For Lifelong English

  • 2014.09.09
  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
    立命館大学客員教授

第74回 ヒップ・ホップもあるアメリカの大学の音楽プログラム!

前々回はスポーツ、前回は医学に焦点を当てました。今回は音楽に焦点を当てます。日本では芸術大学の音楽科や音楽大学に行って音楽を勉強しますね。しかもクラッシックに限定されることが多いように思います。クラシックは確かに素晴らしい音楽ですが、音楽の一部に過ぎません。

アメリカの大学の音楽学部では、クラシックをはじめjazz, blues, fusion, country music (mountain music), R&B, rock, pops, hip-hop, reggae, tango, computer musicなど様々なジャンルの音楽の勉強ができます。しかも、4年制の大学ならほぼ全ての大学に音楽学部があり、加えて日本の音楽大学に当たるThe Julliard SchoolやBerklee College of Musicなどがあります。

Julliardに入るのはとても難しいようですが、普通の大学で音楽を専攻するのはそれほど敷居が高くありません。ですから、音楽以外の専攻の学生が取れるコースもたくさんあり、音楽大学の入学試験に失敗すると、音楽の勉強を諦めてしまうことが多い日本とは違い、チャンスが開かれています。

人によっては、大学に入ってから音楽への関心に目覚め、それから音楽学部に専攻を変えて音楽家として大成する人も沢山います。また、音楽学部や音楽大学で専門に音楽の勉強をしなくても、音楽的にリッチな大学コミュニティーで育まれた音楽家なら相当数いる筈です。

筆者の知るところでも、意識の研究で著名なタフツ大学の脳神経学者Daniel Dennett(*1)博士は、プロのバリトン歌手としても有名です。今はpops界の重鎮で、歌手、作詞家、作曲家のLionel Richie(*2)は、テニス奨学金でTuskegee 大学に入り、テニスをしながら在学中に有名なThe Commodoresを結成しています。プロのテニス・プレーヤーを目指すも年齢を考慮し断念、音楽の道を選んだようです。

これらの著名人たちが実際に大学で音楽の授業を取ったかどうかは定かではありませんが、アメリカの大学では教養としての音楽プログラムが定着し音楽家を排出する環境が整っていることから、何ら不思議なことがらでもありません。

それでは、有名な音楽プログラムをチェックしてみましょう。

The top 10 best music schools(http://college.usatoday.com/2014/06/19/the-top-10-music-colleges-in-the-united-states/) を見ると、

がリストされています。

他にも沢山ありますから、これもランクに拘らずに自分が好きなジャンルの勉強が出来るところを調べて選びましょう。2位のBoston Collegeの音楽プログラム(*3)をチェックしてみると、クラシック、jazz、 R&B、 hip-hopなどのジャンルはもちろんのこと、African music やAsian musicなどの世界各地の音楽もカバーしています。全米の2000近くの大学の殆どが音楽学部・学科、または、少なくとも音楽コースを持っており、選択に迷うほどですが、アメリカでしかできない音楽ジャンルに絞るのもよいでしょう。

こうした音楽プログラムも今ではonlineで学べるようです。Berklee Online- College of Music (http://www.berklee.edu/)のプログラムを覗いてみましょう。

と銘打たれた 10個のプログラム群があります。一つ一つかなり充実しており、いかなる音楽をも尊重するアメリカ社会の姿勢を垣間みることができます。

このコラムで以前お話したことがありますが、筆者は、慶應義塾大学SFCで教鞭を取っていた頃にThe College of William and Maryで夏季研修プログラムを作り学生を連れて行きました。そのプログラムのAmerican Pastimeと称するモジュールに参加し、jazzの演奏をしながらjazzの歴史を語ってくれた先生、また、近くのアパラッチ山脈地方のmountain musicを演奏し、square danceを教えてくれた先生達は、同大学の音楽プログラムに関係する先生方でした。前者はAmerican Studiesに所属され、後者の先生は地理学科(geography)に所属されていました。先生達の関係する音楽プログラムが全米トップ10であることをその当時は知りませんでした。

また、同プログラムを通して会うことが出来たブルース研究の第一任者でBlues From the Delta(*4)の著者であるWilliam Ferris博士には、ミシシッピー大学にBlues Archives(*5)を案内して頂き、大変感銘を受けました。かのB. B. Kingも関わっていることから、世界中の著名なアーティストが見に来ておりました。フェリス博士はB. B. Kingとともに、BBCで放映されたブルース特集を制作し、音楽、歴史、文化を絡めた総合的な研究を世に広めている著名な学者です。

筆者自身、Julliardを卒業し、現在ロンドンで活躍している日系バイオリニストを知っています。ご両親(米国在住)と親交がありご自宅を訪れた際に、まだ幼少時の彼女に2、3度会ったことがあります。彼女に才能があると分かるや、高名な先生が声をかけて教えてくれたばかりか、高額なバイオリンを貸与してくれたそうです。このような話ばかりではないでしょうが、音楽の勉強をしてみたいと思う人はチェックする価値ありです。

(*1)タフツ大学教授、タフツ大学認知研究センター所長、哲学者、認知科学者、意識の多文書理論
    (Multi-draft theory)の提唱者。主要著書 Consciousness Explained 。You TubeやiTunes Universityで
    配信されている講演を参照。
(*2)Lionel Richie Official Website (http://lionelrichie.com/)を参照されたい。
(*3)http://www.bc.edu/schools/cas/music/
(*4)http://www.amazon.co.jp/Blues-From-Delta-William-Ferris/dp/0306803275
(*5)http://www.olemiss.edu/depts/general_library/archives/blues/

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