For Lifelong English

  • 2015.03.10
  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
    立命館大学客員教授

第80回 YouTubeで英語レクチャーを聞こう

YouTubeでは多くの英語レクチャーが配信されています。筆者は、言語、コミュニケーション、ICT、メディア、脳神経、認知、心理などに関するレクチャーを聞きます。前回(第79回 YouTube の無料英語レッスンで通学・通勤中に英語力をアップする)触れたMarshall McLuhanの生前のレクチャーやインタビューも幾つか聞きましたが、著書を読むだけでは分からないことを発見できます。著名人のレクチャーが何時でも何処でも無料でアクセスできるのですから、こんなにありがたいことはありません。

YouTube上の検索欄に関心テーマを入力して、関連レクチャーを検出してみましょう。学問分野はもちろん趣味に至るまで無数のテーマのレクチャーが配信されています。特に勧めたいのは、英語字幕付きのレクチャーです。字幕を読みながら何回も聞いて、リスニングはもちろんのことリーディングの力もアップできます。YouTube以外にもTED(Technology Entertainment Design)とかiTunes Universityのレクチャーも調べてみましょう。ちなみに、スタンフォード大学はiTunes Universityと共同でStanford iTunes University(Stanford on iTunes University https://itunes.stanford.edu/)を提供しています。また、以前の号で述べた通り、大学などのonline授業など、通勤、通学中の電車やバスの中でアクセスできるものが沢山あります。

趣味や興味から学問に至るまでの関心事を中心に、自分に合ったレクチャーを探して聞いてみましょう。筆者は野球をします。所属チームが始動する3月に備えて、目下battingに関心があります。YouTubeでHow to hit baseball?と入力し、メジャーリーガーらが分かりやすく教えてくれるサイトを探して、それらを参考に練習しています。まず趣味や興味に関するサイト探しから始めてみましょう。学業なら、自分の得意な科目の初歩的なレクチャーやコースを探してみるのがよいでしょう。コンテンツは簡単に理解できるでしょうから、英語もすんなりと頭に入るはずです。例えば、それが数学なら、introductory mathematicsまたはintroduction to mathematicsと打てば沢山出て来ます。MIT Open coursewareでは、MITの数学科が全学生に向けてWhy is mathematics important?という動画を配信しています。とても分かりやすく数学の意義を説いています(Mathematics at MIT https://www.youtube.com/watch?v=gSVHaIWIgUE)。筆者も聞いてみましたが、数学を勉強してみたいという意欲を駆り立ててくれます。(*1)

レクチャーを聞いたら、自分の意見をまとめて英語で書き、可能ならそのレクチャーのサイトの意見欄に投稿してみるのもよいでしょう。TOEFLテストのリスニングにはレクチャーを聞いて設問に答えるセクション及びエッセイ・ライティングもあり、その準備になります。

前回と今回はインターネットの無料動画サイトで出来る英語の自動学習法を紹介しました。最後に、インターネットなどのtechnologyとGlobal Englishに関してここで一言付け加えます。

グローバル時代をもたらしたのはインターネットなどのtechnologyです。便利で良い面(positive effects)とともに負の面(negative effects)もあり、その是非をめぐり議論もあります。McLuhan自身、テクノロジーが我々の体の一部になり、中枢神経の延長と化すことにより生まれるGlobal Villageの弊害も述べています。世界が村のように狭くなるので、お互いの情報が瞬時に共有されてプライバシーを侵害すると予言しています。ただし、McLuhanは「ある視点で物事を見ない(I have no points of view.)」と明言し、善し悪しの価値判断(value judgment)を避けています。(*2)メディアをラジオなどのhot mediaとテレビなどのcold/cool mediaに分け、新旧メディアの端境期に起きうる社会的インパクトを語っています。メディアのコンテンツではなくメディアの入れ替わりが社会的変革をもたらすという意味で「メディアはメッセージである(The medium is the message.)」と述べています。(*3)1968年に収録されたMcLuhanと著名作家Norman Mailerのメディアとバイオレンスについてのディベート(www.youtube.com/watch?v=PtzxWR-j1xY)は現在に訴えるものがあります。少々難しいので、上級者にお勧めします。

また、インターネットで圧倒的に多く使われている言語は、英語であることに間違いありません。社会言語学には言語を話者数や機能に応じて分類する言語typologyという領域がありますが、グローバル化が浸透してきた現在、多くの非英語圏言語社会では、英語が外国語としてではなく、母語と併用して日常で使う第2言語化しているものと思えます。英語を公的言語(official language)にするかどうかという言語政策上の問題と混同して語られることがありますが、人々が自由意志で英語を第2言語として使用し続けるのは、technologyと同様に時代の趨勢であって、この傾向は強まるでしょう。恐らく英語は汎用性が高いからでしょう。(*4)

筆者が若かりし頃は本や雑誌や映画などを通して間接的にしか見えなかった世界がICTと英語を駆使すれば、今では直接に近い形で接することができます。かつては多額の費用が掛かりましたが今は無料です。YouTubeにはGlobal English、特にtechnologyに関するレクチャーとディベートが沢山あり、これを機にそれらを聞き、物事には賛否両論があることを意識して問題発見・解決して先に進むしかありません。

(*1)2013年 第65号(日本にいながらにしてオンライン留学を体験できる時代の到来)の本コラムを参照してください。
(*2)物事には「善し悪し」がつきもので、まず、中立な立場で見ることも重要かもしれません。「改善(kaizen)」という発想は、そうして見える「負」の部分を良くするということかも知れません。
(*3)詳細はUnderstanding Media The extensions of man (1964, Marshall McLuhan)を読んでください。
(*4)2014年 第71号(グローバル社会のプラットフォーム、ICTとグローバル英語)の本コラムを参照してください。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。