留学経験者インタビュー

留学して何を得て、何が変わった?留学経験者にインタビュー

留学経験者インタビュー
  • 畑野尊一登さん
  • アメリカ/ハーバード大学 T.H.チャン公衆衛生大学院留学
    アメリカ/カリフォルニア大学バークレー校 ゴールドマン公共政策大学院留学

 

“仕事から離れて様々なリスクを負う以上、できるなら「世界一」の大学院に行くべきだろうと考え留学”

留学のきっかけを教えてください

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▲ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の卒業式で

健康医療機器メーカーのオムロン ヘルスケア株式会社(以下、オムロン)で8年間に渡り、営業や調達、業務改善の仕事に取り組み成果を上げました。手応えや自負を感じる一方、視座を上げてさらに高い結果を出したいと考えると、ヘルスケア業界とそれをとりまく情勢について自身の体験や知識の不足を実感するようになりました。変化の激しい時代に一旦学校に戻り、さらには世界トップの大学院で現在の仕事に関連するだけでなく、世のため人のためになる学問を修め、その過程で自身の方向性を探ったり、どんな仕事で、どのように人様の役に立てるかを、真剣に考え学びの時間を持つことは有意義ではないかと考えました。

同社に入社した動機は、14年間にわたり3人の祖父母の自宅介護を経験する中で、オムロンの健康医療機器の素晴らしさを実感したためです。このような機器の提供・シェア拡大を通じて世界の人々の健康に貢献したいと考えました。
さらに遡ると、もともと私は英語の成績が悪く、中学の時に英語の成績のことで三者面談を受けたことがあります。高校2年生の時に英検準2級に2回落ち、TOEFL ITP®テスト347(全受験者の下位1%!)(*1)を取りました。
自身の将来に危機感を覚えたことがきっかけで、英語を一念発起しました。
その後、就職活動時にはTOEIC®テスト900以上のスコアを取ることができました。
同社の海外売上比率・グローバルシェアが著しく上がってきたタイミングでしたので、そのように努力した英語力も活かして貢献できるのでは、とも考えていました。

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▲ 2001年11月にTOEFL ITP®テストで347を取得した時のスコアレポート

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▲11年後、2012年8月にTOEIC® IPテストで990(満点)を取得した時のスコアレポート

入社後8年経ち中堅社員としての活躍が期待される中で、自身の仕事(営業や調達、業務改善)の枠から視座を上げて1~2年大学院で学ぶことは、短期的に何ももたらさないかもしれないと思いました。しかし「人生100年時代」とも言われる昨今、「がんばり次第」「目的次第」という条件が付くでしょうが、留学を中長期的に自身の「伸び代」にできるのではないか、と思案するようになりました。

とはいうものの「先立つもの(お金)がない」を理由に、計画を先延ばししていました。行きたいアメリカの名門校では、学費や生活費を合わせて1年間で1,000万円近くかかるためです。
しかし、ある時から「合格してからお金のことは考える」と強く方向転換。無理やり楽観的になり、誰にも相談せずこっそり準備を始めました。

色々書きましたが、かねてから「男の夢」として温めていた「ハーバード大学で正規学生として学び、未来のリーダー達と切磋琢磨したい!」との想いが最大の動機かもしれません。

以上、ごちゃごちゃした想いが留学のきっかけと言えるかと思います。

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なぜその国、その大学・その学部を選びましたか

アメリカは良い意味でクレイジーです。一度の人生、どうせ学ぶなら刺激的な環境に身を置きたく、アメリカを選びました。

<ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院>
多大な費用をかけるだけでなく、1~2年間も仕事から離れて様々なリスクを負う以上、できるなら「世界一」の大学院に行くべきだろうと考えました。

大学全体が世界ランキング1位となることが多いハーバード大学なら間違いないと思った次第です。(ランキング実施機関により評価は変わりますが、大抵1位から3位に入っています)
その後、集団に対するヘルスケアを学際的に学ぶ「パブリックヘルス(公衆衛生学)と社会科学」という分野で世界1位の「ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院」1校に志望校を絞りました。

