達セミに学ぶ 英語学習のヒント

全国の熱血教師による授業に学ぶ英語学習方法伝授

東京都立武蔵高等学校附属中学校/田中周作先生
  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校
  • 田中周作先生
今回のヒント
スピーキング:音声録音と音声入力機能により得られる相乗効果

前回の記事で、Writing for Speaking(スピーキングに繋げるためのライティング)とSpeaking to Yourself(独り言トレーニング)の具体的な方法を紹介しましたが、ここではさらにプラスαでアウトプットに磨きをかける方法を紹介します。それはスマートフォンの①録音機能、②音声入力機能を利用したトレーニングです。これは非常に画期的な方法です。

1. 録音機能(ボイスメモ)を利用した「独り言トレーニング」

スピーキング:音声録音と音声入力機能により得られる相乗効果

録音して自分の英語を聞いてみることで、発音やイントネーションを改善することができます。自分の声を聞くことに抵抗がある人もいるかもしれませんが、成長するためには自分を客観的に観察し、そこから課題を発見し、修正していくという作業が必要になります。これは英語に限らず言えることです。スポーツの世界でも自分の動きをビデオに撮って分析するということは広く行われていることです。パフォーマンスを高めたいプロのアスリートは当然のように自己分析をします。なぜか。それは、人は自分のことを思いの外、客観的に見ることができていないからです。自分が自分に対して持っている印象と、他人が自分に対して持っている印象というのはたいてい異なります。ですからスピーキング力を向上させるために、自分のパフォーマンスを録音したり、録画したりするというのは、客観的に自己分析していく上で非常に有効なのです。テキストを音読して、それを録音して聞く。英語独り言トレーニングを録音して聞く。または、誰かと英語を話す機会があるのならそれを録音して後で聞いてみるのもとても良い勉強になります。個々の単語の発音やイントネーションなどに注目して聞き直してみると良いでしょう。また、発話した英文の正確さや全体的な流暢さに注目して聞き直してみることもできます。それぞれに新たな気づきがあるはずです。

2. 音声入力機能を利用した「独り言トレーニング」

スピーキング:音声録音と音声入力機能により得られる相乗効果

ライティングは書いたものが形として手元に残ります。しかしスピーキングはトレーニングの後に目に見える形に残りません。したがって「学習した」感、「努力した」感が得にくいというのが、スピーキング練習が遠ざけられる理由の1つとも考えられます。しかし、音声入力機能を用いることにより文字として話した内容を残せることは、「学習の見える化」に繋がり、これは一つのモチベーションになるのではないかと思います。モチベーションに繋がる以外にも様々な利点があります。例えば、正しく発音できなければ、意図した文字が現れません(認識されません)。とはいえ、最近の音声入力機能はある程度non-native friendlyな認識をしてくれます。つまりネイティブのように発音ができなくてもある程度までは認識(許容)してくれますので、その点では極端に学習者の意欲を下げることはないかと思います。またiPhoneのSiri機能を使うと簡単な会話などもできます。英語でいろいろな質問をしてみると思いもよらぬ返事があるかもしれません。

さて、全2回に渡り、スピーキングトレーニング方法を紹介してきましたが、どの技能の向上を図るにせよ、英語学習においてはバランスが大事になってきます。

語学学習はバランスが大事!

