桐原さん:
- バッチやキャップ(帽子)と交換しました。
- 髙島さん:
- そのほかにもフラッグやTシャツなどに交換しました。
- 桐原さん:
- Swap Meet用ではありませんが、みんなで「SCIENCE OLYMPIAD」用に作成した、Tシャツを着て参加しました。
- 鈴木先生:
- 「SCIENCE OLYMPIAD」の前に副賞である英語研修を受けてもらいましたが、現地に行ってみて英語はどうでしたか。
- 髙島さん:
- 私から話す分には通じると感じましたが、聞くとなると話すスピードが速くて少し苦労しました。
- 鈴木先生:
- どのように解決したのですか。
- 髙島さん:
- 何回か聞き返しました。
- 鈴木先生:
- それは良いことだと思います。日本では今の大学入試がそうであるように、一回で分からなければいけないと思う人が多いですが、日本人同士の日本語の会話でも分からなければ聞き直すことは普通ですし、アメリカ人も聞けば何度でも言ってくれたと思います。桐原さんはどうでしたか。
- 桐原さん:
- 私は自分が言いたいことを、日本語にしてから英語にして話すというプロセスに、時間が掛かってしまうことがありました。でも英語は将来海外で働くかもしれないので、その時のために頑張ろうと思いました。
- 鈴木先生:
- そういうときは、日本語にしない方が良いと思います。現実の会話の場では、見たり、聞いたり、嗅いだり、味わったり、触れたりして、伝達したい対象物や状況を共有していますから、それらを言語にする必要はありません。日本語でも英語でも同じです。肝心な部分だけ英語にすれば良いのです。使用する構文についてはネイティブの会話の中にヒントがあります。それを使えば良いのです。日常会話でしたら、中学校で習った構文を使えるようにすれば十分です。いずれにせよ、桐原さんのその経験がモチベーションに繋がったのは良いことだと思います。髙島さんはどうですか。
- 髙島さん:
- 聞く力がすごく大事だと思いました。リスニングの問題などもありますけれど、ネイティブの人と話すことで、一番養われるものだと思います。大学に行くと海外の人と交流する機会がどんどん増えていくと思うので、積極的にコミュニケーションを取っていきたいと思います。
- 鈴木先生:
- そうですね、コンテンツが大事です。英語ができても中身がないと意味がありません。そういう意味でも、この経験は今後繋がっていくと思います。大学に進学して自分の研究を英語で発信して議論することもあると思いますので、これからも英語の勉強を続けてほしいと思います。でも1か月という短い期間でこれだけの成績が残せたのは本当にすごいことです。実際に英語を使ってみて初めて分かったものと思います。岐阜高校のコミュニティーも含めて岐阜県岐阜市や岐阜県警とのコラボレーションが副産物として将来にとても良いことをもたらしてくれると思います。
(*1)WRITE IT DO IT・・・2人1組で行う競技で1人はどのように組み立てるのか説明を書き、それに基づいてもう1人の生徒がそのオブジェクトを構築する競技。
(*2)GAME ON・・・マサチューセッツ工科大学で開発されたプログラム「Scratch(スクラッチ)」を使って、出題されたテーマに沿ってコンピューターゲームを作成する競技。
(*3)Swap Meet…各州代表チームと記念品交換を行う交流の場
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構
- 科学技術振興機構(JST)は、日本の科学技術の発展を牽引する組織として、科学技術を支える人材の育成にも注力している。『科学の甲子園全国大会』はその一環として、2011年度よりJSTが開催している高校生の科学コンテストである。
科学の甲子園 Webサイト:http://koushien.jst.go.jp/koushien/
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