For Lifelong English

  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
    Yuji Suzuki, Ph.D.
    Professor Emeritus, Keio University

第120回 Critical thinkingを問うTOEFL iBT® テストに向けて-英語で情報を集めて、考えて、発信する習慣をつけよう

筆者の好きなスポーツはbaseball。観戦はもちろんのこと、70歳を超えた今でもbatting cageでの打撃練習、そして、baseball仲間との練習を楽しんでいます。慶應義塾大学で教鞭をとっていた頃、筆者の英語クラスに在籍していた体育会野球部の学生さんに色々手ほどきを受けたのがきっかけです。卒業後西武ライオンズに入団し活躍した高木大成選手らのbaseball関連のプロジェクトを読み、自分もやってみようと思うようになりました。すでに50歳を超えていましたが、それ以来ずっと続けて現在に至り、教歴を退いた後も筆者の健康を支える源になっています。

もちろん日米のプロ野球の観戦も好きで、時には球場に足を運び、攻守のプレイを直に楽しんでいます。留学中にはMLB(Major League Baseball)の試合をよく見に行ったものです。以来ずっとMLBファンで、NHKのBSで放映されるMLBの試合を見るのが好きです。2ヶ国語放送なので現地放送局の実況放送を楽しんでいます。ホームチームとビジターチームのどちらにも偏らず、各プレイを活き活きと実況する姿勢、各選手の記録に関する事細かい情報の提供、それにユーモア、アメリカに根ざした素晴らしい話芸としても絶妙ですね。(*1)

1996年Mets傘下3A Tides監督Bobby Valentine氏と。慶應義塾大学&William & Mary大学の両校学生と筆者
▲ 1996年Mets傘下3A Tides監督Bobby Valentine氏と。
慶應義塾大学&William & Mary大学の両校学生と筆者

1996年Valentine氏と筆者、試合前のグラウンドにて日米野球について聞く
▲ 1996年Valentine氏と筆者、試合前のグラウンドにて日米野球について聞く

関心事について英語で調べる、これほどパワフルな英語学習方法はありません。英語圏の国々のみか英語圏以外の国々の情報さえインターネットを使えば直接収集できます。最近のアメリカ政治については気になります。筆者は、アメリカのキーネットワークであるABC, NBC, CBSなどのnewsに加え、以下のような主要メディアのbreaking news(速報欄)に目を通すことを日課にしています。Trump氏などの動静などを素早くキャッチできるからです。

CNN International- Breaking News, US News, World News & Video

Home-BBC News

The New York Times-Breaking News, World New & Multimedia

Washington Post: Breaking News, World, US, DC News & Analysis

アメリカではこの秋に中間選挙がありますが、国際政治に関心を持つ読者は、アメリカのpoliticsの政情について現地の報道を収集してみてはいかがでしょうか。例えば、politics, news, trendingなどのキーワードで検索すれば、上記の新聞報道以外にも以下のようなサイトをはじめ、多くのサイトがあるのが分かりますね。

Politics: Latest and Breaking Political News | Politico

筆者がよく視聴するのは、PBS(Public Broadcasting Service)のNews Hourという番組です。特にその中のPolitical Commentatorsというコーナーが好きです。ちなみに、PBSは有名なSesame Streetなどの子供番組でも有名ですが、筆者が米国滞在中の1970年に設立されたnon-profit organizationで、確か、視聴者の寄付金で運営されていたと記憶しています。

PBS: Public Broadcasting Service

PBS News Hour

世界情勢のカギを握るアメリカ大統領選についてですが、2016年アメリカ大統領選ではアメリカでも主要なメディアの情報だけでは計り知れない要素がありました。ましてや日本では、流れた情報は限られ、しかも多くはアメリカの主要メディアの情報をベースにした間接的なもの、予想を大きく外す結果となりました。実際にアメリカ各地に足を運び、くまなく情報を集めた人は異変に気がついていたようです。東部と西部の大都市にheadquartersを置く主要新聞や主要メディアの情報だけでは、どうしてもそれ以外の地域の状況を見落としてしまいます。

前回の大統領選においては、いわゆるRust Beltと称される貧困に喘ぐ地域の情報はあまり入ってきませんでした。インターネットでrust, belt, politicsで検索するだけでもそうした情報が取れた筈です。現時点の検索では以下のようなサイトが出てきます。

Here is the reason why Rust Belt cities and towns voted for Trump

The revolt of the Rust Belt: place and politics in the age of anger

今思えば、去年の大統領選前に検索していたら、これらのサイトが指摘することを予見するサイトがあったかも知れません。この秋の中間選挙に向けて、これらのサイトに書かれている状況がその後どうなっているか、情報を探ってみると何らかの予測ができそうです。