健康的な食生活を考えたときに栄養バランスというのはとても大事になってきます。米や麺といった炭水化物ばかり摂っていないか。好きな肉料理ばかり食べていないか。魚は食べているか。野菜を十分に食べているか。ストレスで糖分を過剰に摂取していないか。このように様々なことに気を配り、全てバランスよく摂取することが健康的な食生活に繋がります。
では語学力を向上させたい時、どんなバランスに気を配れば良いのでしょうか。基本的なことですが、まずは文字と音の繋がりを理解しているかが大事になります。「いやいやアルファベットくらい分かりますよ」と思った方、要注意です。例えば a は「エィ」と読みますよね。ただ単語の中に a が現れると、「エィ【ei】」だったり(例 ape)、「エァ【ǽ】」だったり(例 apple )、「ァ【ə】」だったり(例 animal の2つ目の a )と、同じ a という文字なのに発音が変わります。p / t / k はそれぞれ「プ」「ト」「ク」ではなく「プッ」「トゥ」「クッ」のように発音され、この文字が語末にきた時には母音挿入がありません。つまり stop は「ストップ」ではなく「ストッ(プ)」、sit は「スィット」ではなく「スィッ(ト)」というように語末は息だけで発音(無声音)します。このような文字と音の間のルールのことをフォニックスと言いますが、意外にここを疎かにしている英語学習中上級者は多いはずです。今更発音と思うかもしれませんが、ここを疎かにしたまま先に進むのと、ここをやり直してから先に進むのでは今後の伸びは(特にspeaking/listening分野において)変わってくるはずです。この分野の知識があやしいと思った方はフォニックス関連の本を一冊読んでみることをオススメします。
話を戻して、語学学習のバランスに関して発音(フォニックス)以外にはどんなものがあるでしょうか。語彙学習ですね。分からない単語があると、聞けませんし、読めません。自分が表現できる幅も狭まります。単語や熟語を覚えるのはもちろん大切です。それから文法です。単語の意味がわかっても、文を構成するルールがわからないとその文が言わんとしていることは理解できません。ここまで挙げた「発音」「語彙」「文法」というのは語学の土台となるものです。さてこの土台をもとに「聞く」「話す」「読む」「書く」が展開されていきます。

一人でできるスピーキングトレーニング

ここで自分の英語学習を振り返ってみてください。どの分野にどれだけの時間を使っているでしょうか?1日だとどうでしょう?1週間だとどうでしょう?「発音」「語彙」「文法」「聞く」「話す」「読む」「書く」にそれぞれどれだけの時間を費やしていますか?バランスよく全てに触れているでしょうか?単語帳で単語を覚えることに2時間3時間かけて1日の英語の勉強が終わっていないでしょうか?文法問題を解くことに明け暮れていないでしょうか?TOEFL®テスト、TOEIC®テスト、英検などの過去問を解きまくって終わりになっていないでしょうか?音読していますか?自分で正しい音を出せるようになることは、リスニング力、スピーキング力の向上に繋がります。英語を毎日聞いていますか?

YouTube、Podcast、市販のCD、洋楽、海外ドラマ、映画など英語を聞く機会や手段は今の時代いくらでもあります。英語を話しているでしょうか?独り言でも良いです。仲間と英語で会話してみるでも、オンライン英会話に取り組んでみるでも良いです。話す機会を工夫して生み出さないとスピーキング力はすぐに錆びつきます。英語を書いているでしょうか?自分の話したいことを整理したり、日記をつけたりしているでしょうか?

ここで挙げたように、一言に英語学習と言っても、英語の技能や学習方法は多岐に渡ります。英語学習の目的から人それぞれ学習方法は違います。冒頭で挙げた食生活の例を今一度思い出してください。バランスが大事です。英語学習も同じです。バランスがとれた学習が力に変わります。様々な知識や技能が互いに補完し合い英語力は伸びていきます。発音の勉強をすることで正しい音の出し方がわかりスピーキング力が向上します。また発音学習で音の認識力が向上するとリスニング力が伸びます。リスニングで聞き取ることのできる量が増えると、英語で理解する力が向上し、それは読解力及び速読力の向上にも繋がります。このように様々な技能は関連しているのです。
このことを念頭に置き、自分に合ったバランスの良い英語学習方法及び学習習慣を再考してみてください。

  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校
    田中周作先生 プロフィール
  • 東京都立武蔵高等学校附属中学校英語科主任教諭。
    北海道函館市出身。
    東京学芸大学大学院教育研究科修了。
    2014年に東京都教育研究員、2015年-2016年に東京都教師道場助言者として活動。2018年に英検主催英語教員海外研修(UNSW オーストラリアシドニー)に参加。Apple Teacher、Edmodo Certified Trainerとして積極的にICTを活用している。趣味は武道(合気道、剣道)、ランニング、釣り、スポーツ観戦、動画編集制作配信、英語カラオケ、英語でラップ♪
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