私淑する先輩・先生方のうち、特に傑出して聡明な方々の多くがハーバード大学で学ばれていたことも、理由の1つです。
上の文章で「先立つもの(お金)がない」と書きました。下世話な話、ハーバード大学合格ぐらいでないと、支給型奨学金を獲得できないだろうとも感じていました。

同校は1年間で取得可能な修士Master of Public Health(MPH、エムピーエイチ、公衆衛生学修士)を提供し、医療政策経営学部で Health Management専攻(拙訳:ヘルスケア業界の経営専攻)に学ぶことができます。他にも複数の専攻(Epidemiology, Quantitative Methods, Clinical Effectiveness, Global Health, Social Behavioral Science, Health Policy)がありますが、私の持つビジネスマンの職務経験で出願可能なのは同経営専攻のみでした。

同校専願で出願して合格した結果、ハーバードMPHでHealth Management専攻の入学者・卒業生は日本人で私が1人目です。
手前味噌ですが、母校の立教大学の卒業生かつ男性でハーバード大学院に入学・卒業したのも私が1人目になるようです。

補足になりますが、留学を計画し始めた頃は経営学修士(MBA)を検討しました。しかし世界トップ10校の競争は激しく、私には「レッドオーシャン」に見えました。特にハーバード・ビジネススクールの選考では出身企業が特定の超一流企業かどうか、帰国子女か、もしくは帰国子女同等のスピーキング力があるかどうか、数学のテストスコアなどで差がついてしまい、私には勝ち目がありません。結果、ハーバード大学MPH・ヘルスケア業界の経営専攻に志望を変えた次第です。
そのトレードオフ(引き換え)として、MBAと比べて留学への投資対効果がハッキリしない短所があります。日本にはMPH学位を持つサラリーマン出身の先達がなかなかいないためです。アメリカでは一般的なのですが。ここでも、「ハーバード大学院卒ならなんとかなるだろう。MPH取得に意味がなかったとしても、やるだけのことはやったと諦められる」と楽観的に考えるようにしました。

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▲ ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のクレスギー校舎前での集合写真

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▲ Teaching Assistant(TA)による生物統計学の補講

<UCバークレー・ゴールドマン公共政策大学院>
ハーバード大学で未来のリーダー達と切磋琢磨する中で刺激を受け、もう1年間アメリカで学んでみたくなりました。
UCバークレー・ゴールドマン公共政策大学院を選んだのは、「世界一の私立大学」で学んだ後「世界一の公立大学」で学ぶのもいいのではないかと感じたこと、1年間で行政学の修士(Master of Public Affairs, MPA)を修めることができるためです。世界一リベラルな学風で知られ、キャンパスのあちこちでデモ・抗議活動が行われています。緒方貞子氏や孫正義氏、Google元CEOのエリック・シュミット氏といった錚々たる卒業生を輩出していることも魅力でした。
彼らが学生時代を過ごした学生寮「アイハウス」に私も住み、世界70か国以上から集まる600名以上の学生たちと暮らしています。同寮は約100年の歴史があり、9名ものノーベル賞受賞者を輩出しました。私は「Resident Council」という11名の生徒会ないし自治組織に立候補して選出され、同寮の卒業生たちの寄附からなる年間約2000万円もの予算の使い道を、メンバーたちと議論して決めています。
良い意味でクレイジーというか刺激的な学風、卒業生たちの活躍を知り、前々から惹かれていたのです。
気候の面では、ボストンで1年間を過ごし、東海岸の寒い秋冬はもうこりごり…とも思っていました。
2019年11月現在、卒業要件30単位中16単位を取り終えました。
手前味噌ですが、ありがたいことにほとんどの科目でA(90点以上)を取っています。

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UCバークレー・ゴールドマン公共政策大学院の名物教授ロバート・ライシュ(クリントン政権1993年から1997年に労働長官)による経済格差の講義の写真です。学生時代あのヒラリー・クリントン氏とデートしたと聞いてたまげました。