要は、アメリカはあまりにも多様で広大なので一括りで語ってはいけないということにつきます。加えて流動的です。よって日本では想像できない部分が多いのですが、それでも英語が聞けて読めれば手掛かりになりそうな情報を集めることができます。大統領選が近くなると、アメリカの各キャンパスではこうした情報を基に各地域で賛否両論の議論が繰り広げられます。留学してもそうした議論に参加できないとしたら少々寂しいことになってしまいます。

筆者が、首都ワシントンに移り住んだ1973年8月末は、全米がWatergate スキャンダルでニクソン大統領の弾劾(impeachment)を求めて動き出した時期でした。White HouseとWatergate Hotelの近くに住んでいた為に大勢の抗議する人々の姿を見るにつけ、筆者自身もベトナム戦争や人種問題などと絡めて弾劾の賛否の議論をしたことを思い出します。とにかく自分の考えを述べる機会が多いアメリカでは無関心を装えません。よって新聞や雑誌やテレビの政治に関する記事をよく読みました。

政治関係だけではなく、上述したようにMLB好きの筆者は、Sports Illustratedというスポーツ専門誌をよく読みました。全文を読むためには実際に雑誌を買わなければなりませんが、今ではこの雑誌のnewsサイトが話題になっている事柄を逐一紹介しています。無料です。

Sports Illustrated News

他の分野の雑誌も同じです。各分野で著名な雑誌や機関誌の英語名を_______ Newsの空白に入れると、それらに関連するnewsサイトが出てくるでしょう。もしそうした雑誌名が思い浮かばなければ、その空白の部分に気になる趣味の名称を英語で入れてみれば多くのサイトがヒットします。以下、music, fashion, anime, food, gameなど、筆者のプロジェクト発信型英語プログラムの1学期目に、受講者が取り上げたテーマを幾つか選んで検索してみました。

Music News

Music News/Billboard

Daily Fashion News Breaking & Latest Stories | British Vogue

The Latest Trend to Know| Who What Wear

Anime News Network
Food News

PC Gaming News

Video Game News, Game News - GameSpots

同じことは、専攻分野についても言えます。高等学校や大学で関心をもつ学問分野では最近どのようなことが最先端のテーマとして語られているのでしょうか?ノーベル賞受賞者らの論文がよく掲載される科学専門誌のNature誌やScience誌には以下のようなNewsサイトがあります。

Nature News & Comment

Science News

無料です。読んでコメントを書き投稿もできます。筆者は教鞭をとった立命館大学生命科学部・薬学部用に、Nature Newsの記事10点を選び専門英語プロジェクト用テキストReadings in Science―in association with Nature 最新科学と人の今を読む(2015. 鈴木佑治.南雲堂)を書きました。(*2)ネットで読むのは無料ですが、筆者はテキストとして使用したのでもちろん使用許可を取り、1点につきそれなりの金額の使用料を払いました。読むだけなら無料なのですから読まなければ損です。

もし、特定の雑誌名が分からなければ、関心のある分野名を_______Newsの下線部に入れれば、多くのサイトが出てきます。以下、思いつくまま幾つか列記します。

Physics News-Phys.org

Physics News -Science Daily

Quantum Physics News -Science Daily

Mathematics News- Science Daily

Medical News Today: Health News

Health & Medicine News- Science Daily

Food News

Social Sciences-News, Research and Analysis-The Conversation

Psychology Today

Business News Headlines

Economy News-Wall Street Journal

Language Acquisition News-Science Daily

Philosophy, News, Research and Analysis- The Conversation

Literature, Latest News, Breaking Stories and Comment

Education News-US News and World Report

TOEFL iBT® テストではcritical thinkingが試されます。自分で情報を集めて分析し、想像力を凝らして思考し、自分なりの仮説を立てて、検証してみる、この全ての段階で多くの人と議論して意見交換をします。方法論はともかく、色々な形の思考実験(thought experiment)をしてみることです。趣味から専門的なテーマまで、これを習性にしなければその能力はつきませんし、自分が関心を持つ事柄を中心にしなければ長続きしません。趣味と実益を兼ねてTOEFL iBTテストの準備ができれば最高ですね。

(2018年6月2日記)

 

(*1)MLB実況放送(baseball broadcasting)のplay-by-play baseball broadcasterになるには特別な訓練が必要です。関心ある読者は、手始めにSCP 12: Get a baseball broadcasting jobをチェックしてください。MLBの実況放送では訓練を受け、実績のある経験豊かな2名のbaseball broadcastersが全てのプレイを漏らすことなく阿吽の呼吸でplay-by-playの実況をします。ホームチーム、ビジターチームの全選手の特徴と実績を知り尽くしており、ファイン・プレーを声高に称賛し、エラーなどはさらっと流す、そこにはMLBという最高舞台でplayする選手への敬意が窺えます。普段からよく調べているのでしょう。野球だけではなく他のスポーツのbroadcastersがいます。関心がある読者は、sports broadcastingで検索してみましょう。
(*2)Science Reader Ⅱ(2011. 鈴木佑治編著. マクミラン・ランゲージ)の続編。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。