達セミに学ぶ 英語学習のヒント

全国の熱血教師による授業に学ぶ英語学習方法伝授

岐阜県立加茂高等学校 渡部正実先生
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今回のヒント
Debateで養う「問題解決」的思考 ―後編―

前回ご寄稿いただいた「Debateで養う『問題解決』的思考」の後編です。前回の内容はこちら

3. 立論以降のポイント~「反論のポイント」を極め、的確に反論する~

3-1. Attack Speech(反論)

これも実社会においては、なかなかうまく行かないものの一つではないだろうか。生徒のみならず、大人でもけんかと議論との境界が曖昧で一触即発、などということもあり得る。しかし論理のどこがどのように正しくないのか、という指摘を的確に出来るようになるだけでも議論の質はぐっと向上するとともに問題解決の糸口を発見することにプラスになると思う。右の図のように議論のポイントになる部分に反論をするべきである。不用意に反論をするとなると「水掛け論」になりかねない。どの点について、どう反論するのかを明示する必要がある。また反論する証拠 (Evidence)も必要である。
反論の例を挙げてみよう。発生過程1から2へ必ずしもつながらない場合、

It’s not always true.(いつでも起きるとは限らない)
According to Mr. X, a professor at ○○ university, in AAAA newspaper Month, Day, Year.
Quote) “ [ content of the evidence ] ” (Unquote

このように引用を元にしたEvidenceを活用し反論するのがDebateの特徴である。他の反論するポイントとしては「発生過程同士を結びつける証拠が正しく使用されているか」「論理に飛躍がないか」などが考えられる。現状からゴールまでの過程を一つ一つ確認し、ほころびがあれば反論材料とする。

3-2. Question(質疑応答)

Debateでは立論後、Attack Speech後の二度、相手側から質問を受ける。前者は「立論についての詳細、証拠の有無、具体的数値等について確認」であり、後者は「論点のどこに対する反論か、どのような証拠にもとづいてか」を確認する。質問をされた事については端的に分かりやすく説明する事が求められる。お茶を濁したり、論点をずらすような応答は信頼性を損なう場合がある。またここでのやり取りこそがCommunicationの場であり、私が見てきた生徒の中でも「あれが言いたかったのに言えなかった、悔しい!」と後悔する場面に何度も遭遇した。そしてそれが生徒達の飛躍のきっかけになった場面を幾度となく見た。これがあったから私もずっと高校生の英語Debateに関わってきたのかもしれない。

3-3. Defence Speech

二度目の質疑応答後、各々がそれぞれの立場で受けた反論に対して防御を展開し、持論の立て直しを図る。ここでも漏れがあると「相手の反論を認めた」ことになる。ここの攻防がDebateのゲームとしての醍醐味であるが、ここではその詳細は割愛したい。さらにこの後Summary Speechとなるわけであるが、紙面の関係で全てを語ることは難しい。

4. まとめ

本稿のまとめとして、Debateで培われる力について私なりに考えてみたい。立論作成段階ではさまざまなリサーチを基に論点を探し出す問題認識力、その解決方法と現状からAdvantage / Disadvantage発生までの発生過程をEvidenceを用いて論証する論理力が養われる。当然、スピーチを読み上げる力や、相手の出してくる論点や自軍の論点に対する反論を予想して「反論・防御」を用意するCritical Thinkingも養われる(私も議論の前提や論理の推移を精査する上でこの点は役立っている)。この他にもSummary Speechでは「立論から総括まで」「全体を見通した議論を展開するまで」野球のキャッチャーのような統括力さえも必要とされる。それぞれのメンバーがチームとして機能しなければ勝てないためチームワークも養われる。まさに英語総合格闘技とも言えるのがDebateではないかと思う。もし興味があれば最近は書籍も増えてきたため、それらを参考にまずはご自身で始めていただければと思う。Debateを通じてより良い発想を手に入れて、実生活の中で活用いただければ幸いである。

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