“入学前に現地を訪れ学校と街の環境が自分に合うか確認するといい”
アメリカで基礎医学の研究をするというのは、幼少期から意識していました。
中学生の時に訪れたカリフォルニアでUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)キャンパスの解放感に圧倒されたことや、高校生の時ボストンに1か月ホームステイをする機会があり、学んだ言語を実際に使いcommunicateする過程が楽しかった経験も、留学したいという気持ちを強くしたと思います。
他にはありのままに申し上げると、これは環境ではなく全部自分の責任ですが、私はあるときから日本での生活がまるで楽しめず、このまま日本にいても先が見えていると感じ、リセットと飛躍を期待して海外に飛び出したのも正直な理由です。海外留学で成功する人は、日本で順調に学生生活を送っていた人だけではないと知っていただくのも大切だと思います。
アメリカ東海岸の大学2校に出願しそれぞれ合格しました。
明確な理由はありませんが、私の先の進路を考えると東海岸にいるのがいいかなと思い出願しました。
出願校を絞る上で考慮したことは、大都市の中心ではなく近くにあり、比較的治安の良さそうな場所にある中規模の大学です。
もちろん自分の行動が実際に治安を決めることが前提です。
出願した2校のうちハートフォード大学を選んだ理由は奨学金が出たことの他に、9月の新学期前から同大学のサマースクールに参加しており、学校、街の環境が気に入ったことも大きかったです。
大学の(特に留学最初の)進学先は、知名度だけではなく、自分がこの先生活する環境の居心地が良いことが大切です。可能ならば必ず、入学前に現地を訪れ学校と街の環境が自分に合いそうか確認するといいと思います。実際に自分と合うかどうかは住んでみないと分かりませんが、反対にこれは合わないという感覚は比較的すぐに感じられると思います。
基礎医学の分野は大学院進学が前提ですから専攻は生物学(Pre-medical)でしたが、学部中は歴史、英文学、比較文化の授業にも積極的に参加し、大いに楽しみました。
大学院は自分の進もうとした分野(免疫微生物学)の充実度/知名度の他に、全学費、住居、生活費付きの奨学生にも選ばれたので、ニューヨーク市のアルバートアインシュタイン医科大学に進学しました。大学を選ぶ際は、なるべく日本語を使う環境から離れるように大都市は避けましたが、大学院に進む頃までには、アメリカ生活にも十分慣れたので場所は気にしなかったです。
語彙力がないと土俵にも上がれないと考え、市販のTOEFL® テスト英単語の参考書2冊を行い英単語を覚え、その後試験形式に慣れるように過去問の『The Official Guide to the TOEFL® Test』を繰り返しました。
「Keep in touch の意味」
この質問には多くの留学経験者が、「日本にいたらきっと知り合っていない人と出会い、価値観が広がった」と答えると思います。確かにその通りです。不法移民からノーベル賞受賞者まで会話するチャンスが身近にあるのは留学ならではだと思います。
留学中にたくさんの人と出会いますが、その内の大半は卒業や、その場所を離れる機会を境に、実際にはほとんどもう会う機会はなくなってしまいます。別れ際に“Wish you good luck, definitely keep in touch”と言いながら、もしかしたらもう会えないのかなと感じるこの感覚は、日本にずっといたらきっと味わうことはなかったと思います。
5年半のニューヨークでの大学院生活で、留学して本当に良かったと思える程の友人達と出会えたことは幸運でしたが、特にキャリアを築く最中において、人生にはステージがあり、適切な時期にお互いの成功を願い次のステージへ進むということも学びました。同時にこれは、今目の前にいる人を大切にするというレッスンであったと理解しています。
「留学生活の日常」
今、留学生活を振り返ると、より思い出に残っていることは、意外にも卒業式や大きな学会発表、旅行等よりも日常の延長線上にあった出来事です。
大学在学中は、英語力を上げること、次のステップへの準備をすることが優先でしたので、出掛ける機会も少なかったです。ゴールを持って留学している学生の生活は、おそらく誰にとっても似たような感じでしょう。皆さんが留学中、折角外国にいるのにクラスや図書館にしか行ってないと思われることもあるかもしれませんが、後に自分の海外生活を振り返った時に思い出すことは、普段の生活のことかも知れません。
次回も引き続き矢野勝英先生の留学経験者インタビューの後編をお届けします。お楽しみに!