留学経験者インタビュー

留学して何を得て、何が変わった?留学経験者にインタビュー

留学経験者インタビュー
  • 矢野勝英先生
  • アメリカ合衆国保健福祉省 食品医薬品局
    (US Food and Drug Administration)
    医薬品評価研究センター スタッフサイエンティスト兼審査員
    アメリカ/ハートフォード大学留学
    アメリカ/アルバートアインシュタイン医科大学院留学

今回は矢野勝英先生の留学経験者インタビューの後編になります。前編の内容はこちら

“留学先で就職することを目標にすると、充実した留学生活を過ごせる”

留学したことでどんな影響がありましたか(留学で得たもの)

留学経験者でこの質問にスラスラ答えられる方は、おそらく留学の効果はあまり出ていないと思います。

自分の評価とは結局は周りが決めることです。プレゼンに自信が付いた、様々な価値観が学べた、相手が外国人でも憶すことなく話せるようになった、英語が上手くなった..etc… etc…これらは日本にいても上達できるスキルです。

渡米して15年以上が過ぎ、もし私が留学していなかったらどうしていただろうと考えた時に気づいたことは、私が自分に期待するスタンダートが日本に居た頃とは比べられないぐらい高くなったということです。

以前あるインタビューで、言うなれば社会的に成功した留学経験者の方が、全く同じ質問に「留学経験を経て世界の何処へ行っても、自分の力でお金を稼いで生きていける自信が付いた」という趣旨の回答をされているのを目にしました。それを聞いたとき「この人何を当たり前のこと言っているのだろう」と感じましたが、私がこの回答を「当たり前」と感じたのは外国で仕事して生きているのが私の日常だからであり、これを「当たり前」と感じられたことが成長だと思いました。

留学前から卒業後はアメリカに残って仕事を見つけたいと決めて渡米しましたが、暫くは自分のスキル、コミュニケーション力、目標への動機付けの強さを鑑み、果たして世界中の優秀な人間が集まる環境で将来やっていけるかと考えることがありました。アメリカの大学で初めて受けた化学実験のクラスで、周りとまるでコミュニケーションがとれず(実験器具、試薬の名前もまるで分からなかった)、これは大変な所に来てしまったなと感じたのを覚えています。自分が目指す場所に向かう準備すらまるでできていないと。このときは次の日また実験室へ行きティーチングアシスタントにも手伝ってもらい、実験室中の目に入るもの全ての名前をノートに書き出し、次回のクラスまでに覚えました。結局、目の前の課題に徹底した準備を行い達成していく、これの繰り返しではないでしょうか。

まとめると、留学で得たものは自分のスタンダートを上げられたこと。留学前や当初に苦労していたことを、特に意識せずに熟している自分に気付いたとき、きっと留学して良かったと実感出来ると思います。

今後の展望(ご自身の夢など)についてお聞かせください

医学研究にはずっと携わっていきます。また、現在所属の政府機関は医薬品、食品、医療機器などの認可を行う機関ですので、今後さらにこの分野に関わる時間が増えてきます。医学研究の成果は一般的に世の中に認識されるまでには時間がかかりますが、認可の仕事は今までの私の経験が直接活かせ、また目に見えるインパクトが実感できるので、この分野にも携われたことは幸運だと考えています。

マクロの視点では、抽象的な言い方になりますが、医療分野に限らず世の中の仕組みの効率を最適化すること、その上でinnovationを興すことに興味があります。

私は留学できたお陰で、今のポジションに来ることが出来ましたので、後進の留学生の力になりたいといつも考えています。私がここまでくるのに多くの人に助けていただいたのと同じように、誰かに役立てるアドバイスができればと思います。

海外生活で学び実行しているタイムマネージメントや物事の見方なども広く伝えられたらと思います。

これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします

3つメッセージを贈りたいと思います。

まず、留学生活を成功させるために最も大切なことは「自分に起こること全ての責任は自分に在る」という覚悟を持つことです。言ってしまえば必要なことはこれだけです。

実際には私もこれは理不尽だという体験は何度も経験しましたが、何か不都合が起きた際に指を外側に向け周りの環境、誰かの責任だと言い始めるとそれだけで留学生活はあっさりと終わってしまいます。闘うべきときは闘うべきですが、常に自分にとって必要なもの、そうでないものを徹底的に考え、自分が決めたことには全力で取り組むことが留学を成功させる鍵です。

2つ目に、いつも三歩先を意識する癖をつけることが大切です。

学位を取得することだけを目標にしてはそれ以上先には進めません。例えば、発展途上国の医療インフラに取り組みたい⇒国際機関、省庁、研究機関に入る⇒ならば、大学在学中にできることは、夏休みを利用してインターン先を探す、データに強くなるように統計学の授業を取る、実際に働いている人の修士、博士課程修了者の割合を調べ、進学も視野に入れる。本気になった瞬間に無駄にできる時間は一秒もありません。

最後に、留学終了後の進路は皆さん一人ひとり違うと思いますが、心構えとして、卒業後留学先の現地で就職することを目標にすると充実した留学生活を過ごせると思います。

外国人として仕事を見つけるという事は、当然のことながら特別なスキルを持っているまたは、現地の人よりも、総合的に実力があることが求められます。英語力の他にも、場合によってはビザのサポート等雇用側に負担も多く、誰もが納得する力量がなければポジションを取ることはできません。日本のある程度の学校で、ある程度の成績を収めた人ならば留学して学位を取得することは可能だと思います。しかし、世界中から集まる優秀な人間の中で、社会人経験なく大学卒業直後に周りにアピールするためには、少しでも多くの経験を学生中に積んでおく必要があります。また、働くために必要な英語力は、留学生として求められる英語力とは水準が違うものです。実際に選ぶ道は何であれ、卒業後直ぐに現地で仕事に就くという意識を置くと、より成果を伴う留学生活が送れるのではないでしょうか。

大半の留学生にとって留学する期間は2年から4年間の短い期間です。
この時間が自分の成長のためだけに全力を注げる最後のチャンスかもしれません。

皆様が留学を通じて理想のキャリアを手に入れることを願っております。

留学経験者インタビュー

 

留学経験者インタビュー
  • 矢野勝英先生 プロフィール
  • アメリカ合衆国保健福祉省 食品医薬品局
    (US Food and Drug Administration)
    医薬品評価研究センター スタッフサイエンティスト兼審査員
    アメリカ/ハートフォード大学留学
    アメリカ/アルバートアインシュタイン医科大学院留学

  • 東京生まれ。

    現在FDAで、疫病や神経疾患用薬剤の研究、認可に携わるセンターでアメリカ合衆国連邦政府職員として勤務。

    ワシントンDC在住。
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