今回のヒントこそ、皆さんが英語を使えるかどうかの鍵を握っているのではないでしょうか。日本人の英語は、文法的な正確さを求めるあまり流暢さに欠け、言葉に一旦詰まると会話を続けることができないと言われています。これは特に高校での文法学習がペーパーテストに依存し、練習でも正確さを求めるあまり、英語を口に出すのを軽視するという風土ができあがっていることが一因と考えられます。
高校での文法学習は、例文確認、解説、練習から成ることが多いですが、典型的な問題形式は、( )の語を適切な形に変える、適語を入れる、語を並べ替える、です。授業では、指名された生徒が( )の語だけを言って、カタカナ読みでも正解であれば、「よし」となります。十数語の並べ替えでも、考える時間がかかり、不自然な読み上げでも正解であればよく、即時性や英語らしい発音や韻律は問われません。授業がこのようだと、平均以上の成績を残す生徒が時間をかけてテストで点数を取れても、真の文法力、語彙力、構文力がないのは当然でしょう。
もちろん初歩の段階では、このような練習も効果はありますが、やりかたを変える必要があります。「音読」をうまく取り入れて、文法的な正確さと同時にスピードを鍛えることを意識すべきです。そこで、5文程度の例文の練習に次のステップを設けます。
モデルをまねる音読練習では、「1回3回」方式を試してください。モデルを1回聞いて、3回繰り返します。2回目までは文字を見て行い、3回目は文字を見ずに言ってみるやり方です。3回目を目標にした適度な緊張状態で、半暗記状態まで持って行きます。
モデルなしの音読では制限時間を設定して練習をします。目標としては、全ての語数の半分の秒数、5文で50語の場合は、25秒以内で言い切れることを目指します。ネイティブの場合はもっと速いのですが、基本練習としてはこれでよしとします。誰かに実際に話している感覚を持って練習に取り組んでください。このような練習に慣れると、ドリル練習でも英文全体をパッと読み上げることができるようになります。
コミュニケーションの場で、「穴埋め」や「並べ替え」で話すことはありません。文法のための文法、テストのための学習から脱却し、本当に使える英語力を身につけるためには、「スピードの中に正確さ」を求める意識を持ち、音読練習をうまく取り入れることをお勧めします。
[参考図書]
『フォニックスからシャドーイングまで 英語音読指導ハンドブック』(大修館書店) 鈴木寿一、門田修平 編著