For Lifelong English

  • 2015.01.13
  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
    立命館大学客員教授

第78回 「学ぶ」から「する」英語コミュニケーション!

先月号では、コミュニケーション・チャンネルを開けて、保持し、そして次に繋げる形で閉じるという機能を持つ「コンタクト」について話しました。今月号は、その先のコミュニケーション本体について話します。まず、コミュニケーションには大きく分けて言語と非言語によるものがあります。前者はバーバル・コミュニケーション(verbal communication)、後者はノンバーバル・コミュニケーション(nonverbal communication)と称します。よく、コミュニケーションは会話、すなわち、英語のカンバセーション(conversation)と混同されますが、会話は話し言葉によるコミュニケーション、即ちオーラル・コミュニケーション(oral communication)で、バーバル・コミュニケーション(verbal communication)のことです。

コミュニケーションは、バーバル・コミュニケーションとノンバーバル・コミュニケーションが効果的に組み合わさった総合的な活動といってよいでしょう。要は、言語だけで物事の全てを表現できないので、同時に、身振り、手振り、表情などのボディーランゲージをはじめ様々な人工物(artifacts)を補完的に駆使して表現することにより、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚などの五感に訴えながら意思疎通を図ります。通常のコミュニケーションは、筆舌しがたい内容のメッセージが多く、言語と非言語の伝達手段がコラボレーション(協働)する総合的表現芸術と言えるでしょう。

コミュニケーションには、それ以上に、伝える内容、即ち、メッセージが必要です。それは皆さんの生き方そのものに関係します。人それぞれ、時と場合によって様々なメッセージを考えて伝えますし、周りの人や物事からもメッセージを受けます。それらのメッセージをどのような伝達方法で伝えるか、私たちの脳は臨機応変に考えて実行します。時と場所によりリアルタイムで変化する状況に応じた言動、すなわちバーバル、ノンバーバルのコミュニケーションになります。私たちは、生まれてこのかた、こうした活動を繰り返しながらコミュニケーションのコツを掴んで行くのです。それは、学校の教科として習うというより、日々の生活の中で培って行くものなのです。

よく「英会話を学ぶ」という表現に接しますが、「英語によるコミュニケーションを学ぶ」ということでしょうか?前回述べた「コンタクト」程度であれば学べるかもしれませんが、その先のコミュニケーションを続けるにはメッセージが必要になります。メッセージは各自が作りだすもので人から習うものではありません。また、メッセージをどのように表現するかも、各自が編み出すもので、人から習うものではないのです。要するに、コミュニケーションにおけるメッセージも表現方法も無限ですから、各自が「学ぶ」のではなくて「する」場を創造し、そのノウハウを会得するしか無いのです。

そうしたコミュニケーションは、皆さんの生活の「場」にあります。そこで提案です。生活の中で体験する物事をメッセージとして表現することを勧めます。そうして体験した物事を一堂に会して発表し合う「場」を作ればよいのです。それは「教室」かもしれません。また、オンライン上に開いた空間かもしれません。自分たちのメッセージを言葉、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚に訴える様々な伝達方法を考えて交換し合う、農産物などを売り買いするようなマーケット・プレイスを作ってみてはどうでしょう。自分を高め、人を高めるものでさえあればテーマは各自の自由です。始めはたどたどしい英語もドンドン上達します。趣味から学問分野に至るまで、もう一段高いコミュニケーションに進めます。人との「コンタクト」も一層深くなります。コミュニケーションはひたすら行うもの、パフォーマンス(performance)です。

最後に、そうした生活の場から出たコミュニケーション活動を紹介します。1994年ヒップ・ホップをこよなく愛していた当時の筆者の学生さん達は、ヒップ・ホップの“turn”の意味について、言語(英語)と非言語(踊り)で発表しました。取材に来たThe Daily Yomiuriの記者がその内容と表現力に感銘し、同誌の正月特集号に取り上げてくれました(写真参照筆)。筆者はこうした数千人の大学生、そして幼稚園児から中学生によるコミュニケーション(英語)に接して来ました。日常の趣味から始め、大学生であれば、専門分野の好きなテーマについての英語でコミュニケーションができるようになります。

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