TOEFLテストのスコアは何点以上必要でしたか、またどのような勉強をしましたか

<ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院>
TOEFL iBTテスト100以上が必要で、スピーキングセクションは23以上あることが望ましいと書かれています。
私の提出スコアは108(内訳:R28/L28/SP23/WR29、全受験者の上位8%)(*2)でしたので、条件を満たしていました。
最終的に、TOEFL iBTテストのスピーキング以外は30満点を取りました。(MyBest Scoresで114点になります。)
とはいえ、以前「TOEFL iBT®テスト体験レポート」で投稿した際に目標に掲げていた110は達成しませんでした。悔しいです。しかし、スコアそのものではなくハーバード留学へと目標が変わりましたので後悔はしていません。「目標のTOEFL iBTテスト110を取るまで出願しない」というのは本末転倒ですし、相談した専門家たちからも「108も110も入学審査官からしたら一目置かれるレベルなので大差ない。他に大事なのはGMAT®GRE®スコアと、特に出願書類(志望動機書、推薦状)です」と諭されました。

フルタイムの仕事に全力を注ぎ、帰宅後にTOEFL iBTテスト対策(とGRE対策)に取り組むのは非常に大変で、苦労に苦労を重ねた次第です。

既に英検1級とTOEICテスト990(満点)を持っており、一定の基礎力がありました。この点、TOEFL iBTテスト向けにいかに自身の英語の反射神経をチューニングするか、に力点を置きました。
具体的には、シャドーイングやETS公式教材、100万語多読、Scientific Americanや英Economist購読、ウェブ講座、個人指導、有料の勉強会、発音矯正、TOEFL iBTテストスピーキング専門の塾、韓国と中国で評判が良いテキストなど、1年半かけて片っ端から徹底的にトレーニングに取り組みました。とあるスクールに通うため、勤務先のある三重県松阪市と東京を日帰りしたことが幾度もあります。
結果、受験者として日本で一番TOEFL iBTテストを研究したのは私ではないかと言えるほど、努力を重ねました。
例えば、ライティングはある時点でスコアが頭打ちになり、自身の上達の手応えとスコアが比例しなくなり苦悩しました。ひょっとするとTOEFL iBTテストのライティングの採点の仕組みへの理解が足りないのではないかと思案しました。
そこで、ライティングセクションの自動採点(e-rater®)および人間の採点官(human-rater)から高いスコアを取るにはどのような英文が好まれるか研究した結果、ある時は30満点(上位1%)を取り、その後29(上位2%)を5回連続で取得。
結果、総合点で自己ベストの108(上位8%)を獲得しました。(*2)
より論理的で展開力のある英文を書く訓練にもなったと感じていますし、留学先でも大いに役立っています。

GREの数学セクション対策のため、33歳にして公文式に半年以上通っていました。クリスマスにカフェで数学のプリントをやっていたら、若い女性店員さんから「勉強がんばってください!」とメモ書きをもらったことは良い思い出です。

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▲ クリスマスにカフェで勉強中に頂いたメモ

(*1)出典:Test and Score Data Summary for the TOEFL ITP® Test January–December 2018 Test Data
(*2)出典:Test and Score Data Summary for TOEFL iBT® Tests January 2018 – December 2018 Test Data

次回も引き続き畑野尊一登さんの留学経験者インタビューの後編をお届けします。お楽しみに!

 

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  • 畑野尊一登さん プロフィール
  • 大学卒業後、オムロン ヘルスケア株式会社に入社。ハーバード大学大学院で公衆衛生学修士号(MPH)を取得。日本人初のHealth Management専攻(拙訳:ヘルスケア業界のマネジメント専攻)。在学中、ジャパンクラブ代表およびJICAタイ事務所にてインターン。
    卒業後、カリフォルニア大学バークレー校大学院の行政学修士(MPA)課程に在学中。

 

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